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死屍
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しし
ふりがな文庫
“
死屍
(
しし
)” の例文
そういう時にいつでも結局いちばん得をするのは、こういう犠牲者の
死屍
(
しし
)
にむちうつパリサイあたりの学者と
僧侶
(
そうりょ
)
たちかもしれない。
自画像
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
山は焼け、
渓水
(
たにみず
)
は
死屍
(
しし
)
で埋もれ、悽愴な
余燼
(
よじん
)
のなかに、関羽、張飛は軍をおさめて、意気揚々、ゆうべの戦果を見まわっていた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで今晩彼女らが、死体公示所へ行って諸君の
死屍
(
しし
)
を見分けんとするのを、初めからさせないようにしてはどうか。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
淋
(
さび
)
しい海岸の一角に、まだ生あたゝかい
死屍
(
しし
)
を、たゞ一人で見守っていることは、無気味な事に違いなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「かような始末ではござる。
死屍
(
しし
)
を
鞭打
(
むちう
)
つようで心苦しいが、申さなければかえって疑惑を増すであろう」
銭形平次捕物控:139 父の遺書
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
附近の草木は
枯死
(
こし
)
し、鳥獣の
死屍
(
しし
)
も
累々
(
るいるい
)
たるのが見えた。
不図
(
ふと
)
、死の谷へ下りようという峠のあたりに人影が見えた。人間らしくはあったが
正
(
まさ
)
しく怪物であった。
科学時潮
(新字新仮名)
/
海野十三
、
佐野昌一
(著)
矢よりもこのほうが確実に漢軍の死傷者を増加させた。
死屍
(
しし
)
と
纍石
(
るいせき
)
とでもはや前進も不可能になった。
李陵
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
それには同じく従軍した知名な画家が
死屍
(
しし
)
のそばに
菖蒲
(
あやめ
)
が紫に咲いているところを描いていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
すると、その戦後の状態がまた大変で、三枚橋の
辺
(
あたり
)
から
黒門
(
くろもん
)
あたりに
死屍
(
しし
)
が累々としている。
幕末維新懐古談:19 上野戦争当時のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
すべての感覚が解放され、物の微細な色、
匂
(
にお
)
い、音、味、意味までが、すっかり確実に知覚された。あたりの空気には、
死屍
(
しし
)
のような臭気が充満して、気圧が刻々に
嵩
(
たか
)
まって行った。
猫町:散文詩風な小説
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
歪んだ鉄格子の空に、きょうも外の空地に積みあげた
死屍
(
しし
)
からの煙があがる。
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
この時ようよう起き上ったのが土方歳三で、彼は悲憤の涙で男泣きの
体
(
てい
)
です。打ち落された刀を拾い取って同志十三人の
死屍
(
しし
)
縦横たる中へ坐り直し、刀を取り直して腹に突き立てようとする。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今年の元旦の『大阪朝日』に
笠原
(
かさはら
)
医学博士が
前野良沢
(
まえのりょうたく
)
とゲエテとの事を書かれた美しい一文を読むと、良沢が明和八年四月四日に
千住
(
せんじゅ
)
の
骨ヶ原
(
こつがはら
)
で
杉田玄白
(
すぎたげんぱく
)
、
中川淳庵
(
なかがわじゅんあん
)
と、婦人の
死屍
(
しし
)
の解剖に立会い
新婦人協会の請願運動
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
そしてその花のかたまりの中にむずと熱した手を突っ込んだ。
死屍
(
しし
)
から来るような冷たさが葉子の手に伝わった。葉子の指先は知らず知らず縮まって
没義道
(
もぎどう
)
にそれを
爪
(
つめ
)
も立たんばかり握りつぶした。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
言わんか、「
死屍
(
しし
)
に鞭打つ。」言わんか、「窮鳥を圧殺す。」
HUMAN LOST
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その
死屍
(
しし
)
は古井戸の中に捨てられたのであった。
怪異黒姫おろし
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
死屍
(
しし
)
水かかずしてよく浮く
渾沌未分
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
見えるかぎりのものは、残雪の泥土と、るいるいたる
死屍
(
しし
)
だった。破れた旗、いたずらに
空
(
むな
)
しき
矢柄
(
やがら
)
、折れた
鎗
(
やり
)
、すべては泊兵の残骸ではないか。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大体彼は建築道楽で、
寛正
(
かんしょう
)
の大飢饉に際し、
死屍
(
しし
)
京の賀茂川を埋むる程なのに、新邸の造営に余念がない。
応仁の乱
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「斯樣な始末では御座る。
死屍
(
しし
)
を
鞭
(
むちう
)
つやうで心苦しいが、申さなければ
却
(
かへ
)
つて疑惑を増すであらう」
銭形平次捕物控:139 父の遺書
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
つまり、共にひどく死に、そして傷ついて、この海底は
死屍
(
しし
)
るいるいとなるであろう。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
少女を
描
(
えが
)
き、空想を生命とした作者が、あるいは
砲煙
(
ほうえん
)
のみなぎる野に、あるいは
死屍
(
しし
)
の横たわれる
塹壕
(
ざんごう
)
に、あるいは機関砲のすさまじく鳴る丘の上に、そのさまざまの感情と情景を
叙
(
じょ
)
した筆は
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
堀秀政がいうと、秀吉は、さもあろうと
頷
(
うなず
)
いた。そしてそれらの
死屍
(
しし
)
のあいだを歩いて、すぐ山を降って行きながら、こう
連歌
(
れんが
)
の上の句を
口誦
(
くちず
)
さんだ。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「
死屍
(
しし
)
を
辱
(
はずか
)
しめず」という
諺
(
ことわざ
)
を忘れたわけではなかったが、非戦闘員である彼等市民の上に加えられた
昨夜来
(
さくやらい
)
の、米国空軍の暴虐振りに対して、どうにも我慢ができなかったのだった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
光安入道は、味方の
死屍
(
しし
)
のあいだを駈けながら、なお、生き残って防いでいる兵や将を見るたびにいった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
橋上すでに渦巻いて、血は
欄
(
おばしま
)
にとび、
濠
(
ほり
)
にながれ、
死屍
(
しし
)
を踏む者、また死屍へ重なり合うとき、明智方は彼方の
濠
(
ほり
)
ばたから、銃をそろえて城兵を
狙撃
(
そげき
)
し出した。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
こういう新兵器は朝廷の禁軍ならでは持っていないもので——実際に見舞われたのも初めてなほどだった。泊軍はただなだれを打ち、はや
累々
(
るいるい
)
の
死屍
(
しし
)
を出して
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
謙信みずから
死屍
(
しし
)
をこの地へ
埋
(
うず
)
めに来たとあれば、信玄もこころよく思い残りなき一戦をして見しょう。——道鬼、その戦いに、
啄木
(
たくぼく
)
の戦法を試みんと思うがどうじゃ
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
硝煙は
蜿蜒
(
えんえん
)
たる
柵
(
さく
)
をつつみ、まるで蚊の落ちるように、その下に甲軍の兵馬は
死屍
(
しし
)
を積みかさねた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
甘寧は、
鐘鼓
(
しょうこ
)
を鳴らして、船歌高く引きあげたが、戦がやんでも、黄濁な大江の水には、破船の旗やら、焼けた
舵
(
かじ
)
やら、無数の
死屍
(
しし
)
などが、洪水のあとのように流れていた。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三番大隊・四番大隊・五番大隊、どこを歩いても
酸鼻
(
さんび
)
を極めていた。意気はなお
旺
(
さかん
)
なものがあったが、一戦ごとに、一日何度となく、
死屍
(
しし
)
負傷者は運ばれてくるし、病人はふえる。
日本名婦伝:谷干城夫人
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
山下の木戸や、せいぜいが仁王堂附近まで進んでは、
死屍
(
しし
)
に死屍を積み、もう黒バミ
初
(
そ
)
めた山紅葉より
可惜
(
あたら
)
に、たくさんな兵を散り急がせては、どっと退却を繰返すにすぎなかった。
私本太平記:04 帝獄帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
草は食えるが、敵の
死屍
(
しし
)
は
糧
(
かて
)
にならない。ここ魏の陣気をはるかにうかがうに、おそらく大敗のこと、洛陽に聞えて、敵は思いきった大軍をもって、ここを
援
(
たす
)
けにくるにちがいない。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
戦
(
いくさ
)
が
熄
(
や
)
んだといっても、まだ素槍や素刀は、この辺を中心に、附近の山野を残党狩りに駈けまわっているし、
死屍
(
しし
)
は、随所に、横たわっていて、
鬼哭啾々
(
きこくしゅうしゅう
)
といってもよい新戦場である。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は、賢いので、こういう噂に対しても、自分から先に口を出して、
死屍
(
しし
)
に
鞭打
(
むちう
)
つようなことばは決して吐かなかったが、近習の同輩が、あれこれと、佐久間父子のうわさをして
嗤
(
わら
)
うと
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蕭々
(
しょうしょう
)
たる戦野の
死屍
(
しし
)
は、いたずらに、
寒鴉
(
かんあ
)
を歓ばすのみであった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「無数の
死屍
(
しし
)
を
弔
(
とむろ
)
うて来たせいか、すこし酒気が欲しい」
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“死屍”の意味
《名詞》
死体。亡骸。
(出典:Wiktionary)
死
常用漢字
小3
部首:⽍
6画
屍
漢検準1級
部首:⼫
9画
“死屍”で始まる語句
死屍累々
死屍室