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倨傲
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きょごう
ふりがな文庫
“
倨傲
(
きょごう
)” の例文
謙譲の
褄
(
つま
)
はずれは、
倨傲
(
きょごう
)
の襟より品を備えて、尋常な
姿容
(
すがたかたち
)
は調って、焼地に
焦
(
い
)
りつく影も、水で描いたように涼しくも
清爽
(
さわやか
)
であった。
伯爵の釵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
相手が高官とみて、孟は挨拶に出たが、張は酒を飲んでいて顧りみないので、孟はその
倨傲
(
きょごう
)
を憤りながら、自分は西の部屋へ退いた。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
上野介の
倨傲
(
きょごう
)
な日ごろの振舞も吉保という重要な地位にある人間の
後楯
(
うしろだて
)
を意識して、特に、横着ぶりを、押している風もかなり見える。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
ゲルマン魂は国民的
倨傲
(
きょごう
)
のうちにくるまっていながら、ヨーロッパのあらゆる魂のうちで、最も国民性を失いやすいものである。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
桑の葉以外には食べない虫に他の草を持って行って宛てがっても見向きもせずに痩せ細って行く。本能の
倨傲
(
きょごう
)
。それに似た癖であります。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
▼ もっと見る
今までの
倨傲
(
きょごう
)
な青木、絶えず雄吉を人格的に圧迫していた青木が、今やまったく地を換えてしまって、そこに哀れな弱者として蹲っていた。
青木の出京
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
自分の天分にぴったりとはまった仕事を見出すと、彼女の
倨傲
(
きょごう
)
は頭を持上げはじめた。勝気で通してゆく彼女は気に
傲
(
おご
)
った。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
丁度其の時、そのスリツパをぬぎ揃へられた廊下の扉口に背の低い小柄な、頭の白くなつた如何にも看守らしい
倨傲
(
きょごう
)
な顔付をした老看守が立つた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
駈けつけた敵の助勢であろうか、それにしても、このものものしい火事場の身固めと、なんとなく迫ってくる威圧、
倨傲
(
きょごう
)
の感とは、なんとしたことだ……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
例えば従順と
倨傲
(
きょごう
)
と、あるいは礼譲とブルタリティと、二つの全く相反するものが互いに密に混合して、
渾然
(
こんぜん
)
としたものに出来上がったとでも云ったらよいか。
雑記(Ⅱ)
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「仙台びとの
我
(
が
)
の強いのと
倨傲
(
きょごう
)
にはうんざりする、平穏だという状態は半年とつづかず、いつもなにかしらごたごたを起こし、互いに相手を凌ごうといきりたつ」
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
それで、なかには、忍従と完全な自己制御におもむかないで、反対に悪魔的な
倨傲
(
きょごう
)
へ、すなわち自由へではなくて、束縛へ導かれる者がないとも限らないのである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
川は彼の
膝
(
ひざ
)
でしぶきをあげた。
遮
(
さえぎ
)
るものに当って不遠慮な音をたてた。両手を左右にひろげ、のしのしと進んで行く阿賀妻はそれよりもなお
倨傲
(
きょごう
)
であったと云える。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
れいのそのひとが、あまり弱すぎるせいであろうか。おれのこんな、ものの感じかたをこそ、
倨傲
(
きょごう
)
というのではなかろうか。そんなら、おれの考えかたは、みなだめだ。
姥捨
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
私も実際あれには
懲
(
こ
)
りたからネ——人間なぞがノコノコ出掛けて行ってはたして尊大
倨傲
(
きょごう
)
な大使館の英人連中が私を太子に逢わせてくれるだろうかという懸念であった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
もし
然
(
しか
)
らずして、
倨傲
(
きょごう
)
自ら処り、唯我独尊、他を視る事
卑
(
ひく
)
く、従って自己の短を補うに他の長を以てするの工夫を怠らんか、ただに限り無く実生活を向上する
能
(
あた
)
わざるのみならず
列強環視の中心に在る日本
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
が、同時に政治家型の
辺幅
(
へんぷく
)
や
衒気
(
げんき
)
や
倨傲
(
きょごう
)
やニコポンは薬にしたくもなかった。君子とすると
覇気
(
はき
)
があり過ぎた。豪傑とすると神経過敏であった。実際家とするには理想が勝ち過ぎていた。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
人々は己を
倨傲
(
きょごう
)
だ、尊大だといった。実は、それが
殆
(
ほとん
)
ど
羞恥心
(
しゅうちしん
)
に近いものであることを、人々は知らなかった。
勿論
(
もちろん
)
、曾ての
郷党
(
きょうとう
)
の鬼才といわれた自分に、自尊心が無かったとは
云
(
い
)
わない。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
過激派らがきわめて
傲然
(
ごうぜん
)
としていたところに、正理派らは多少の恥を感じていた。彼らは機才を持っていたし、沈黙を持っていた。その政治的信条には、適当に
倨傲
(
きょごう
)
さが交じえられていた。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
オオヤマネコに感動してまだ幾日もたたぬうちに、一介の野良猫にすぎぬが、その
倨傲
(
きょごう
)
な風格において、一脈相通じるところのある奴が我が家の内外に出没することになったのは愉快だった。
黒猫
(新字新仮名)
/
島木健作
(著)
今までの冷やかにも
倨傲
(
きょごう
)
な表情から、少し取り入るような——しかもその急激な変化に自分自身多少のうしろめたさを示さないではない——それに変っていくのを見てしすましたりと思った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
一度は恐れ
戦
(
おのの
)
いてこの声にひれ伏した。が
倨傲
(
きょごう
)
な心はぬっと頭を
擡
(
もた
)
げる。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
毅堂が晩年往々にして人より
倨傲
(
きょごう
)
の
誹
(
そしり
)
を受けたのは全く故なき事ではない。毅堂は三礼の攻究に
最
(
もっとも
)
力を尽した学者で、その平生においても辞容礼儀には極めて厳格で
毫
(
ごう
)
もこれを
忽
(
ゆるが
)
せにしなかった。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
するとその時、認識の苦悩と
倨傲
(
きょごう
)
とを伴って、孤独がやって来た。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
謙譲の
褄
(
つま
)
はづれは、
倨傲
(
きょごう
)
の
襟
(
えり
)
より
品
(
ひん
)
を備へて、
尋常
(
じんじょう
)
な
姿容
(
すがたかたち
)
は
調
(
ととの
)
つて、
焼地
(
やけち
)
に
焦
(
い
)
りつく影も、水で描いたやうに涼しくも
清爽
(
さわやか
)
であつた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
常に大藩の誇りを鼻にかけて、尊大で
倨傲
(
きょごう
)
な振舞のおおい京極方の惨敗は反動的に無暗に群集の
溜飲
(
りゅういん
)
を下げて鳴りもやまぬ歓呼となった。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身のほど知らぬ
倨傲
(
きょごう
)
である。こんどは私も用心した。
鎧
(
よろい
)
かぶとに身を固めた。二枚も三枚も、鎧を着た。固め過ぎた。動けなくなったのである。部屋から一歩も出なかった。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
略奪者たる大貴族の
跋扈
(
ばっこ
)
した幾世紀かが、一民族の中に、たとえば
猛禽
(
もうきん
)
の
倨傲
(
きょごう
)
貪欲
(
どんよく
)
な面影を刻み込むときには、その地金は変化することがあっても、印刻はそのまま残るものである。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
蜜のごとき
囁
(
ささや
)
きを交わし合うべき婚約成立の場合にさえも、妻の言葉のいかに
倨傲
(
きょごう
)
を極めたものであったか! おそらくは、今まで眼中にさえも入れていなかった私風情の人間から
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それは
倨傲
(
きょごう
)
無頼な夜の一場面であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
やはり自分は田舎侍であったという正直な
負
(
ひ
)
け
目
(
め
)
である。しかし相手がそれを
見下
(
みくだ
)
しているような
倨傲
(
きょごう
)
でないことは十分にわかっていた。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
人もしその
倨傲
(
きょごう
)
なるを憎みて、
些
(
さ
)
の米銭を与えざらむか、乞食僧は
敢
(
あえ
)
て意となさず、決してまた
餓
(
う
)
えむともせず。
妖僧記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
倨傲
(
きょごう
)
なヴィーナスの神となし、人の魂のあらゆる激情の
化身
(
けしん
)
となした。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
まったく陰惨な
倨傲
(
きょごう
)
さというの外はなかったのであった。
陰獣トリステサ
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
周馬はちょッと
癪
(
しゃく
)
にさわったように
唇
(
くち
)
をゆがめた。こんな時、いつでも一角の
倨傲
(
きょごう
)
とお十夜の図々しさから、自分が立ち用をさせられるのが不満なのだ。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
宋大人
(
そうたいじん
)
。きのうまでの自分の
倨傲
(
きょごう
)
は、
慚愧
(
ざんき
)
にたえん。まったく、迷いの夢がさめた。わしは梁山泊というものも、また広くはこの
社会
(
よのなか
)
をも、見損なっていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
倨傲
(
きょごう
)
に云い放った。変った物は何でも望むところと新九郎は勇気凜然。
剣難女難
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
倨傲
(
きょごう
)
というか、不行儀をもってむしろ
矜
(
ほこ
)
るようなところがあった。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしていつもの
倨傲
(
きょごう
)
な彼とは別人のように、腰ひくく
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
倨
漢検1級
部首:⼈
10画
傲
常用漢字
中学
部首:⼈
13画
“倨傲”で始まる語句
倨傲者