棕櫚しゆろ)” の例文
が、あたまへ、棕櫚しゆろをずぼりとかぶる、とふくろふけたやうなかたちつて、のまゝ、べた/\とくさつて、えんした這込はひこんだ。——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのテラスから棕櫚しゆろの並木を越して町はづれの果樹園が見え、更にオアシスの向ふには沙漠がだん/\高まつて四方へ拡がつてゐました。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
樫か胡桃くるみで作つた櫃には、奇妙な棕櫚しゆろの枝と天童の頭の浮彫うきぼりがしてあつて、ヘブライの經典ををさめた木箱のやうな形に見えた。
我は羅馬以北の景を看て、そのおほむね皆陰鬱なるに驚きぬ。大澤たいたくの畔の如くならず、テルラチナなる橄欖の林の棕櫚しゆろを交へたるが如くならず。
そは神の子がわれらの荷をはんと思ひ給ひしとき、棕櫚しゆろを持ちてマリアのもとに下れるものは彼なればなり 一一二—一一四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
近寄つて見ると、綱は麻糸と棕櫚しゆろをなひ交ぜたもので、太さも相當にあり容易なことできれる筈もありません。
木がこんもりとしげり、椰子やし棕櫚しゆろが、からかさのやうに葉をひろげて、いろんな花がさきほこつてゐます。
シロ・クロ物語 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
棕櫚しゆろ繩の太いのを握つてゐるお梅のあぶら肥りの赤い手を見ながら、猪之介はこんなことを言つた。
兵隊の宿 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
山羊は二匹とも棕櫚しゆろの木の下に固まつて、白い背中に日影を浴びてうづくまつてゐる。——と
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
宿り木、かづらなどにてすくなくも一木ひとぎ五色ごしきの花附けぬはなくさふらへば、実れる木も多く、葉の紅葉もみぢはた雁来紅がんらいこうの色したる棕櫚しゆろに似たる木など目もあやに夕闇に浮び申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
棕櫚しゆろの樹が二三木立つて、八角金盤やつでが広い手を伸ばして浄水鉢を抱くやうに取囲んでゐた。この駅の旧本陣らしい家の様子を見せて、欄間には渡辺華山の書などが掛けてあつた。
伊良湖の旅 (新字旧仮名) / 吉江喬松(著)
静かに立ちてあれば、わがそばなる桑の葉、玉蜀黍たうもろこしの葉は、月光げつくわうを浴びて青光あおびかりに光り、棕櫚しゆろはさや/\と月にさゝやく。虫のしげき草を踏めば、月影つきかげ爪先つまさきに散り行く。露のこぼるゝなり。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
其赤い壁にけて、大きな棕櫚しゆろの木を五六本植ゑた所が大いにい。左り手のずつと奥にある工科大学は封建時代の西洋の御城から割り出した様に見えた。真っ四角に出来上つてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
棕櫚しゆろくすの木などのステツキをもつて来たのがのせてありました。
鳩の鳴く時計 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
或る温室では釣鐘草つりがねさうあふひ棕櫚しゆろかぶりを振つてゐるだらう
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
見えがくれ棕櫚しゆろの葉に消ゆるまで
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
明るい空と棕櫚しゆろの木が
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
……なんと、兩足りやうあしから、下腹したばらけて、棕櫚しゆろのみが、うよ/\ぞろ/\……赤蟻あかありれつつくつてる……わたし立窘たちすくみました。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此夜の夢に、我はフルヰアのおうなとフラミニアの君とに逢ひしに、二人皆面に微笑を湛へて、君が福祉の棕櫚しゆろは緑ならんとすと告げたり。
棕櫚しゆろをうるまで、戰場いくさのにはを出づる時まで、我にともなへる徳にむかひ今も我をもやす愛 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
柵の中には棕櫚しゆろの木が五六本植ゑられて、その下に山羊の這入る小さい小屋が出来てゐる。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
棕櫚しゆろの葉のうちそよゆるまで
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
が、ひと途端とたんに、ぱちぱちまめおとがして、ばら/\と飛着とびついた、棕櫚しゆろあかいのは、幾千萬いくせんまんともかずれないのみ集團かたまりであつたのです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
稍〻やゝ高き林木の間に、屋瓦のそうを成せるはアンナア、カプリイの小都會なり。一橋一門ありてこれに通ず。一行は棕櫚しゆろの木立てるパガアニイが酒店の前に歩を留めつ。
棕櫚しゆろの葉のうちそよゆるまで
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)