舶来はくらい)” の例文
旧字:舶來
『女だってそのくらいな楽しみがなけりゃ仕様がない』そう云って、舶来はくらいのいいにおいのする煙草を買って来ては彼女に吸わせました。
途上 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「さあ、愈々いよ/\出世の手蔓てづるが出来かかつたぞ。明日あすは一つあの殿様のお顔を、舶来はくらい石鹸しやぼんのやうにつるつるに剃り上げて呉れるんだな。」
どこから手に入れたか、この日は舶来はくらい解剖図かいぼうずを拡げて、それと一緒に一ちょうのナイフをいじりながら独言ひとりごとを言っています。
正木大尉は舶来はくらい刻煙草きざみたばこを巻きに来ることもあるが、以前のようにはあまり話し込まない。幹事室の方に籠って、暇さえあれば独りで手習をした。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は洋服であつたが、種田君は其頃紳士仲間に流行はやつた黒の繻子目しゆすめのマントを着て、舶来はくらいねず中折帽なかをればうかぶつて居た。
二黒の巳 (新字旧仮名) / 平出修(著)
その盤面ダイアルは青じろくて、ツルツル光って、いかにも舶来はくらい上等じょうとうらしく、どこでも見たことのないようなものでした。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
幸い持合せのちと泥臭どろくさいが見かけは立派な円筒形えんとうけいの大きな舶来はくらい唐墨とうぼくがあったので、こころよく用立てた。今夜見れば墨痕ぼくこん美わしく「彰忠しょうちゅう」の二字にって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それではきこえないからわからないはづです、それからまた蓄音器ちくおんきといふものが始めて舶来はくらいになりました時は、吾人共われひととも西洋人せいやうじん機械学きかいがくけたる事にはおどろきました。
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
山の手の某所ぼうしょに住んでるある華族かぞくの老婦人が、非常に極端きょくたんな西洋嫌いで、何でも舶来はくらいのものやハイカラなものは、一切『西洋くさい』と言って使用しない。
手術と決ってはいたが、手術するまえに体にりきをつけておかねばならず、舶来はくらいの薬を毎日二本ずつ入れた。一本五円もしたので、こわいほど病院代は嵩んだのだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ところが舶来はくらいの芝居は情け容赦ようしゃがないもので、日本の勧善懲悪かんぜんちょうあくみたいにピエロも末はめでたしなどということは間違っても有り得ず、ヤッツケ放題にヤッツケられ
土の中からの話 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
と同時に悪魔もまた宗徒の精進しょうじんさまたげるため、あるいは見慣れぬ黒人こくじんとなり、あるいは舶来はくらい草花くさばなとなり、あるいは網代あじろの乗物となり、しばしば同じ村々に出没した。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
電車でんしゃにのってからおじさんに、たばこをったみせで、舶来はくらい人形にんぎょうたことをはなすと
花かごとたいこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
剪燈新話はみん瞿佑くゆうと云う学者の手になったもので、それぞれ特色のある二十一篇の怪奇談を集めてあるが、この説話集は文明年間に日本に舶来はくらいして、日本近古の怪談小説に影響し
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
と照彦様はイライラしながら舶来はくらいのおトンカチを本箱のひきだしから取りだした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
粉白おしろい粉だとて、わざわざ舶来はくらい品を買ひなさらんと……」
少年 (新字旧仮名) / 神西清(著)
春日かすが太占ふとまにを調べるかたわらには阿蘭陀オランダの本を読み、いま易筮えきぜいを終って次に舶来はくらいの拳銃を取り出すという人であります。
舶来はくらい燐寸マッチで壁をこすったのさ。暗闇なら何を擦っても火が出るんだよ。栄ちゃんの着物を擦って見ようか」
少年 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ふんふん。よし、よし。さあ、みんな舶来はくらいウィスキーを一杯いっぱいずつ飲んでやすむんだよ。」
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのほか柔道、水泳とうも西川と共に稽古けいこしたり。震災の少し前に西洋より帰り、舶来はくらいの書をことごとく焼きたりと言ふ。リアリストと言ふよりもおのづからセンテイメンタリズムを脱せるならん。
学校友だち (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「いや、僕達商館にいるものは舶来はくらいのを無税で取寄せる」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
舶来はくらいウェスキイ 一ぱい、二りん半。」と書いてありました。
カイロ団長 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
舶来はくらいのを持っていらっしゃいます」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)