“一(ある)” の例文
また憎らしいのがある、腹立たしいのも他(ほか)にあるけれども、それも一(ある)場合に猿が憎らしかったり、鳥が腹立たしかったりするのとかわりは無いので。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一八九四年版ブートン訳『亜喇伯夜譚補遺(サップレメンタリー・ナイツ)』一にも、アラビアで一(ある)女生まれた時、占婦卜(ぼく)してこの女成人して、必ず婬を五百人に売らんと言いしが中(あた)った事あり
傷(きづゝ)き斃(たを)れたのも少(すくな)くない樣子(やうす)で、此(この)日(ひ)も既(すで)に十二三里(り)許(ばかり)進(すゝ)みて、海岸(かいがん)なる櫻木大佐(さくらぎたいさ)の住家(すみか)からは、確(たし)かに三十里(り)以上(いじやう)距(へだゝ)つたと思(おも)はるゝ一(ある)高山(かうざん)の絶頂(ぜつてう)に達(たつ)した時(とき)には、其(その)數(かず)も餘程(よほど)減(げん)じて
一(ある)日、朝から雨が降って、昼も夜のようであったその夜中の事——と語り掛けて、明はすやすやと寝入ったのである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我今生(こんじょう)分(ぶん)尽きたれば汝を用いずと言わしむると、象すなわち地中に入ってしまった、仏いわく昔迦葉仏(かしょうぶつ)の時、象護の前身一(ある)塔中菩薩が乗った象の像少しく剥(は)げたるを補うた功徳で
電話で、新道の一(ある)茶屋へ、宮歳の消息を聞合せると、ぶらぶら病で寝ていたが、昨日急に、変(へん)が変(かわ)って世を去った。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上帝その禍を予防せんため、竜の身を極めて重くし居る故、みな楽土より流れ出る一(ある)河に陥(お)ちて死す、近処の人その死を覗(うかが)い、七十日の後その尸(しかばね)の頭頂(いただき)に根生(ねざし)た紅玉を採って国の帝に献(たてまつ)ると。
ついこの間の事——一(ある)大書店の支配人が見えた。関東名代の、強弓(つよゆみ)の達者で、しかも苦労人だと聞いたが違いない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてこれは小宮山(こみやま)良介という学生が、一(ある)夏北陸道を漫遊しました時、越中の国の小川という温泉から湯女(ゆな)の魂を託(ことづか)って、遥々(はるばる)東京まで持って参ったというお話。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
野辺の送(おくり)が済んで、七々四十九日というのに、自ら恥じて、それと知りつつ今まで遂(つい)に音信(おとずれ)なかった姉者人(あねじゃひと)、その頃一(ある)豪商の愛妾になっていたのが尋ねて来て、その小使(こづかい)と
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかれども予は予が画師(えし)たるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、某(それ)の日東京府下の一(ある)病院において、渠(かれ)が刀(とう)を下すべき
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一(ある)寺に北辰(ほくしん)妙見宮のまします堂は、森々(しんしん)とした樹立(こだち)の中を、深く石段を上る高い処にある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「一(ある)年、やっぱりその五月雨の晩に破風から鼻を出した処で、(何ぞお望(のぞみ)のものを)と申上げますと、(ただ据えておけば可い、女房を一人、)とそういったそうでございます。」
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な縁ですね、まだ下極(したぎま)りで、世間に発表はしないけれども、今度、仙台の——一(ある)学校の名誉教授の内命を受けて、あと二月ぐらいで任に赴く。——ま、その事になりました。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一(ある)夏土用の日盛(ひざかり)の事……生平(きびら)の揚羽蝶の漆紋に、袴(はかま)着用、大刀がわりの杖を片手に、芝居の意休を一ゆがきして洒然(さっぱり)と灰汁(あく)を抜いたような、白い髯(ひげ)を、爽(さわやか)に扱(しご)きながら、これ、はじめての見参。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世話をするものがあって、毎日吾妻橋を越して一(ある)製糸場に通っていた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気の早いお悦が、別して一(ある)場合だったから、つかつかと店へ入って
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中に髯(ひげ)のある立派な紳士が、一(ある)公職の名のりを上げた。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)