出歩である)” の例文
「ゆるしなく、かってに出歩であるいたり、またまってきたようなものは、さっそくみせていってもらう。」という規則きそくがありました。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで赤貝姫がしるしぼあつめ、蛤貝姫がこれを受けて母の乳汁として塗りましたから、りつぱな男になつて出歩であるくようになりました。
保名やすなからだがすっかりよくなって、ってそと出歩であるくことができるようになった時分じぶんには、もうとうにあきぎて、ふゆなかばになりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ベンヺ マーキューシオーどの、もうかへらう。あつくはある、カピューレット奴等やつら出歩であるいてもゐる、出會でっくはしたが最後さいご鬪爭けんくわをせねばなるまい。
う云ふあにと差しむかひで話をしてゐると、刺激の乏しい代りには、灰汁あくがなくつて、気楽でい。たゞ朝から晩迄出歩であるいてゐるから滅多につらまへる事が出来できない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだ独りで出歩であるきは出来ねえのか。(お松と顔を見合せ、冷笑して)田舎者はだから厭だ。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
徳義上とくぎじやうだとか、論理ろんりだとか、那樣事そんなことなにりません。たゞ場合ばあひです。すなは此處こゝれられたものはひつてゐるのであるし、れられんもの自由じいう出歩であるいてゐる、けのことです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
花道はなみちから平土間ひらどまますあひだをばきちさんのごと𢌞まはりの拍子木ひやうしぎなにたるかを知らない見物人が、すぐにもまくがあくのかと思つて、出歩であるいてゐたそとから各自の席にもどらうと右方左方うはうさはうへと混雑してゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ルピック氏——出歩であるかにゃならんのだ。しょうがない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
おまえは、毎日まいにち出歩であるくことがきだから、このむらはずれから十あちらのまちるまで、電信柱でんしんばしらかず幾本いくほんあるか、かぞえてみれ。それをてたら財産ざいさんけてやる。
星と柱を数えたら (新字新仮名) / 小川未明(著)
徳義上とくぎじょうだとか、論理ろんりだとか、そんなことはなにもありません。ただ場合ばあいです。すなわちここにれられたものはいっているのであるし、れられんもの自由じゆう出歩であるいている、それだけのことです。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのがたになると、そと出歩であるいていた乞食こじきらがみんなもどってきました。あばたづらは、たいそう不機嫌ふきげんかおつきをしてかえってくると、少年しょうねんかっていいました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なつよるや、縁日えんにちばんなどには、よくこのまちにも露店ろてんましたけれど、こんなにさむくなってからは、出歩であるひとすくないので、ああして露店ろてんしても品物しなものうものがないだろうにと
幸福のはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)