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ゑはがき
……
聞いて、
眞實にはなさるまい、
伏木の
汽船が、
兩會社で
激しく
競爭して、
乘客爭奪の
手段のあまり、
無賃銀、たゞでのせて、
甲會社は
手拭を
一筋、
乙會社は
繪端書三枚を
景物に
出すと
言ふ。
夏も
既に
過ぎた九
月の
初なので、
大方の
避暑客は
早く
引き
上げた
後だから、
宿屋は
比較的閑靜であつた。
宗助は
海の
見える
一室の
中に
腹這になつて、
安井へ
送る
繪端書へ二三
行の
文句を
書いた。
B まだ
斯ういふのがあるよ。
矢張り
僕の
友人だが、
國の
母親がひとりで
寂しがつてゐると
云つて、
毎日一
枚づつ
繪葉書を
出してゐるが、モウそれを三四
年間一
日も
缺かさずやつてるから
感心だらう。