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薄闇
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うすやみ
ふりがな文庫
“
薄闇
(
うすやみ
)” の例文
我が生ける間の「明」よりも、今ま死する
際
(
きは
)
の「
薄闇
(
うすやみ
)
」は我に取りてありがたし。暗黒! 暗黒! 我が行くところは
関
(
あづか
)
り知らず。
我牢獄
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
その
時
(
とき
)
誰
(
だれ
)
か
忍
(
しの
)
び
足
(
あし
)
に、おれの
側
(
そば
)
へ
來
(
き
)
たものがある。おれはそちらを
見
(
み
)
ようとした。が、おれのまはりには、
何時
(
いつ
)
か
薄闇
(
うすやみ
)
が
立
(
た
)
ちこめてゐる。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
秋の日の夕暮近いころで、電車を幾つも乗り換え北沢へ着いたときは、野道の茶の花が
薄闇
(
うすやみ
)
の中に
際
(
きわ
)
立って白く見えていた。
睡蓮
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
安岡は、自分自身にさえ
気取
(
けど
)
られないように、木柵に沿うて、グラウンドの
塵
(
ちり
)
一本さえ、その
薄闇
(
うすやみ
)
の中に見失うまいとするようにして進んだ。
死屍を食う男
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
老人は
薄闇
(
うすやみ
)
の中で、何かゴトゴトいわせていたが、やがて、バタンと大きな音がしたかと思うと、部屋の中が、突然まっ暗になってしまった。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
▼ もっと見る
行きつけの美容院へ行って、すっかりお化粧をして来たものらしく、彼女の顔の白さが
薄闇
(
うすやみ
)
のなかに匂いやかに
仄
(
ほの
)
めいた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
何分、
薄闇
(
うすやみ
)
の中で、余り柄の良くない若僧の一隊が、天下の摂政の行列にぶつかってきたのだから、基房の家来達は
現代語訳 平家物語:01 第一巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
銃声が轟然と真夜中の
薄闇
(
うすやみ
)
を揺り動かした。どこからか急に犬が
吠
(
ほ
)
えだして、そしてその一匹の犬が鳴きやむと、またどこからか別の犬が吠えだした。
恐怖城
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
その揺めく炎は、消えかかった
蒼白
(
あおじろ
)
い明るみとぶつかって、室の重々しい
薄闇
(
うすやみ
)
をいっそう
沈鬱
(
ちんうつ
)
になしていた。メルキオルが窓のそばにすわって、声をたてて泣いていた。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それはただ、自分が一生けんめい
薄闇
(
うすやみ
)
の中で見きわめようと
空
(
むな
)
しい努力をしている、見知らぬ、美しい、しかも
物凄
(
ものすご
)
い顔のように、わたしをおびえさせるだけであった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
がらんとして何もない石畳と
絨氈
(
じゅうたん
)
の奥まった
薄闇
(
うすやみ
)
へ、高い窓から
射
(
さ
)
し入る陽の光がステンドグラスの加減で、虹ともつかず、花明りともつかない表象の世界を幻出させている。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ただ一体安置されるにしても、おそらく一切の装飾を去って、
薄闇
(
うすやみ
)
の中にすらりと立たしめるのが最もふさわしいであろうと私は考えていた。かような構想はむろんむずかしい。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
眼が
薄闇
(
うすやみ
)
に
馴
(
な
)
れるにつれて彼女の眼は、ある一点に落ちて、動かなくなってしまった。
紅毛傾城
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
しめやかな
音
(
おと
)
に
雨
(
あめ
)
はなほ
降
(
ふ
)
り
續
(
つゞ
)
いてゐる。
少
(
すこ
)
しばかり
冷
(
ひ
)
え
冷
(
び
)
えとする
寒
(
さむ
)
さは、
部屋
(
へや
)
の
中
(
なか
)
の
薄闇
(
うすやみ
)
に
解
(
と
)
けあつて、そろ/\と
彼女
(
かのぢよ
)
を
現
(
うつゝ
)
な
心持
(
こゝろも
)
ちに
導
(
みちび
)
いて
行
(
ゆ
)
く。ぱつと
部屋
(
へや
)
があかるくなる。
悔
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
電圧はきわめて高く、時々に異常なあらゆる光がひらめき出した。その次にはまた
薄闇
(
うすやみ
)
が落ちてきた。間を置いては深い遠いとどろきが聞こえて、雲のうちにある多量の雷電を思わした。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
御袖
(
みそで
)
くくりかへりますかの
薄闇
(
うすやみ
)
の
欄干
(
おばしま
)
夏の加茂川の神
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そこともわかぬ森かげの
鬱憂
(
メランコリア
)
の
薄闇
(
うすやみ
)
に
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
その草もない
薄闇
(
うすやみ
)
の路に、銃身を並べた一隊の兵が、
白襷
(
しろだすき
)
ばかり
仄
(
ほのめ
)
かせながら、静かに
靴
(
くつ
)
を鳴らして行くのは、悲壮な光景に違いなかった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そして、
燐
(
りん
)
の
焔
(
ほのお
)
が燃えるかと疑われる、
爛々
(
らんらん
)
たる四つの眼が
薄闇
(
うすやみ
)
に飛び違い、すさまじい咆哮が部屋の四壁をゆるがした。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
島田に結って、白襟に
三枚襲
(
さんまいがさね
)
を着飾ったお今の、濃い化粧をした、ぽっちゃりした顔が、
黄昏時
(
たそがれどき
)
の
薄闇
(
うすやみ
)
のなかに、
幌
(
ほろ
)
の隙間から、
微白
(
ほのじろ
)
く見られた。その後から浅井夫婦が続いた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
妙に白っぽい姿が
薄闇
(
うすやみ
)
のなかにすらりと立っていて、昨年の秋感じたようなほのぼのとした暖さがみられない。私は全く無感動のまま、これはどうしたことだろうと自分の心を疑ってみた。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
金色の
濃
(
こま
)
やかな
薄闇
(
うすやみ
)
の中に、種々の面影が怪しくも浮き出してきた。その見知らぬ魅力と無言の喜びとが、クリストフの眼と心とをひきつけた。彼はそれらの面影に執着し、その方へ耳を澄ました。
ジャン・クリストフ:07 第五巻 広場の市
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
薄闇
(
うすやみ
)
ににほひゆく赤き
曇
(
くもり
)
の
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
薄闇
(
うすやみ
)
の中に、
牙
(
きば
)
のようなまっ白な歯が、浮き出して見えた。二つの燐光が油を注いだように、
爛々
(
らんらん
)
と燃え立った。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
が、おれのまわりには、いつか
薄闇
(
うすやみ
)
が立ちこめている。誰か、——その誰かは見えない手に、そっと胸の
小刀
(
さすが
)
を抜いた。同時におれの口の中には、もう一度血潮が
溢
(
あふ
)
れて来る。
藪の中
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
濡れ濡れて
薄闇
(
うすやみ
)
に入る……
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
薄闇
(
うすやみ
)
の中に一郎のあの美しい顔が血に染まって浮き上がって見え、肩から胸にかけて手傷を受けたらしく、その辺を血まみれにして、身をくねらせて横たわっていた。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
少し行くと、廊下が
鉤
(
かぎ
)
の手になっていた。怪物はその角を曲がりながら、背を丸めて、ヒョイとこちらを振り返った。黒布の二つの切れ目が、
薄闇
(
うすやみ
)
の中にキラリと光った。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
薄
常用漢字
中学
部首:⾋
16画
闇
常用漢字
中学
部首:⾨
17画
“薄”で始まる語句
薄
薄暗
薄紅
薄明
薄暮
薄縁
薄荷
薄汚
薄氷
薄墨