こしら)” の例文
桃輔が先へ、チリンチリン鈴の鳴るくぐりをくぐって、ガッシリしたこしらえの、天井の高い古風な台所のほうから案内を乞うた。
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
この家は旧札差ふださしこしらえた家で、間口が四けんに二間半の袖蔵そでぐらが付いており、奥行は十間、総二階という建物で、木口きぐちもよろしく立派な建物であったが
毎日々々まいにち/\面白おもしろ可笑をかしあそんでうちあることその老爺をやぢさんこしらへてれた菱形ひしがた紙鳶たこ甲板かんぱんばさんとて、しきりさはいでつたが、丁度ちやうど其時そのとき船橋せんけううへ
その留守中に、貞操帯の合鍵をこしらえて、奥方が抒情詩人ミンネジンゲル春戯いちゃつくのもやむを得んだろうよ。だがただしだ。その方向を殺人事件の方に転換してもらおう
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
いいえ、こういうことになったのも、竹の木戸のお蔭で御座いますよ、ですから私は彼処あそこを開けさすのは泥棒の入口をこしらえるようなものだと申したので御座います。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
で、そのジレンマを頭で解く事は出来ぬが、併し一方生活上の必要は益〻迫って来るので、よんどころなくも『浮雲』をこしらえて金を取らなきゃならんこととなった。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
けれども此樣こんな氣候にも耐えてゐなければならんといふ人間は意久地無いくぢなしだ。要するに人間といふやつは、雨をふせぐ傘をこしらへる智慧ちゑはあるが、雨を降らさぬやうにするだけの力がないんだ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「まアこんな処に仮面めんこしらえてあるわ。」
笑われた子 (新字新仮名) / 横光利一(著)
水兵すいへいども澤山たくさん御馳走ごちさうこしらへてつてはづだから、その以前いぜんにヒヨツコリとかへつてはけうい、し/\。
人間の口に入れられるものをこしらえ度い、という極く小心な「正直しょうじき」から刻苦するようになったんだ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此の相續人になツた資格のうらには、種馬たねうまといふ義務ぎむになはせられてゐた。それで彼が甘三四と]なると、もう其の候補者こうほじやまでこしらへて、結婚をまられた。無論周三は、此の要求を峻拒した。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「案外丈夫そうだ。まアこれでもい、無いよりかましだろう。その内大工を頼んで本当に作らすことに仕よう」と言って「竹でこしらえても木戸は木戸だ、ハ、ハハハハ」と笑いながら屋内うちへ入った。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ほー、えれいいきほひだ、一方いつぽうでは輕氣球けいきゝゆうこしらへながら、海底戰鬪艇かいていせんとうてい豫定通よていどうりに竣成しゆんせいしたとなると、吾等われら馬鹿ばかつたあひだに、大佐閣下たいさかくかも、その水兵すいへいどもも、ないではたらいたわけだな。
今となれゃ泥棒が泥棒の出入口ではいりぐちこしらえたようなものだ
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)