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持前
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もちまえ
ふりがな文庫
“
持前
(
もちまえ
)” の例文
ディオニシアスは、もとはずっと下級の役に使われていた人ですが、その
持前
(
もちまえ
)
の才能一つで、とうとう議政官の位地まで上ったのでした。
デイモンとピシアス
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
彼は
暫
(
しばら
)
くの間、自分の頭の上に開いている、
洞穴
(
ほらあな
)
の入口とでも云った感じのする、その天井の穴を眺めていましたが、ふと、
持前
(
もちまえ
)
の好奇心から
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「なにこりゃ
私
(
あたし
)
の
持前
(
もちまえ
)
だから仕方がない。昔から
肥
(
ふと
)
った事のない女なんだから。やッぱり
癇
(
かん
)
が強いもんだからね。癇で肥る事が出来ないんだよ」
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
美人を写せば美人を反射し、
阿多福
(
おたふく
)
を写せば阿多福を反射せん。その醜美は鏡によりて生ずるに非ず、実物の
持前
(
もちまえ
)
なり。
学者安心論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
児供
(
こども
)
の時から聴き
馴
(
な
)
れていたのと、最一つは下層階級に味方する
持前
(
もちまえ
)
の平民的傾向から自然にこれらの平民的音曲に対する同感が深かったのであろう。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
▼ もっと見る
わたしはわたしで
持前
(
もちまえ
)
を出して、折助でもなんでも相手に手あたり次第に食っつき散らかして、お前の男を
潰
(
つぶ
)
してやるからいい、このお金だってお前
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
御利益
(
ごりやく
)
疑
(
うたがい
)
なく
仮令
(
たとい
)
少々御本尊様を恨めしき
様
(
よう
)
に思う事ありとも珠運の如くそれを火上の氷となす者には
素
(
もと
)
より
持前
(
もちまえ
)
の
仏性
(
ほとけしょう
)
を
出
(
いだ
)
し玉いて愛護の
御誓願
(
ごせいがん
)
空
(
むな
)
しからず
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
山へ登るのに木につかまり
萱
(
かや
)
をわけ、または
杖
(
つえ
)
とか少しの武器とかをとって、急場の危害をふせぎ得られること、その二は練習と忍耐または
持前
(
もちまえ
)
の力によって
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
主人は
持前
(
もちまえ
)
の苦笑をした。「今一つの肉は好いが、営口に来て酔った晩に話した、あの事件は
凄
(
すご
)
いぜ。」
鼠坂
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
わが
家
(
や
)
の玄関には毎日のやうに
無性髯
(
ぶしょうひげ
)
そらぬ洋服の男来りて
高声
(
こうせい
)
に面会を求めさうさう留守をつかふならばやむをえぬ故法律問題にするなどと
持前
(
もちまえ
)
のおどし文句を
書かでもの記
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
兄がよくその
譬
(
たとえ
)
を人の事に取ってこう申します。それは全く最初の考えようが悪いので海は一年中
平
(
たいら
)
で
穏
(
おだやか
)
なものでない。時あって風も起り波も荒くなるのが海の
持前
(
もちまえ
)
だ。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
森の木を
伐
(
き
)
ったり、
叢
(
くさ
)
を刈ったりしたので、隠れ家を奪われたと見えて、幾匹かの狸が伝法院の院代をしている人の家の縁の下に隠れて、そろそろ
持前
(
もちまえ
)
の
悪戯
(
わるさ
)
を始めました。
寺内の奇人団
(新字新仮名)
/
淡島寒月
(著)
と、ホーテンス記者は、すっかり
憔悴
(
しょうすい
)
した顔に、
持前
(
もちまえ
)
の不敵な微笑を浮べて語り出した。
地球発狂事件
(新字新仮名)
/
海野十三
、
丘丘十郎
(著)
この病気特有の喜怒哀楽の感情が
交錯
(
こうさく
)
して、
持前
(
もちまえ
)
の重吉らしくもない
癇癪
(
かんしゃく
)
に青筋を立て、自分の言葉の通じないことよりも、実枝がそれを聞き分けてくれないことの方に腹を立てて
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
前の方のは
臆病
(
おくびょう
)
で気の毒な性質の人ゆえ、まあまあ
我慢
(
がまん
)
して家でカンシャクを起さしてやるのが愛だが、後のは
持前
(
もちまえ
)
の性質ゆえ
修養
(
しゅうよう
)
とか信仰とかを勧めて、根本的に直すのが愛である。
良人教育十四種
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
優雅、貞淑——そういう社会に育ったには似合わぬ無邪気さ、それは
大家
(
たいけ
)
の箱入り娘と、好人物の父との賜物である。一本気な
持前
(
もちまえ
)
も、江戸生れの下町のお嬢さんの所有でなければならない。
マダム貞奴
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
今日
(
こんにち
)
より改まりまして雑誌が出版になりますので、社中かわる/″\
持前
(
もちまえ
)
のお話をお
聴
(
きゝ
)
に入れますが、
私
(
わたくし
)
だけは相変らず人情の余りお長く続きません、三冊
或
(
あるい
)
は五冊ぐらいでお解りになりまする
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
姉はそういうと
持前
(
もちまえ
)
な上手な口調で、だんだん話しつづけるのです。
不思議な国の話
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
失礼は
持前
(
もちまえ
)
ですからね、とてもお前さんのようにお上品な
面
(
かお
)
をして、人の娘を
誘拐
(
かどわか
)
すようなことはできませんよ。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
今度は
持前
(
もちまえ
)
の好奇心が
勃然
(
ぼつぜん
)
として湧き上り、河野と共に、私達だけの材料によって、犯人の捜索をやって見ようという、大それた願いをすら起すのでした。
湖畔亭事件
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
おのおのその
持前
(
もちまえ
)
の心を自由自在に行われしめ、我が心をもって他人の身体を制せず、おのおのその一身の独立をなさしむるときは、人の天然
持前
(
もちまえ
)
の性は正しきゆえ
中津留別の書
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ツマリ二葉亭の
持前
(
もちまえ
)
の極端な潔癖からしてそれほどでもない
些細
(
ささい
)
な事件に殉じて身を潔くするためらしかった。二葉亭自身もこの事については余り多く語らなかった。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
何となく機嫌のよくなった逸作が、
持前
(
もちまえ
)
の癖を出して若者を
揶揄
(
からか
)
いかけた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
つまりお嬢さんは私だけに
解
(
わか
)
るように、
持前
(
もちまえ
)
の親切を余分に私の方へ割り
宛
(
あ
)
ててくれたのです。だからKは別に
厭
(
いや
)
な顔もせずに平気でいました。私は心の
中
(
うち
)
でひそかに彼に対する
愷歌
(
がいか
)
を奏しました。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼女は全く死に切ってはいなかったのでしょう。不具者は一時は驚きましたけれど、次の瞬間には彼の
持前
(
もちまえ
)
の残虐性が頭をもたげました。彼は凡ての満足な人間を呪っていたのです。
一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
知らない顔の他人の中へ突き出されて、
持前
(
もちまえ
)
の
羞恥
(
はにか
)
み屋から小さくなったのでもあろうが、一つは今なら中学程度に当る東京の私塾の書生となったので、俄に豪くなって
大人
(
おとな
)
びたのでもあろう。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そして、
持前
(
もちまえ
)
の好奇心が、彼女をして、ぐんぐん、先を読ませて行くのであった。
人間椅子
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
持
常用漢字
小3
部首:⼿
9画
前
常用漢字
小2
部首:⼑
9画
“持”で始まる語句
持
持出
持余
持主
持上
持合
持来
持病
持囃
持參