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しぶき
ふりがな文庫
“
沫
(
しぶき
)” の例文
すらりと
背後
(
うしろ
)
向かるゝ黒髪のたけ、
帆柱
(
ほばしら
)
より長く
靡
(
なび
)
くと思ふと、袴の
裳
(
もすそ
)
が波を
摺
(
す
)
つて、月の前を、さら/\と、かけ波の
沫
(
しぶき
)
の玉を散らしながら
印度更紗
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
忽ち隻翼は又
聳
(
そばだ
)
ち起り、竹を
割
(
さ
)
く如き聲と共に、一翼はひたと水に着き、一翼は
劇
(
はげ
)
しく水を
鞭
(
う
)
ち
沫
(
しぶき
)
を飛ばすと見る間に、鳥も魚も沈みて痕なくなりぬ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
少女
(
おとめ
)
は見て、その悲哀を
癒
(
いや
)
す水はここにありと、小枝を流れに浸しこなたに向かいて振れば、冷たき
沫
(
しぶき
)
飛び来たりて青年の
頬
(
ほお
)
を打ちたり。春の夢破れぬ。
わかれ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
わずかの小門の
廂
(
ひさし
)
だけに身を寄せたのですから、好いあんばいに風は少し向うへ吹いて行く分のこと、
袴
(
はかま
)
の裾や衣服の
袂
(
たもと
)
には
沫
(
しぶき
)
がしとしととかかります。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ああ大波は
沫
(
しぶき
)
を立てて狂っている。風はひゅうひゅうと叫んでいる。かどでの嵐だ。『八島』と『秋津洲』は、荒馬のように、敵の根拠地めがけて突進する。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
▼ もっと見る
「鰤の三千もはいっている時なら、もうそろそろ大変な
沫
(
しぶき
)
があがるのですが」と親方が説明してくれる。
大謀網
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
その度にばさ/\と、凄じく翼を鳴すのが、落葉の匂だか、瀧の水
沫
(
しぶき
)
とも或は又猿酒の
饐
(
す
)
ゑたいきれだか何やら怪しげなものゝけはひを誘つて、氣味の惡さと云つたらございません。
地獄変
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
強い雨足は岩に当って白い
沫
(
しぶき
)
をあげながら、無数の細い滝となって乱れ落ちて行く。身を寄せる岩陰もない岩壁に、
術
(
すべ
)
もなく小鳥のように立ちすくんだ三人は、ロープを引緊めたまま言葉もない。
一ノ倉沢正面の登攀
(新字新仮名)
/
小川登喜男
(著)
すらりと
背後
(
うしろ
)
向
(
む
)
かるゝ
黒髮
(
くろかみ
)
のたけ、
帆柱
(
ほばしら
)
より
長
(
なが
)
く
靡
(
なび
)
くと
思
(
おも
)
ふと、
袴
(
はかま
)
の
裳
(
もすそ
)
が
波
(
なみ
)
を
摺
(
す
)
つて、
月
(
つき
)
の
前
(
まへ
)
を、さら/\と、かけ
波
(
なみ
)
の
沫
(
しぶき
)
の
玉
(
たま
)
を
散
(
ち
)
らしながら
印度更紗
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二十糎砲は砲口をひらき、
沫
(
しぶき
)
をはらい落すように、ぐっと鎌首をもたげて、金剛石岬をにらんだ。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
言ふこと
莫
(
なか
)
れ、汝が心の
痍
(
きず
)
は尚血を
瀝
(
したゝ
)
らすと。針に
貫
(
つらぬ
)
かれたる蝶の猶その五彩の翼を
揮
(
ふる
)
ふを見ずや。落ちたぎつ瀧の水の
沫
(
しぶき
)
と散りて猶
麗
(
うるは
)
しきを見ずや。これはこれ詩人の使命なり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
その
沫
(
しぶき
)
を浴びた者が、荷物の蔭へ逃げ込むと
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
貴下
(
あなた
)
こそ、
前
(
さき
)
へいらしってお待ち下されば
可
(
よ
)
うござんすのに、
出張
(
でっぱ
)
りにいらしって、
沫
(
しぶき
)
が
冷
(
つめた
)
いではありませんか。」
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
燁代さんは
沫
(
しぶき
)
にぬれた頬をふきもしないで、じいーっと『荒鷲』の姿を見つめるのであった。
昭和遊撃隊
(新字新仮名)
/
平田晋策
(著)
前途
(
ゆくて
)
を
遙
(
はるか
)
に、ちら/\と燃え行く炎が、
煙
(
けぶり
)
ならず白い
沫
(
しぶき
)
を飛ばしたのは、
駕籠屋
(
かごや
)
が
打振
(
うちふ
)
る
昼中
(
ひるなか
)
の
松明
(
たいまつ
)
であつた。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、親仁がもっともらしい
顔色
(
かおつき
)
して、ニヤリともしないで
吐
(
ほざ
)
くと、女どもは
哄
(
どっ
)
と笑って、線香の煙の黒い、吹上げの
沫
(
しぶき
)
の白い、
誰彼
(
たそが
)
れのような中へ、びしょびしょと入って
行
(
ゆ
)
く。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
烏は
鴎
(
かもめ
)
が浮いたよう、
遠近
(
おちこち
)
の森は晴れた島、
目近
(
まぢか
)
き雷神の一本の
大栂
(
おおとが
)
の、旗のごとく、
剣
(
つるぎ
)
のごとく
聳
(
そび
)
えたのは、巨船天を摩す柱に似て、屋根の浪の風なきに、泡の
沫
(
しぶき
)
か、白い小菊が
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
雨は勝手に降って音も
寂寞
(
ひっそり
)
としたその中を、一思いに仁王門も抜けて、
御堂
(
みどう
)
の石畳を右へついて廻廊の欄干を三階のように見ながら、
廂
(
ひさし
)
の
頼母
(
たのも
)
しさを親船の
舳
(
みよし
)
のように仰いで、
沫
(
しぶき
)
を
避
(
よ
)
けつつ
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
次第に雨が
溜
(
たま
)
るのか、水が
殖
(
ふ
)
えたか、投出してる
足許
(
あしもと
)
へ、縮めて見ても
流
(
ながれ
)
が出来て、ちょろちょろと
搦
(
から
)
みつくと、袖が板のように重くなって、塵塚に、ばしゃばしゃと
沫
(
しぶき
)
が
掛
(
かか
)
る、
雫
(
しずく
)
が落ちる。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
沫
漢検準1級
部首:⽔
8画
“沫”を含む語句
飛沫
泡沫
水沫
余沫
潮沫
一沫
水飛沫
白沫
血飛沫
沫雪
青水沫
泡沫夢幻
泥沫
泥飛沫
潮飛沫
浪飛沫
雨飛沫
雨沫
聚沫
鹹沫
...