ある)” の例文
また憎らしいのがある、腹立たしいのもほかにあるけれども、それもある場合に猿が憎らしかったり、鳥が腹立たしかったりするのとかわりは無いので。
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一八九四年版ブートン訳『亜喇伯夜譚補遺サップレメンタリー・ナイツ』一にも、アラビアである女生まれた時、占婦ぼくしてこの女成人して、必ず婬を五百人に売らんと言いしがあたった事あり
きづゝたをれたのもすくなくない樣子やうすで、このすでに十二三ばかりすゝみて、海岸かいがんなる櫻木大佐さくらぎたいさ住家すみかからは、たしかに三十以上いじやうへだゝつたとおもはるゝある高山かうざん絶頂ぜつてうたつしたときには、そのかず餘程よほどげんじて
ある日、朝から雨が降って、昼も夜のようであったその夜中の事——と語り掛けて、明はすやすやと寝入ったのである。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今生こんじょうぶん尽きたれば汝を用いずと言わしむると、象すなわち地中に入ってしまった、仏いわく昔迦葉仏かしょうぶつの時、象護の前身ある塔中菩薩が乗った象の像少しくげたるを補うた功徳で
電話で、新道のある茶屋へ、宮歳の消息を聞合せると、ぶらぶら病で寝ていたが、昨日急に、へんかわって世を去った。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
上帝その禍を予防せんため、竜の身を極めて重くし居る故、みな楽土より流れ出るある河にちて死す、近処の人その死をうかがい、七十日の後そのしかばね頭頂いただき根生ねざした紅玉を採って国の帝にたてまつると。
ついこの間の事——ある大書店の支配人が見えた。関東名代の、強弓つよゆみの達者で、しかも苦労人だと聞いたが違いない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
さてこれは小宮山こみやま良介という学生が、ある夏北陸道を漫遊しました時、越中の国の小川という温泉から湯女ゆなの魂をことづかって、遥々はるばる東京まで持って参ったというお話。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
野辺のおくりが済んで、七々四十九日というのに、自ら恥じて、それと知りつつ今までつい音信おとずれなかった姉者人あねじゃひと、その頃ある豪商の愛妾になっていたのが尋ねて来て、その小使こづかい
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかれども予は予が画師えしたるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、それの日東京府下のある病院において、かれとうを下すべき
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある寺に北辰ほくしん妙見宮のまします堂は、森々しんしんとした樹立こだちの中を、深く石段を上る高い処にある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある年、やっぱりその五月雨の晩に破風から鼻を出した処で、(何ぞおのぞみのものを)と申上げますと、(ただ据えておけば可い、女房を一人、)とそういったそうでございます。」
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不思議な縁ですね、まだ下極したぎまりで、世間に発表はしないけれども、今度、仙台の——ある学校の名誉教授の内命を受けて、あと二月ぐらいで任に赴く。——ま、その事になりました。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ある夏土用の日盛ひざかりの事……生平きびらの揚羽蝶の漆紋に、はかま着用、大刀がわりの杖を片手に、芝居の意休を一ゆがきして洒然さっぱり灰汁あくを抜いたような、白いひげを、さわやかしごきながら、これ、はじめての見参。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
世話をするものがあって、毎日吾妻橋を越してある製糸場に通っていた。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
気の早いお悦が、別してある場合だったから、つかつかと店へ入って
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
中にひげのある立派な紳士が、ある公職の名のりを上げた。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)