霊験れいげん)” の例文
「えっ、お米様、じゃ万吉は、あの、無事でおりましたか……」お吉は、観世音かんぜおん霊験れいげんにでも会ったように胸をおどらせて問いつめた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
康頼 神をうたがってはいけません。熊野権現くまのごんげん霊験れいげんあらたかな神でございます。これまでかけたがんの一つとして成就じょうじゅしなかったのはありません。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
当時の仏教は霊験れいげん仏法や儀礼仏法が盛んであったが、然し心の底から生死の問題に就て解脱げだつを求める人もすくなくなかった。
その午後、堀尾君はかたちを改めて、日本橋の○○紡績株式会社へ出頭した。専務取締への添書には霊験れいげんあらたかなものがあって、直ぐに応接室へ通された。
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
元よりかような霊験れいげんは不思議もない。そもそも天上皇帝とは、この天地あめつちを造らせ給うた、唯一不二ゆいいつふじ大御神おおみかみじゃ。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あるいは宮や寺の宝物ほうもつになっている古い仮面めんをかり、釣鐘つりがねをおろし、また路傍の石地蔵いしじぞうのもっとも霊験れいげんのあるというのを、なわでぐるぐる巻きにしたりして
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
魚沼郡の内宇賀地うがちきやうほりの内の鎮守ちんじゆ宇賀地の神社じんじやは本社八幡宮也、上古より立せ給ふとぞ。縁起文えんぎぶんおほければこゝにはぶく。霊験れいげんあらたなる事はあまねく世にしる処なり。
とある。即ち皇后御病気平癒へいゆを願って建立こんりゅうされた寺であるが、たちま霊験れいげんあって皇后は御恢復かいふくになった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
狐の人をばかす事、伝通院でんつういん裏の沢蔵稲荷たくぞういなり霊験れいげんなぞ、こまごまと話して聞かせるので、私は其頃よく人の云うこっくり様の占いなぞ思合せて、なかばは田崎のゆうくみして
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
霊験れいげんいやちこであったと見え、たま、五郎、白、ゆき、なぞの年月や、失走時や、猫姿を白紙に書いて張りつけてあった。その近くに鼠小僧の隠れ家があったわけになる。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
村の取附とりつきにある観音堂で、霊験れいげん顕著あらたかというので信心を致しまする者があって種々いろ/\の物を納めまするが、堂守どうもりを置くと種々の悪い事をしていなくなり、村方のものも困って居る処で
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
峰の薬師は祈願を籠めると、霊験れいげんのあらたかなので聞えた仏様で、大願成就の暁には、その祈願者の身につけた物のうちで、一番大切だいじな物を奉納しなければならぬと言伝へになつてゐる。
近きベンチへ腰をかけて観音様を祈り奉る俄信心にわかしんじんを起すも霊験れいげんのある筈なしと顔をしかめながら雷門かみなりもんづれば仁王の顔いつもよりはにがし。仲見世なかみせ雑鬧ざっとうは云わずもあるべし。東橋あずまばしづ。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
文吉は宇平を尋ねて歩いたついでに、ふと玉造豊空稲荷たまつくりほうくういなり霊験れいげんの話を聞いた。どこのたれの親の病気が直ったとか、どこの誰は迷子の居所を知らせて貰ったとか、若い者共が評判し合っていたのである。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「かしこの廟には一つの鐘があって、その霊験れいげんあらたかである」
さながら神薬しんやくと言っていい霊験れいげんっているのだ。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「はてな。おう、夢にして夢にあらずだ。これこそ、霊験れいげんとか、また、よくいう夢想のお告げとかにちがいない。——すると自分の宿命は?」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神が祈願の人に霊験れいげんを示す為に、そうせられるのだといっております。(伝説叢書そうしょ。長野県小県ちいさがた郡殿城村)
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
じゃによって一つは三宝の霊験れいげんを示さんため、一つはその方の魔縁にかれて、無間地獄むげんじごくに堕ちようず衆生しゅじょうを救うてとらさんため、老衲ろうのう自らその方と法験ほうげんを較べにまかいでた。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この日も硝子罎ガラスびんの甘酒四、五十本ほども並べられしを見たり。霊験れいげんのほど思ひ知るべし。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
康頼 迎えの船の来たのは熊野権現くまのごんげん霊験れいげんと思われる。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
毎年村々を舞いてあるく故、これを見知らぬ者なし。ゴンゲサマの霊験れいげんはことに火伏ひぶせにあり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
養生の法とても、わが身かへつて医師にまさりてあきらかならん。医のととのへ勧むる薬は元よりおこたり給ふな。さりながら古老の昔よりいひ伝ふるものには何事に限らず霊験れいげんある事あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
これだけは、雨乞い祭りの霊験れいげんだった。ちょうど虫干し武具の修理に、住吉から来ていた柳斎という者が、先夜、水分みくまりの社の下から救うて来たのだ。すんでのこと、六波羅者の手に捕まるところを
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
霊験れいげんあらたかな熊野権現くまのごんげん利益りやくによって——
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
子安こやすは近世は主として地蔵じぞう観世音かんぜおん霊験れいげんと結合しているが、そういう中でもなお古い頃の民族信仰の名残が見つけ出されるということは、四十年も前に一度書いてみたことがあり
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「なぜですか、霊験れいげんをお示しあればいいでしょう」
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)