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このきみ
此君にあたる
人あるまじと
見えけるが、
孃とは
隨一の
中よしにて、
何ごとにも
中姉樣と
慕ひ
寄れば、もとより
物やさしき
質の、これは
又一段に
可愛がりて、
物さびしき
雨の
夜など
恐れながらかんがへ
學ぶへき事なり然るに舜帝のつゝみ世こぞつて
諫鼓のつゝみと
云其後程なく天下よく
此君にしたがひ
徳になつきければ
其皷自然とほこりたまり
苔を
生し
諸鳥も來りて
羽を
懇にのたまひつも、
目録に
添へて
金子十兩、
其賞として
給ひければ、
一度は
怨めしとも
口惜とも
思へりしが、
今は
只涙にくれて、あはれ
此君のためならば、こゝにて
死なむと
難有がる。