“しぶき”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
飛沫63.3%
水沫11.0%
6.9%
4.1%
泡沫4.1%
繁吹3.7%
散滴0.9%
潮沫0.9%
頻吹0.9%
吹雨0.5%
雨沫0.5%
余沫0.5%
水吹0.5%
水抹0.5%
水飛沫0.5%
紫福0.5%
雨走0.5%
鹹沫0.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
暴風雨あらし模様の高浪を追越し追越し、白泡を噛み、飛沫しぶきを蹴上げて天馬くうはしるが如く、五島列島の北の端、城ヶ島を目がけて一直線。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
雨は水沫しぶきだけのように、空一面に、こまかく粉のように拡がった。風も、それに準じて、勢いを収めて、見る内に、山の頂きには青空が顔を出した。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
忽ち隻翼は又そばだち起り、竹をく如き聲と共に、一翼はひたと水に着き、一翼ははげしく水をしぶきを飛ばすと見る間に、鳥も魚も沈みて痕なくなりぬ。
この紀事の七尾湾も一手ひとての風にしぶきを飛ばす、霊山の威を思うとともに、いまも吹きしむおもいがして、——大笹のの宿に、ゾッと寒くなりました。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
プーッと吹き出す血の泡沫しぶきが、松明の光でにじのように見えた。と、もうその時には葉之助は、ピタリ中段に付けていた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
開戸から慶造が躍出したのを、拓は縁に出て送ったが、繁吹しぶきを浴びて身を退いて座に戻った、かれは茫然として手をつかぬるのみ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼はうずまく散滴しぶきを顔にうけて、鼻に血の香を吸いながら、次第に増して来る血の潮に足をひたして歌った。
浅瀬に洗う女 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
波濤と潮沫しぶきの中に孤立してゐる岩山や、人影も無い海岸に打ち揚げられた難破船や、雲を透かして、まさに沈まんとしてゐる難破船を照らしてゐる、冷たい、蒼白い月魄つきしろに意味をもたせてゐた。
そのやみに花はちる…… Whiskyウイスキイ頻吹しぶき……桐のむらさき……
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大籠山おおかごやまと後で名をつけた一峰に達した、三等三角測量標が立っている、霧が吹雨しぶきを浴びせかけて、顔向けも出来なかったが、白峰山脈で、初めての三角標に触れたのだから
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
高頭君は息をめられて、ヒョロヒョロとたおれた、避けようとした私はジリッと焦げ臭くひげを焼かれた、まらなくなって天幕の外へ首を出すと、偃松の上は、吹雨しぶきの柱が
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
左枝はいま、雨沫しぶきを浴び、微かに洩れる猟館の燈を目指して歩んでゆく。と、ちょうどその頃、お悦というねえさん株の一人が、早苗と湯気に煙る窓越しの雨を眺めていた。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その若い巡査は、雨沫しぶきを浴びて、黙然と腕組みをしている。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
雪解のしずくは両側に並んだ同じような二階の軒からその下を通行する人の襟頸えりくび余沫しぶきとばしている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あやまって水吹しぶきをかけたようにして毒を含ませてもいい、兎に角、毒を与えたんだ。
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
日の光りの中にぱっと水抹しぶきが立って、その下から
月明 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
風は空からではなく、海から空へ一秒の休みもなく吹き、虚空には幾千万の鞭を揮うような鋭い音が満ちわたって、雨の水飛沫しぶきで三メートル先のものはなにも見えなくなった。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その後気を着けて見ると、自分の生地播磨神崎かんざき郡香呂村などもこれらしい。因幡いなば気高けたか郡福富村の高路、長門阿武あぶ紫福しぶき村の字行露も「コ」の字を澄んでいるが同様であろうか。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
冷い雨走しぶきがさっと顔へかかると、彼は清々しい気持になった。が、犬がまた吠えはじめたので、彼は拳骨で鎧戸をどんどん叩いて
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
岸をむ水は、石に觸れて倒立し、鹹沫しぶきは飛んで二人の面をてり。ポツジヨの興は風浪の高きに從ひて高く、掌をちて哄笑し、海に對して快哉くわいさいを連呼せり。