苦笑くしょう)” の例文
呂宋兵衛の辞退をきくと、半助は、だれも刑場けいじょうへでると、一しゅ鬼気ききにおそわれる、その臆病風おくびょうかぜ見舞みまわれたなと、苦笑くしょうするさまで
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それがあたりの容子ようすでは、どうしても茶室に違いありません。「こがらしの茶か」——わたしはそう苦笑くしょうしながら、そっとそこへ忍び寄りました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
自分は面白半分わざと軽薄な露骨ろこつを云って、看護婦を苦笑くしょうさせた。すると三沢が突然「おい氷だ」と氷嚢を持ち上げた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
? 茶釜ちゃがまでなく、這般この文福和尚ぶんぶくおしょう渋茶しぶちゃにあらぬ振舞ふるまい三十棒さんじゅうぼう、思わずしりえ瞠若どうじゃくとして、……ただ苦笑くしょうするある而已のみ……
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここぞとばかり、いきせきってけた群衆ぐんしゅう苦笑くしょうのうちに見守みまもっていたのは、飴売あめうり土平どへいだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
と、自分は、はなの頭に、煤煙ばいえんであろう、黒いものがべっとりとついているのを見つけて苦笑くしょうした。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
私は返事もせずに、口をゆがめて無理に苦笑くしょうした。恐ろしくて話をするどころではなかったのだ。
動物園の一夜 (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
そんなことをおもうと賢二けんじは、ちょっと苦笑くしょうせずにはいられませんでした。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから、ちょっと皮肉らしい苦笑くしょうをうかべながら
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
幼年組の連中がささやいたので、一同苦笑くしょうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
船長は、苦笑くしょうしていった。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
賢造は苦笑くしょうを洩らしながら、始めて腰の煙草入たばこいれを抜いた。が、洋一はまた時計を見たぎり、何ともそれには答えなかった。
お律と子等と (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きちはそういって苦笑くしょうするようにうなずいたが、隣座敷となりざしきを気にしながら、さらこえひくめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
果心居士も竹童の叱言には、いつも途中から苦笑くしょうしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは思わず苦笑くしょう致しました。盗人に金を調達して貰う、——それが可笑おかしいばかりではございません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
じっとおこののかお見詰みつめていた春信はるのぶは、苦笑くしょうくちびるゆがめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
とどなりながら、卜斎ぼくさいはすこし苦笑くしょうをもらしてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田口一等卒は苦笑くしょうした。それを見るとどう云うわけか、堀尾一等卒の心のうちには、何かに済まない気が起った。と同時に相手の苦笑が、面憎つらにくいような心もちにもなった。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高平太はそこを恐れているのじゃ。おれはこう考えたら、苦笑くしょうせずにはいられなかった。山門や源氏げんじの侍どもに、都合つごうい議論をこしらえるのは、西光法師さいこうほうしなどのはまり役じゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
不意打を食った俊助は、買うとか買わないとか答える前に、苦笑くしょうしずにはいられなかった。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
牧野は深夜のランプの光に、妙な苦笑くしょうを浮べながら、とうとうお蓮へ声をかけた。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
穂積中佐は苦笑くしょうした。が、相手は無頓着に、元気のよい口調を続けて行った。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
二人のまわりには大勢の学生たちが、狭い入口から両側の石段へ、しっきりなくあふれ出していた。俊助は苦笑くしょうもらしたまま、大井の言葉には答えないで、ずんずんその石段の一つを下りて行った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はさっきから苦笑くしょうをしては、老酒ラオチュばかりひっかけていたのである。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、その相手は何かと思えば、浪花節語なにわぶしかたりのしたなんだそうだ。君たちもこんな話を聞いたら、小えんのわらわずにはいられないだろう。僕も実際その時には、苦笑くしょうさえ出来ないくらいだった。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
俊助はその後を見送りながら、思わず苦笑くしょうもらしたが、この上追っかけて行ってまでも、泥を吐かせようと云う興味もないので、正門を出るとまっすぐに電車通りを隔てている郁文堂いくぶんどうの店へ行った。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
甚内はかこいへはいると同時に、ちらりと苦笑くしょうらしました。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大浦は苦笑くしょうを浮べたまま、みずかあざけるように話し続けた。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
Sさんは、ちょっと苦笑くしょうして言った。
悠々荘 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
彼はこう言って苦笑くしょうするのだった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
牧野はやむを得ず苦笑くしょうした。
奇怪な再会 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
田口一等卒は苦笑くしょうした。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)