菖蒲しやうぶ)” の例文
山にちかき処に須川すかは村(川によりて名づく)菖蒲しやうぶ村といふあり。此ひし山、毎年二月に入り夜中にかぎりて雪頽なだれあり、其ひゞき一二里にきこゆ。
おもへばなんさくらはるしりがほ今歳ことしけるつらにくさよまたしても堀切ほりきりの菖蒲しやうぶだよりくるま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぐわつ、五ぐわつのお節句せつくは、たのしい子供こどものおまつりです。五ぐわつのお節句せつくには、とうさんのおうちでもいしせた板屋根いたやね菖蒲しやうぶをかけ、ぢいやが松林まつばやしはうからつてさゝちまきをつくりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
藤、山吹、菖蒲しやうぶと数へてくると、どうもこれは唯事ただごとではない。「自然」に発狂の気味のあるのは疑ひ難い事実である。僕は爾来じらい人の顔さへ見れば、「天変地異が起りさうだ」と云つた。
夜久野やくのやま薄墨うすずみまどちかく、くさいた姫薊ひめあざみくれなゐと、——菖蒲しやうぶむらさきであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
のぼりかけた陽とその圓い形を横ぎつて行く舟、一かたまりになつたあし菖蒲しやうぶとそこから出てゐる蓮の花の冠をつけた水の女神の頭、山櫨さんざしの花環の下の籬雀かきすゞめの巣の中に坐つてゐる妖精など
菖蒲しやうぶの節句の日を選び織部正桔梗の方と同列にて諸士を集め和歌の催し事有之これあり、かね/″\申触れ候ことなれば敷島の道をたしなむ者共いでや秀歌をうたひ出して褒美ほうびに預からんものと存候事に候
りやうがはに紫の菖蒲しやうぶの花が咲いてゐる長い路でありました。それはばかに長い路でありました。菊次さんはもうずゐぶん歩いて来たやうに思ふのですが、いつかう路がつきるやうすもありません。
百姓の足、坊さんの足 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
さうして家族かぞくぼつしたにしても何時いつになくまだあかるいうちゆあみをしてをんなまでがいた菖蒲しやうぶかみいて、せはしいあひだをそれでも晴衣はれぎ姿すがたになる端午たんごるのをものうげにつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
菖蒲しやうぶのいろの みどりいろ
のきばの菖蒲しやうぶ
未刊童謡 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
その上又珍らしいことは小町園こまちゑんの庭の池に菖蒲しやうぶはすと咲ききそつてゐる。