沼地ぬまち)” の例文
あの故郷の、沼地ぬまちのそばにえている、ヤナギの木のあいだから、わたしを見おろしたときと、すこしもかわらない月だったのです。
そして、午後おそく、大きな沼地ぬまちのまんなかにえている小さなマツの木の下におりたときにも、まだ元気をなくしてはいませんでした。
高山こうざんにはよくさういふ凹地くぼちみづたゝへて、ときには沼地ぬまちかたちづくり、附近ふきんいはあひだゆきをためてゐたりするところがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
沼地ぬまちの中に埋もれ、山に閉ぢ籠められて——神に授けられた自分の本性は違背ゐはいせられ、天から與へられた自分の才能は麻痺され——役立たずにされて
そなたもへび脱殻ぬけがら——丁度ちょうどあれにうすうすかわが、竜神りゅうじんからだからけてちるのじゃ。竜神りゅうじん通例つうれいしッとりした沼地ぬまちのようなところでそのかわぎすてる……。
このきたなどぶのやうな沼地ぬまちを掘返しながら折々をり/\沙蚕ごかひ取りが手桶を下げて沙蚕ごかひを取つてゐる事がある。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
そしてくらがりからあかるくなつてて、いままであるいてゐたみちのほとりに、つる寢泊ねとまりしてゐた沼地ぬまちのようなものゝあつたことに、のついた樣子ようすが、あきらかにかんぜられます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ツンドラ地帯ちたいって、沼地ぬまちみたいな、こけばかりはえているところがある。そこへがつくと、なかなかきえない。何年なんねんということなく、りんのようなのがしたからもえがる。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
童子どうじはしょんぼりにわから出られました。それでも、また立ちどまってしまわれましたので、母さまも出て行かれてもっとむこうまでおれになりました。そこは沼地ぬまちでございました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そこでかれはわたしに説明せつめいしてくれた。砂地すなじ沼沢しょうたくか多いランド地方の人は、沼地ぬまちを歩くとき水にぬれないように、竹馬に乗って歩くというのであった。なんてわたしはばかだったのであろう。
ガンたちは森の中の沼地ぬまちまり場所を見つけて、そこにいおりました。けれども、ニールスにはねるような所がありません。
それがかこまれてゐる緑の生籬いけがきや廣い耕地や低い田舍の丘(あのモオトンの荒い、ノオス・ミッドランドの沼地ぬまちと比べて何といふ穩やかな風景、緑の色であらう!)
沼地ぬまちにはこのゆきながれこむので、その沼水ぬまみづ温度おんど非常ひじようひくく、ひどくつめたいわけになります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たとえばその岩には沈んでできたしまのあること、木のえだくきのかけらのうずもれていること、ところどころにいろいろな沼地ぬまちえる植物しょくぶつが、もうよほど炭化たんかしてはさまっていること
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
岸べは沼地ぬまちのようにどろどろしていますし、みずうみの中には、どろの小島があっちにもこっちにも水面すいめんに顔を出しています。
こんなに眞暗まつくらになつてから行ける道ぢやございません、沼地ぬまちには道も何もないんでございますからね。それにこんなお寒い晩に——旦那樣も今迄御存じない位の甚い風でございますよ。