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繪端書
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ゑはがき
(
焚火の
事も
語られたが
如何だか)それから
繪端書に
氏の
署名を
乞ひ、それを
余の
許まで
寄せられた。
病人は
轉地先で
年を
越した。
繪端書は
着いた
日から
毎日の
樣に
寄こした。それに
何時でも
遊びに
來いと
繰り
返して
書いてない
事はなかつた。
御米の
文字も一二
行宛は
必ず
交つてゐた。
……
聞いて、
眞實にはなさるまい、
伏木の
汽船が、
兩會社で
激しく
競爭して、
乘客爭奪の
手段のあまり、
無賃銀、たゞでのせて、
甲會社は
手拭を
一筋、
乙會社は
繪端書三枚を
景物に
出すと
言ふ。
夏も
既に
過ぎた九
月の
初なので、
大方の
避暑客は
早く
引き
上げた
後だから、
宿屋は
比較的閑靜であつた。
宗助は
海の
見える
一室の
中に
腹這になつて、
安井へ
送る
繪端書へ二三
行の
文句を
書いた。
宗助は
安井と
御米から
屆いた
繪端書を
別にして
机の
上に
重ねて
置いた。
外から
歸るとそれが
直眼に
着いた。
時々はそれを一
枚宛順に
讀み
直したり、
見直したりした。
仕舞にもう
悉皆癒つたから
歸る。