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稍々
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やゝ
ふりがな文庫
“
稍々
(
やゝ
)” の例文
繁の氣色の
稍々
(
やゝ
)
動いたのを見たのであらう。お夏は慌しく三度口紅をつけた。そして三度振向いた、が、此度は恥し氣にではない。
葬列
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
襖
(
ふすま
)
手荒らに開かれて現はれたる一丈天、其の
衣
(
きぬ
)
の身に合はず見ゆるは、
大洞
(
おほほら
)
のをや仮り着せるならん、既に
稍々
(
やゝ
)
酒気を帯びたる
面
(
かほ
)
を
燈火
(
ともしび
)
に照らしつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
大阪屋はその後を睨めながら、おきみが戻つて來るのを待つてゐたが、
稍々
(
やゝ
)
しばらくしても戻つて來ないので、これも立ち上つて、隣室へ入つて行つた。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
稍々
(
やゝ
)
役立つには役立つたが、此の無恋の、此の落寞たる心もちを
医
(
いや
)
すには、もう役立ちさうもなく見えて、何か変つた
刺戟剤
(
しげきざい
)
を、是非必要としてゐたんだ。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
法身の価値を知ることが出来ないものである、フロオベルの生活などは、
稍々
(
やゝ
)
それに近いと言つて好いと思ふ。
孤独と法身
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
▼ もっと見る
彼の頭のなかでくる/\と動いてゐたものが
稍々
(
やゝ
)
静まる時期に入るにつれ、和作は加納家に対してはじめて正体のはつきりした屈辱を感じるやうになつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
絵画は
稍々
(
やゝ
)
原始的な石版刷りで、恐らくインドラという神の図であった。笛は幾らか寸の足りぬ安価相な出来で、その末端に、
素人細工
(
しろうとざいく
)
らしい赤銅の鎖が付けてあった。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
日本語に之を
重訳
(
ちようやく
)
して罪過と
謂
(
い
)
ふは
稍々
(
やゝ
)
穏当ならざるが
如
(
ごと
)
しと
雖
(
いへど
)
も、世にアイデアル、リアルを訳して理想的、実写的とさへ言ふことあれば、是れ
亦
(
また
)
差して
咎
(
とが
)
むべきにあらず。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
『
猫兒
(
プス
)
や』
猫
(
ねこ
)
の
氣
(
き
)
に入るか
何
(
ど
)
うかは
解
(
わか
)
りませんでしたが、
兎
(
と
)
に
角
(
かく
)
愛
(
あい
)
ちやんは
些
(
や
)
や
恐
(
おそ
)
る/\
斯
(
か
)
う
呼
(
よ
)
びかけました。けれども
猫
(
ねこ
)
は、
只
(
たゞ
)
以前
(
まへ
)
よりも
稍々
(
やゝ
)
廣
(
ひろ
)
く
齒
(
は
)
を
出
(
だ
)
して
見
(
み
)
せたばかりでした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
そして、自分ながら
意気地
(
いくぢ
)
なく、明日からまた気をとり直して、みつしり働かうといふ
料簡
(
れうけん
)
になるのであつた。此の料簡は今から二年前、彼が此波止場へ着いた時の心持と
稍々
(
やゝ
)
同じ者である。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
やうやく気を沈めて其人の
態
(
さま
)
をつく/″\打ち眺むれば、まがふ
方
(
かた
)
なき狂女なり。さては鬼にもあらずと心
稍々
(
やゝ
)
安堵したれば、
何故
(
なにゆゑ
)
にわれを
留
(
と
)
むるやと問ひしに、唯ださめ/″\と泣くのみなり。
鬼心非鬼心:(実聞)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
信一郎は、一寸おいてきぼりを喰つたやうな、
稍々
(
やゝ
)
不快な感情を持ちながら、暫らく其処に佇立した。大学生に話しかけた自分の態度が、下等な新聞記者か何かのやうであつたのが、恥しかつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
と
云
(
い
)
つたが、
窓
(
まど
)
に
掛
(
か
)
けた
肱
(
ひぢ
)
が
浮
(
う
)
いて、
唯吉
(
たゞきち
)
の
聲
(
こゑ
)
が
稍々
(
やゝ
)
忙
(
せは
)
しかつた。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
望月刑事は司法主任の榎戸警部に
稍々
(
やゝ
)
得意そうに話していた。
青服の男
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「まるで
心狂
(
しんきょう
)
のようやが。」と母は
稍々
(
やゝ
)
小さな声で言った。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
待つ間
稍々
(
やゝ
)
久しくして
主人
(
あるじ
)
は扉を排して出で来りぬ、でつぷり
肥
(
ふと
)
りたる五十前後の
頑丈造
(
ぐわんぢやうづく
)
り、牧師が
椅子
(
いす
)
を離れての
慇懃
(
いんぎん
)
なる
挨拶
(
あいさつ
)
を、
軽
(
かろ
)
くも
顋
(
あご
)
に受け流しつ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「過去、眠れ」
稍々
(
やゝ
)
あつて彼は、激したやうに自分に云つた。「あんな過去……」
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは、
若
(
も
)
しや
料理人
(
クツク
)
がそれを
覺
(
さと
)
りはしないかと、
稍々
(
やゝ
)
氣遣
(
きづか
)
はしげにその
方
(
はう
)
を
眺
(
なが
)
めました、が、
料理人
(
クツク
)
は
忙
(
いそが
)
はしげに
肉汁
(
スープ
)
を
掻
(
か
)
き
廻
(
まは
)
して
居
(
ゐ
)
て、それを
聞
(
き
)
いて
居
(
ゐ
)
ないやうに
見
(
み
)
えたので
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
二氏は如何にして
此
(
かく
)
の如き謬見を
抱
(
いだ
)
きしや。吾人
熟々
(
つら/\
)
二氏の意の
在
(
あ
)
る
処
(
ところ
)
を察して
稍々
(
やゝ
)
其由来を知るを得たり。
蓋
(
けだ
)
し二氏は罪過説に
拘泥
(
こうでい
)
する時は命数戯曲、命数小説の弊に陥るを憂ふる者ならん。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
主人は黙つて其の紙包を開けり、中より出でしは
皺
(
しわ
)
クチヤになれる新聞の原稿なり、彼は
膝頭
(
ひざかしら
)
にて
稍々
(
やゝ
)
之を押し延ばしつ、口の
裡
(
うち
)
にて五六行読みもて行けり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
稍
漢検1級
部首:⽲
12画
々
3画
“稍”で始まる語句
稍
稍〻
稍久
稍深
稍疲
稍然
稍事
稍傲
稍後
稍明