轟音ごうおん)” の例文
と、令をさけぶと、たちまち天地を震撼しんかんして、かつて甲州の将士の耳には、聞いたこともない轟音ごうおんが、城の数ヵ所から火を吐いた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも時折は、黒い風のような列車の轟音ごうおんり過したあとで、枕木の上に立ち止まって、バットの半分に火をけながら
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
たちま轟音ごうおんとともに自動車が猛煙につつまれた。人々はことごとく木端微塵こっぱみじんになっている。それなのに、彼だけがひとり不思議に助かっている。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
水夫らは、セキメーツの怒鳴るのと、波浪のほえるのと、スクルーの轟音ごうおんと、リギンの裂くような音とをゴッチャゴッチャに聞いてしまった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ガラガラとウィンチ(捲揚機まきあげき)の廻転する音、ガンガンと鉄骨を叩く轟音ごうおん、タタタタタとリベット(びょう)を打ち込むひびき、それに負けないように
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
芝生も枯れ、樹木も葉を落して、ただ海の轟音ごうおんだけが、荒涼として平坦な園内に、かわらぬ鳴動をつたえている。
一人ぼっちのプレゼント (新字新仮名) / 山川方夫(著)
やがてその雲の中から雷鳴かとも思われる轟音ごうおんが聞こえてくる。地震を恐れて家にはいることができないのに、ここで夕立に見舞われてはたまらないと思う。
地異印象記 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
女や、子供や、老人の叫喚が、逃げ場を失った家畜の鳴声に混って、家が倒れ、板が火に焦げる刺戟的な音響や、何かの爆発する轟音ごうおんなどの間から聞えてくる。
パルチザン・ウォルコフ (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
書きかけては鉛筆をめながら眼をあげた。どのへんだか、何時頃だか判らなかった。ただ激しい風と暗闇くらやみいて疾走はしりつづけている列車の轟音ごうおんだけがきこえていた。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
地響き立てて驀進ばくしん中の列車とはいえ、今の二発の轟音ごうおんと、この硝煙の香は、旅客の平安を破るに充分であったろう。開けろ、開けろと扉が破れんばかりにたたかれている。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
口をついて出るお蓮様のひとり言を、折りからのき暴風雨あらし轟音ごうおんが、さらうように吹き消す。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
寛永かんえい十六年四月十六日の早朝。陸奥国むつのくに会津あいづ四十万石加藤式部少輔明成かとうしきぶのしょうゆうあきなりの家士、弓削田宮内ゆげだくないは若松城の南の方で、突然起った轟音ごうおんにすわと、押っ取り刀で小屋の外へ飛び出した。
討たせてやらぬ敵討 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
どかんという音がし、閃光せんこうがはしった。ついでまたどかんと来、さらに二度、大きく続けさまに轟音ごうおん炸裂さくれつし、谷ぜんたいが崩壊するかと思うほど、すさまじく大地が震動した。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庵室がそのまま九天の上に吹き上げられるような恐ろしい轟音ごうおんと爆風です。同時に四方の雨戸も壁も微塵みじんに砕けて、大火焔だいかえんの洪水が十八尺四方の庵室を包んでドッと吹き入るのです。
そこでは、ヘブリディーズあたりの波のように、低い下生したばえが絶えずざわめいている。しかし天には少しの風もない。そして太古からの高い樹々きぎは強い轟音ごうおんをたてて永遠に彼方此方へ揺れている。
鉄橋を渡る列車のような轟音ごうおんを立てて、スコールがやって来た!
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
と、空をってうろたえた悍馬かんばや猛兵が、むなしく退き戻ろうとするとき、一発の轟音ごうおんを合図に、四面の伏勢ふせぜいがいちどに起って
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は直ちに、水夫二人ふたりにかつがれて、最も震動と、轟音ごうおんのはなはだしい船首の、彼の南京虫なんきんむしだらけの巣へ連れ込まれた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
黒竜江の結氷が轟音ごうおんとともに破れ、氷塊ひょうかいは、濁流だくりゅうに押し流されて動きだす春がきた。
国境 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
そのとき強烈な衝撃と轟音ごうおんが地べたをたたきつけて、芋の葉が空に舞いあがった。
夏の葬列 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
轟音ごうおんもろとも船は転覆する。巨濤きょとうが人間をさら閃光せんこうやみ截切たちきる。あたり一めん人間の叫喚……。叫ぶように波をき分け、わめくように波に押されながら、恐しい渦のなかに彼はいる。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
見渡す限りの黒土原……ヴェルダンの光焔……轟音ごうおん……死骸の山……折れ砕けた校庭の樹列……そうしてあの美しい候補生……等々々も皆、そうした疑惑の投影としか思えなくなって来た。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それまで河波の音と芦荻ろてきの声しかなかった附近の闇がいちどに赤くなった。そして一発の轟音ごうおんが天地のしじまを破るとともに
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人足たちは、桟橋から轟音ごうおんと共に落ちて来る石炭の雪崩なだれの下で、その賃銀のためにではなく、その雪崩から自分を救うために一心に、血眼ちまなこになって働いた。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
大戦後の好景気に煽られた星浦製鉄所は、昼夜兼行の黒烟くろけむりを揚げていた。毎日の死傷者数名という景気で、数千人を収容する工場の到る処に、殺人的な轟音ごうおんと静寂とがモノスゴく交錯していた。
オンチ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
男は答えずにベンチに近づく、海が、その足もとに轟音ごうおんをたたきつける。
一人ぼっちのプレゼント (新字新仮名) / 山川方夫(著)
武蔵は今——鉄砲の轟音ごうおんと同時に、下り松の幹をくるっと自分の背でこするように動いた。たまは彼の顔から少しれて樹の幹へぶすんとあたった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なまなましい轟音ごうおん。それが女を包む。
一人ぼっちのプレゼント (新字新仮名) / 山川方夫(著)
時こそあれ、一発の轟音ごうおんが谷のうちにこだました。——と思うと、隘路あいろの壁をなしている断崖の上から、驚くべき巨大な岩石が山を震わして幾つも落ちてきた。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
人穴城ひとあなじょうがやけた轟音ごうおんは、このへんまで、ひびいたとみえて、うちに落着けないさとの人があっちに一群ひとむれ、こっちにひとかたまり、はるかにのぼる煙へ小手をかざしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドドドドドド……ッ——と地震ないのような轟音ごうおんは、その一しゅんに、あたりを晦冥かいめいにしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一昨日おととい、唖聾を石倉で調べた時、鉄砲の轟音ごうおんといっしょに、窓から消えた奇怪な女の顔!
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かたわらの狼煙筒のろしづつへ火を落すと、轟音ごうおん一声、門楼の宙天に黄いろい煙の傘がひらいた。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天地も裂くばかりな轟音ごうおんとなって、矢石しせき鉄丸を雨あられと敵の出足へ浴びせかけた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と思うと同時に、とつぜん、天地をひっくばかりな轟音ごうおん
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
轟音ごうおんが変った。汽車は、ひとつの川をうしろにしていた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徒労になった轟音ごうおんに、耳をガンとさせた旅川周馬。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)