飯粒めしつぶ)” の例文
妊娠後タ月や三月や四月の胎児は、ドロップの缶に付着した飯粒めしつぶも同然で、ほんの僅かの力でもって子宮壁に付着しているのだった。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
午餐ひる勘次かんじもどつて、また口中こうちう粗剛こは飯粒めしつぶみながらはしつたあと與吉よきち鼻緒はなをゆるんだ下駄げたをから/\ときずつて學校がくかうからかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
飯粒めしつぶらるゝ鮒男ふなをとこがヤレ才子さいしぢや怜悧者りこうものぢやとめそやされ、たまさかきた精神せいしんものあればかへつ木偶でくのあしらひせらるゝ事沙汰さたかぎりなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
そこにひろげられた枕屏風まくらびょうぶの蔭に、空っぽの飯櫃めしびつがころがって、無残に喰い荒された漬物の鉢と、土瓶どびんと、はしとが、飯粒めしつぶにまみれたまま散らばっている。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
小姓にしてはわがまますぎるし、飯粒めしつぶにしては大きすぎるこのつきものを、別に気にかけない重喜も大名だが、それの邪魔にならない徳島城もさすがに広い。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのまえに、かれは、いまごろどこをほってもみみずのつからないことをっていましたから、飯粒めしつぶえさにしてかんがえで、自分じぶんべるにぎめしをそのぶんおおきくつくってってゆきました。
北の国のはなし (新字新仮名) / 小川未明(著)
ですからこの地方では、その後いつも四月のはじめになりますと、女たちがみんな下袴したばかまの糸をぬいて、飯粒めしつぶを餌にしてあゆを釣り、ながく皇后のお徳をかたりつたえるしるしにしておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
裳の絲を拔き取つて飯粒めしつぶえさにしてその河のアユをお釣りになりました。
「晩にね、僕が、煙草の吸殻すいがら飯粒めしつぶで練って、膏薬こうやくつくってやろう」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自由じいういてが、爪先つまさきつた茶碗ちやわんをころりとおとさせた。茶碗ちやわんそこつめたくつてすこしのみづ土間どまへぽつちりとちてはねた。飯粒めしつぶともらばつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
飯粒めしつぶかなんかを、ちょっと付着させた上で、もう一度始めに釣した缶をグワーンと、ひっぱたいてみると、あとから釣るした缶がたちまち振動して鳴りだすのは勿論のことであるが、見て居ると
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
飯粒めしつぶ茶碗ちやわんからかれむねつたひて土間どまへぼろ/\とちた。かれ土間どまつたまゝべてた。かれ飯粒めしつぶすこそこのこつた茶碗ちやわんぜんうへころがしてばたりと飯臺はんだいふたをした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)