トップ
>
深傷
>
ふかで
ふりがな文庫
“
深傷
(
ふかで
)” の例文
後を追っかけようとしましたが、なにぶんの
深傷
(
ふかで
)
で、どうすることも出来ません。女房は足を挫いて、これも身動きも出来ない始末。
銭形平次捕物控:092 金の茶釜
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
流れは烈しいし、
深傷
(
ふかで
)
を負っているので、曹洪の四肢は自由に水を切れなかった。見る見るうちに、下流へ下流へと押流されてゆく。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仮令
(
たとえ
)
いかなる苦難を負おうとも、一度姪に負わせた
深傷
(
ふかで
)
や自分の生涯に留めた汚点をどうすることも出来ないかのように思って来た。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
確かに
深傷
(
ふかで
)
を負っている。もしかしたら一命を失ったかもしれない。あの美しい顔はもう二度とほほえむことがないかもしれない。
暗黒星
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
何かよっぽどの
深傷
(
ふかで
)
を受けていたんだろうが……いくら土砂降り雨の中だって、交番のお巡りが立っておらんことはあるまいが
蒲団
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
▼ もっと見る
巌はだまって顔をそむけた、苦しさは首をのこぎりでひかれるより苦しい、しかしそれは
火傷
(
やけど
)
の痛みではない、父をさげすむ心の
深傷
(
ふかで
)
である。
ああ玉杯に花うけて
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
かなりの
深傷
(
ふかで
)
だが、クラパはじっとしていなかった。むりやりに
天幕
(
テント
)
の中に寝かすと、ようやく観念したものか、眠ったようにじっとしていた。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
肉がえぐられる
深傷
(
ふかで
)
だという
無慙
(
むざん
)
な話であるけれども、彼の方が女房の横ッ面をヒッパたいたことすらもないという沈着なる性格、深遠なる心境
悪妻論
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
重傷や
深傷
(
ふかで
)
はなかったが、しかし無数に傷を受けて、歩行が自由にできなかったからで、で、あちこちで身体を休めたり、井戸水などを飲んだりした。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
剣術はからっ
下手
(
ぺた
)
にて、
放蕩
(
ほうとう
)
を働き、大塚の親類に預けられる程な未熟
不鍛錬
(
ふたんれん
)
な者なれども、飯島は此の
深傷
(
ふかで
)
にては彼の刃に打たれて死するに相違なし
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
かもめ——ドーヴィルから適当な距離のオンフルール海岸は、ドーヴィル賭博人の敗北の
深傷
(
ふかで
)
や遊楽者達の激しい日夜の享楽から受ける炎症を
癒
(
いや
)
しに行く静涼な土地だ。
ドーヴィル物語
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
それを助け起してみると、なんのこと、艇内に残っているように命じてあった
佐々
(
さっさ
)
記者だった。彼は
深傷
(
ふかで
)
に気を失っていたが、ようやく
正気
(
しょうき
)
にかえって一行に
縋
(
すが
)
りついた。
月世界探険記
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
緩
(
ゆる
)
く石垣に打ち寄せる水の音、恐ろしい獣が
深傷
(
ふかで
)
にうめくような低い工場の汽笛の声、さては電車の遠く去り近く来たる
轟
(
とどろ
)
きが、私の耳には今さながら夢のように聞えて
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
撃たれよ みづからの
深傷
(
ふかで
)
に生きたる哄ひをあげて 千年の鉄柵に懊のやうな血を流すべし。
逸見猶吉詩集
(新字旧仮名)
/
逸見猶吉
(著)
快楽
(
けらく
)
の夢を結んだ床は血の地獄と変る。芹沢は股、腕、腹に数カ所の
深傷
(
ふかで
)
を負うたがそれでも屈しなかった。力を極めてとうとう屏風を刎ね返して枕元の刀を抜いて立った。
大菩薩峠:03 壬生と島原の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
いとせめての
深傷
(
ふかで
)
には、なんの薬も賜わねば、その真白のみ手にキスをまいらせつつ、汝紙ぎれ、伝えてよ、これはこれ、病みさらばえて身も細る、エセックスよりは参りしと
エリザベスとエセックス
(新字新仮名)
/
リットン・ストレイチー
(著)
「以和為貴」という思想が、太子の心に何らの安心をももたらさなかったということが肝心だ。むしろ時代の
深傷
(
ふかで
)
から出た
呻吟
(
しんぎん
)
の言葉であった。大切なのはその解釈ではない。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
戦争でもあると、お父様は
喉
(
のど
)
のひりつくようなこともあるし、
深傷
(
ふかで
)
を負うことだってないとはいえないでしょう。でも、お父様は一言だって、苦しいと仰しゃったことはないわ。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
と低くうめくのは、さすがの源三郎横腹の
深傷
(
ふかで
)
をおさえて、よろめくようす……わが隠れている壁から、ふいに繰り出された一刀で、源三郎、脇腹から脇腹へ、刺し貫かれたとみえる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その間にも或る夜の畑の中で盗人を見つけた一人の村人が、永追いをして斬られ、
深傷
(
ふかで
)
を負った。そして畑の作物は
掠
(
ぬす
)
み取られ、いやがうえに村人の
憤
(
いきどお
)
りを
駆
(
か
)
り立てることになったのである。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
深傷
(
ふかで
)
はうけなかったが、藤五の切ッ先には、手ごたえがきこえた。——数歩、よろめいた伝次は、当然、逆な受けに廻されていた。
私本太平記:02 婆娑羅帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
自分のためにあれほどの
深傷
(
ふかで
)
を負わせられながら、しかも彼女自身
何等
(
なんら
)
の償いを求めようとする
気色
(
けしき
)
も無いような節子に対しては
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「いや、こいつは聟殿に見せる幕じゃねえ、親御の勘兵衛さんだけ入って下さい——それから町内の外科を大急ぎで頼むんだ、
深傷
(
ふかで
)
だが、命は——」
銭形平次捕物控:100 ガラッ八祝言
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
丸木舟の旅はつづけられた——左腕の
深傷
(
ふかで
)
をなおすために、クラパを病院のあるバンジェルマシンへ送ろうとして、英夫たちはひどく骨を折ってしまった。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「なら、だんなさま、たしかにご隠居さまはそのときの曲者にそういございません。疵は左ななめに乳の上へかけて、よほどの
深傷
(
ふかで
)
のように見うけられました」
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
已
(
や
)
むを得ず気の毒ながらも
深傷
(
ふかで
)
を負わしたが、一体何う云う仔細でまア水司又市を敵と探す者か、
此方
(
こちら
)
は
手負
(
ておい
)
で居るからせつない、これ娘お前泣かずに訳を云え
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あるいは致命傷にちかい抵抗不能の状態を与えるに足る
深傷
(
ふかで
)
であったと分るのですが、ノド笛にかみついた以上は被害者の真ッ正面から抵抗をうけなければなりません。
明治開化 安吾捕物:04 その三 魔教の怪
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
彼は生活力の強かったせいか、大隅の介抱の甲斐あって、
深傷
(
ふかで
)
にも屈せず元気をもりかえしたのだった。彼こそは、いま博士邸の檻の中に収容されている河村武夫の父親であった。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
自分が介抱に堪えられないほどにも
深傷
(
ふかで
)
を負っているのであったらほかならぬ恋人の妹である、鈴江に恋人の介抱を、こだわらずに依頼するであろう。現在の自分はそうではない。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そのころ牛込御門内に住居していた
先手役
(
さきてやく
)
青山主膳(千五百石)の
組与力同心
(
くみよりきどうしん
)
が召捕りに向ったところ、同心二人まで
深傷
(
ふかで
)
を負い、与力も
辛
(
から
)
き目に遭ってほうほうの
体
(
てい
)
で逃げかえった。
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「二人ともこれで実はそうとう
深傷
(
ふかで
)
を負ってるのだなあ」
扉の彼方へ
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「
深傷
(
ふかで
)
か?」
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
かえって、その二人などが、真っ先に、割りつけられ、後もみな
深傷
(
ふかで
)
薄傷
(
うすで
)
。
与惣兵衛
(
よそべえ
)
など、ここまで気丈に帰って来たが、ひと口、水を
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いや、こいつは聟殿に見せる幕ぢやねえ。親御の勘兵衞さんだけ入つて下さい——それから町内の外科を大急ぎで頼むんだ、
深傷
(
ふかで
)
だが、命は——」
銭形平次捕物控:100 ガラツ八祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
さもなくば南半球特有の
大颱風
(
ハリケーン
)
によってさすがの海の狼も海底の藻屑と消え果てたものか、もしくば英豪艦隊に負わされし
深傷
(
ふかで
)
のためにわずかに
覆没
(
ふくぼつ
)
を免かれつつも
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
そして岸本の神経は姪に負わせ又自分でも負った
深傷
(
ふかで
)
に向って注ぎ集るように成って行った。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
傷口は直ちに結ばれたけれど、それは
彼
(
か
)
の
深傷
(
ふかで
)
にとって、何の足しにもならなかった。
恐怖の口笛
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
良「孝助殿はどうも遁れ難い剣難じゃ、なに軽くて
軽傷
(
うすで
)
、それで済めば宜しいが、何うも
深傷
(
ふかで
)
じゃろう、間が悪いと斬り殺されるという訳じゃ、どうもこれは遁れられん因縁じゃ」
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
米友の
網竿
(
あみざお
)
は恐ろしい、死物狂いになって真剣に
荒
(
あば
)
れ出されてはたまらない、
深傷
(
ふかで
)
、
浅傷
(
あさで
)
の
槍創
(
やりきず
)
を負って逃げ
退
(
の
)
くもの数知れず、米友は無人の境を行くように槍を突っかけて飛び廻る。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
致命傷はなかつたが、危く不具者になりかねない
深傷
(
ふかで
)
を数ヶ所に受けてゐた。
吹雪物語:――夢と知性――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
「
不愍
(
ふびん
)
なれど、かくなり果つるように、
所詮
(
しょせん
)
は、生れついておる男じゃった。助かるべくもない
深傷
(
ふかで
)
、せめてこう致してやるが師の慈悲よ」
剣の四君子:05 小野忠明
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
捨てるのが大事な仕事の一つと覚悟していたので、
深傷
(
ふかで
)
にも拘わらず、思わず力が入って庇の上へ投り上げてしまった、最後の一念というものだろう
銭形平次捕物控:053 小唄お政
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と、はぎしりしながら左近将監めがけてきりつけましたが、もはやこの
深傷
(
ふかで
)
ではたまりません。
亡霊怪猫屋敷
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さて男は
其処此処
(
そここゝ
)
と父を探して歩いた。
漸
(
やうや
)
く岡の蔭の熊笹の中に
呻吟
(
うめ
)
き倒れて居るところを尋ね当てゝ、肩に掛けて番小屋迄連れ帰つて見ると、手当も何も届かない程の
深傷
(
ふかで
)
。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
うん水司又市あーア何うも
彼奴
(
あいつ
)
は兇悪な奴だ、今に悪事を重ねる事で有るか、何う致してもなア、医者を呼んで手当をして遣ろうが、中々の
深傷
(
ふかで
)
で有るて、なれども
確
(
しっ
)
かり致せよ
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
思い設けぬ
狼藉
(
ろうぜき
)
に、四人のものは
深傷
(
ふかで
)
を負いながらも、刀を抜いてかかってみたけれどもすでに遅かった、僅かに相手を傷つけたのみで、四人もろともに田楽刺しになってその場に相果てたが
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
金さんは
深傷
(
ふかで
)
で逃げ延ることが出来ないから切腹するといふ。
諦らめアネゴ
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
五体は傷だらけだが、致命的な
深傷
(
ふかで
)
はまずないという。まなこは一度開いたが、またすぐ
瞼
(
まぶた
)
を閉じてしまった。もとより気息もあるやなし。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「それが不思議なんだ。どうしても見えねえ。これだけ
深傷
(
ふかで
)
を負はせたんだから、わざ/\引つこ拔きでもしなきア、死骸が刄物を脊負つて居る筈だ」
銭形平次捕物控:013 美女を洗ひ出す
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そればかりではない、彼女自身にも人には言えない
深傷
(
ふかで
)
を負わせられていた。彼女は長い骨の折れた旦那の留守をした頃に、伜の
娵
(
よめ
)
としばらく一緒に暮した月日のことを思出した。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
深
常用漢字
小3
部首:⽔
11画
傷
常用漢字
小6
部首:⼈
13画
“深”で始まる語句
深
深山
深淵
深更
深切
深川
深夜
深々
深窓
深沈