龕燈がんどう)” の例文
新字:龕灯
と、手下の向けた龕燈がんどうで、まじまじと見つめたその時の、奇異な少年のすがたを——小六は今、ありありと眼に思いうかべていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ディオゲネスが凶賊カルトゥーシュに変じたとしたらそれにもふさわしいような、銅製の古い龕燈がんどうが一つ、暖炉の上に置いてあった。
「おやそうかい、有難いねえ」忍び龕燈がんどうふたをあけ、大木の腐穴くちあなへ差し向けた。とはたして一条の細紐、スルスルと這い出たものである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時、何處からともなく射した光線あかり、曲者の潜入した唐紙の間から、泥棒龕燈がんどうあかりが、まともに曲者の顏を照して居るではありませんか。
うそうそと笑いながら龕燈がんどうを駕籠の中へ差し入れると、しきりに秀の浦の傷口を見調べていたそうでしたが、——と刃先の血のりをぬぐって
うして龕燈がんどう横穴よこあな突出つきだして、内部ないぶらしてやうとしたが、そのひかりあた部分ぶぶんは、白氣はくき濛々もう/\として物凄ものすごく、なになにやらすこしもわからぬ。
低い方の武士は下に伏せてあった龕燈がんどうを手早く持ち直してその方角に突きつけると、池の上を飛ぶようにみぎわを走って女中部屋の方へ行く怪しの者。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小形の龕燈がんどうが一つ、掘り返した土塊つちくれのうえに置いてあり、その灯がこの見るに忍びない光景を照らしだしていた。
(新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
ぐつすり眠つてゐたエミリアンが、ゆりおこされて、をあけると、龕燈がんどうの光をぱつとさしつけられてゐました。
エミリアンの旅 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
そうして、まだ十間とは行かないうちに、路ばたの木のかげから何者か現われ出て、忍びの者などが持つ龕燈がんどう提灯を二人の眼先へだしぬけに突きつけた。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
(峠の方から登って来る人の手に持たれた龕燈がんどうの光)ガサガサと人の足音。
斬られの仙太 (新字新仮名) / 三好十郎(著)
龕燈がんどうの光で見た景
はじめてわかったもののごとく、杉弥が駆けだして、伝六のさし出した龕燈がんどうの下に中身を改めていましたが、と、まもなく歓声が上がりました。
伏せて居た龕燈がんどうを起すと、圓い灯の中に、兄妹二人の顏が赤々と浮出します。蒼白い妹のお秋の顏に比べて、赤黒い兄の顏は、何と言ふ不思議な對照でせう。
そうして或者は熊手を持ち、そうして或者はまさかりかつぎ、そうして或者はかけやをひっさげ、更に或者は槍を掻い込み、更に或者は斧をたずさえ、龕燈がんどうを持っている。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その下へ向って真ッ逆さまに、サッと投げられた龕燈がんどうの明りを、三ツの首が、ためつすがめつして
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
共に夜番や火の番のたぐいではなく、覆面をして両刀を差して一人は手に龕燈がんどうを携えていました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
うなると日頃ひごろ探檢氣たんけんきしやうじて、危險きけんおもはず、さらおくはうすゝむと、如何いかに、足下あしもと大々蜈蜙だい/″\むかでがのたくツてる——とおもつたのはつかで、龕燈がんどうらしてると
しゃがんで龕燈がんどうをさしつけながら、しきりとあちらこちらを調べていたが、はからずもそのとき名人の目をひいたものは、死人の手のひらでした。
忍び衆の持つ忍び龕燈がんどう、それをお絹が灯もしたのである。照らし出された二人の女、顔を集めて囁き合う。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
四ツ谷の與吉は疊をあげて床下を這ひまはつた揚句あげく、やがて泥棒龕燈がんどうを一つ見付け出しました。
鉄壁てっぺきをたたいて呼ばわッたとたん、頭の上からパッとさしてきた龕燈がんどうのひかり、と見れば、高いのぞきまどから首を集めて、がやがや見おろしている七、八人の手下どもの顔がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やうや見定みさだめると、龕燈がんどうひかり奧壁おくかべ突當つきあたつて、朧月おぼろつきごとうつるのである。
こころみにそれなるポチを押してみると、果然土壁は、からくり仕掛けの龕燈がんどう返しに、くるりと大きな口をあけました。
一人の男がうなり声をあげて、ドッと地上へ仆れたことと、仆れた人間を切り刻もうとして、五人の人影が飛びかかったことと、洞窟の入り口へ光が射して、すぐに一点龕燈がんどうの光が
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
龕燈がんどうを用意して光を左右に振りながら、中へ足を入れましたが、見ているまにその影が足元から消え込んで、次に這入はいった者も、最後の武士の姿も、吸われたように地底へかくれます。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かまのような書き判のある例の一札を、ずいと龕燈がんどうの下に突き出して見せましたものでしたから、いやはや、どうもおっ取り刀の面々のめんくらったこと。
青銅で造った大形の龕燈がんどうを、両手で重そうに捧げた後から、稚子輪ちごわに髪を結って十五、六の美童が、銀の鈴を振りながら、側目わきめも振らず歩いて来、その後から具足をつけた二人の武士に
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なかでも、気転きてんのきいたものがあって、闇使やみづかいの龕燈がんどうをあつめ、十四、五人が一ところによって、明かりを空へむけてみた結果、はじめて、そこに、おどろくべき敵のあることを知った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうかい。じゃ、だれのいたずらか、ぞうさなくめぼしがつくだろう。ちょっくら龕燈がんどうを持ってきてみせな」
いわゆる引き上げの合図でもあろう、手に持っていた龕燈がんどうを空へさっと向けたのである。それと同時に物の蔭からむらむらと人影が現われたが、人数およそ百人余り、悉く与力と同心であった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
龕燈がんどうのあかりのなかにきたった少女のすがたをみると
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もよりの自身番へ立ち寄って、特別あかりの強い龕燈がんどうを一つ借りうけると、ただちに駕籠を飛ばして、ふたたび柳原の土手わきまで引き返していきました。
松火たいまつを振り龕燈がんどうを照らし東西南北四方に向かって四つの隊は発足した。
駆けだそうとしたとき、騒ぎを聞きつけたとみえて、自身番の町役人たちが、ちょうちん、龕燈がんどう、とりどりにふりかざしながら、どやどやとはせつけました。
「じゃ、遠くもねえところだ。眠けざましに、お拾いで参るとしようぜ。龕燈がんどうの用意をしてついてきな」
龕燈がんどうを船頭から借りうけて、ぬうと枝を壁外にくねらしている松の木の下に近づいていくと、しきりに白壁の表を見照していましたが莞爾かんじとして大きなみをみせると
「ほほうな。のろいうちにはいろうとしたところをやられたとみえるな。伝六、龕燈がんどうをかしな」
同時に、ことりとなにか取り出したらしい物音は、たしかにあのけこみの中へ秘めかくしておいた玉乗りの黒い玉です——右門はかくし持っている御用龕燈がんどうをしっかりと握りしめました。
伝六に龕燈がんどうを一つ用意させると、右門はまず伝馬町の上がり屋敷へおもむいて、前夜投獄させた石川杉弥のろう前に、ずかずかと近づいていったとみえましたが、みずからかちりと錠をあけると
龕燈がんどうがぎらりと光って、底力のある声がつづいて横から聞こえました。
なにものか捕獲でもしたとみえて、けたたましく言い叫びましたので、伝六が大急ぎに龕燈がんどうをとってきてさしつけてみると、こはそもいかに——さすがの名人右門も、おもわずぎょッとなりました。