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饑
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うえ
ふりがな文庫
“
饑
(
うえ
)” の例文
赤ん坊は
饑
(
うえ
)
と疲れで根気がつきて、母親の肩にうとうとと眠った。母親は保育院へつくと、少しの躊躇もなく、つかつかと入って行った。
小さきもの
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
戦いが止むとどうなるかというと、馬から
下
(
お
)
りて遊牧の民となる。もしくは農業の民となる。
饑
(
うえ
)
ると直ちに馬に跨り賊となる。
東亜の平和を論ず
(新字新仮名)
/
大隈重信
(著)
遜志斎は吟じて曰く、聖にして有り西山の
饑
(
うえ
)
と。孝孺又其の
瀠陽
(
えいよう
)
を
過
(
よ
)
ぎるの詩の中の句に吟じて曰く、之に
因
(
よ
)
って
首陽
(
しゅよう
)
を
念
(
おも
)
う、
西顧
(
せいこ
)
すれば
清風
(
せいふう
)
生ずと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
冬子は暫く体躯全体から湧き立つ重みのある厳そかな強い力に打たれていた。二十幾年求めて与えられなかった性格上の
饑
(
うえ
)
が
津々
(
しんしん
)
と迫る力に充たされて来る。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
われ主家を出でしより、到る処の犬と
争
(
あらそい
)
しが、かつて
屑
(
もののかず
)
ともせざりしに。
饑
(
うえ
)
てふ敵には勝ちがたく、かくてはこの原の露と
消
(
きえ
)
て、
鴉
(
からす
)
の
餌
(
えじき
)
となりなんも知られず。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
▼ もっと見る
僕は下宿屋や学校の寄宿舎の「まかない」に
饑
(
うえ
)
を
凌
(
しの
)
いでいるうちに、身の毛の
弥立
(
よだ
)
つ程厭な菜が出来た。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
余と云い目科と云い共に晩餐
前
(
ぜん
)
なれど
唯
(
たゞ
)
此事件に心を奪われ全く
饑
(
うえ
)
を打忘れて自ら饑たりとも思わず
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
深い悲しみにあってはじめて知る親と子の融合は、物質に不足のないだけで、心の
饑
(
うえ
)
をさとらなかった親子の間には、今までには
酌
(
く
)
めなかったものであったかも知れない。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
日は昇っても人の通りは
尠
(
すくな
)
い秋の野路、それを半日も歩いていると、
饑
(
うえ
)
と
疲
(
つか
)
れで足が動かない。
大菩薩峠:07 東海道の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
二人の結びつきは要するに三年孤独の境涯に置かれた互の性の
饑
(
うえ
)
に過ぎなかったのではないか。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
けれど、生きているうちは、また
饑
(
うえ
)
を感ぜずにはいられない。子供は女に乳をねだった。
森の暗き夜
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
其人の妻子は
屹度
(
きっと
)
饑
(
うえ
)
に泣いてるように思われて、妻子が
饑
(
うえ
)
に泣く——人情忍び難い所だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
生活難の
合間
(
あいま
)
合間に一頁二頁と筆を
執
(
と
)
った事はあるが、
興
(
きょう
)
が
催
(
もよお
)
すと、すぐやめねばならぬほど、
饑
(
うえ
)
は
寒
(
さむさ
)
は容赦なくわれを追うてくる。この
容子
(
ようす
)
では当分仕事らしい仕事は出来そうもない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幾度私達は
饑
(
うえ
)
をしのいだことであつたか! お蔭で私は幾篇の小説をつゝがなく書き終らせたことか! 勘定の言訳の述べ憎くなつた居酒屋から、あの飛乗りの早業で何度彼は酒樽を借出して来て
三田に来て
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
死を致す
涜罪
(
とくざい
)
の食慾。渇きと
饑
(
うえ
)
。
珊瑚集:仏蘭西近代抒情詩選
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
あくがれます
饑
(
うえ
)
の神等
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
と思うと、私は
頭尖
(
てっぺん
)
から水を浴びたようにぞっとしました。実子たる私が死ぬほど
饑
(
うえ
)
に迫って、寒さに震えてここに立っている。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
湧
(
わ
)
くや額に玉の汗、去りも
敢
(
あえ
)
ざる不退転、耳に世界の音も
無
(
なく
)
、腹に
饑
(
うえ
)
をも補わず
自然
(
おのず
)
と
不惜身命
(
ふじゃくしんみょう
)
の
大勇猛
(
だいゆうみょう
)
には
無礙
(
むげ
)
無所畏
(
むしょい
)
、
切屑
(
きりくず
)
払う熱き息、吹き掛け
吹込
(
ふっこ
)
む一念の誠を注ぐ眼の光り
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
六つ七つのとき
流行
(
はやり
)
の時疫にふた親みななくなりしに、
欠唇
(
いぐち
)
にていと
醜
(
みにく
)
かりければ、かへりみるものなくほとほと
饑
(
うえ
)
に迫りしが、ある日
麺包
(
パン
)
の乾きたるやあると、この城へもとめに来ぬ。
文づかひ
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
村の人々は、
何故
(
なぜ
)
、母が子を殺して自殺したかを疑った。この上他人に迷惑をかけまいと思ってか?
饑
(
うえ
)
と寒さに堪え
兼
(
かね
)
てか? 中にはこう言ったものがあった。昔は武士の家庭に育った娘だ。
僧
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
帳記
(
ちょうづ
)
けをしながらもほろほろと涙を流しました。
饑
(
うえ
)
と恥で止め度なく泣きましたが、そのとき
不図
(
ふと
)
、たとえ母が死んでも父親というものがある。
無駄骨
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
明
(
あけ
)
ても
暮
(
くれ
)
ても
肘
(
ひじ
)
を
擦
(
さす
)
り
肝
(
きも
)
を焦がし、
饑
(
うえ
)
ては敵の肉に
食
(
くら
)
い、渇しては敵の血を飲まんとするまで
修羅
(
しゅら
)
の
巷
(
ちまた
)
に
阿修羅
(
あしゅら
)
となって働けば、功名
一
(
ひ
)
トつあらわれ二ツあらわれて総督の
御覚
(
おんおぼ
)
えめでたく
追々
(
おいおい
)
の出世
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
或る者は
自棄
(
やけ
)
くそになって、途方もなく大きな声で呶鳴りだした。或る者は恐怖と
饑
(
うえ
)
で
狂人
(
きちがい
)
のように髪を掻きむしっているかと思うと、或る者はまるで子供のように泣き喚いた。その中で
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
聖にして有り
西山
(
せいざん
)
の
饑
(
うえ
)
。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
饑
(
うえ
)
でひょろひょろになっていて、しかも武器といってはナイフ一挺しか持たないので、こんなとき、訓練のとどいた三、四十人の
船乗
(
ふなのり
)
に立向われたら——と思うと
慄然
(
ぞっ
)
としないわけに行かなかった。
ラ・ベル・フィユ号の奇妙な航海
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
饑
漢検1級
部首:⾷
21画
“饑”を含む語句
饑渇
饑死
饑饉
饑餓
大饑饉
饑餲
饑饉年
災難饑餓
糧饑
肚饑
饑者
饑餓行進