此君このきみ)” の例文
此君このきみにして此臣このしんあり、十萬石じふまんごく政治せいぢたなそこにぎりて富國強兵ふこくきやうへいもとひらきし、恩田杢おんだもくは、幸豐公ゆきとよぎみ活眼くわつがんにて、擢出ぬきんでられしひとにぞありける。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのゆえ、遊女には上﨟じょうろう風のよそおいをさせて、太夫だゆう様、此君このきみ様などともいい、客よりも上座にすえるのです。それも、一つには、客としての見識だろうと思いますがのう。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
今こそ法體ほつたいなれ、ありし昔の瀧口が此君このきみ御爲おんためならばと誓ひしはあめが下に小松殿たゞ一人。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
此君このきみにあたるひとあるまじとえけるが、ひめとは隨一いつなかよしにて、なにごとにも中姉樣ちうねえさましたれば、もとよりものやさしきたちの、これはまた一段いちだん可愛かあいがりて、ものさびしきあめなど
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おそれながらかんがへまなぶへき事なり然るに舜帝のつゝみ世こぞつて諫鼓かんこのつゝみといふ其後そのごほどなく天下よく此君このきみにしたがひとくになつきければ其皷そのつゞみ自然しぜんとほこりたまりこけしやう諸鳥しよてうも來りて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ねんごろにのたまひつも、目録もくろくへて金子きんす十兩じふりやう其賞そのしやうとしてたまひければ、一度いちどうらめしとも口惜くやしともおもへりしが、いまたゞなみだにくれて、あはれ此君このきみのためならば、こゝにてなむと難有ありがたがる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さとしもとより築山つきやまごしにをがむばかりのねがひならず、あはれ此君このきみ肺腑はいふりて秘密ひみつかぎにしたく、時機をりあれかしとつま待遠まちどほや、一月ひとつきばかりをあだくらしてちかづく便たよりのきこそは道理だうりなれ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)