くじ)” の例文
歯をくじきぬ。されども苦痛を感ずるていなく、玉のかいな投出なげいだして、くういだきて胸にめ附け、ニタリと笑いて、「時さん、おお、可愛いねえ。」
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼は実にその身の如何に落着するかを知らず、ただその友人に向って、「天下の事追々おいおい面白く成るなり。くじけるなかれ、くじける勿れ、神州は必ず滅びざるなり」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
〔譯〕智仁勇は、人皆大徳たいとくくはだて難しと謂ふ。然れども凡そ邑宰いふさいたる者は、固と親民しんみんしよくたり。其の奸慝かんとくを察し、孤寡こくわあはれみ、強梗きやうかうくじくは、即ち是れ三徳の實事なり。
ビスマークよりはレセップに指を屈します。ビスマークは仏蘭西ふらんすの鼻をくじいて。わが国の索漏生ふろいせん王をして日耳曼ぜるまん一統の帝とし。今では欧州で牛耳を執るというまでにて。
藪の鶯 (新字新仮名) / 三宅花圃(著)
この物言はざる口は、曾て我に未來の運命を語りしことあり。汝は我福祉を預言したり。汝の猛き鷲は日邊に到らずして其翼をくじけり、世のまがつみと戰ひてネミの湖に沈みたり。
俺は彼奴を心の底からおどして見ようと思っている。彼奴を勝手に逃げさせるのだ。そうして四擒四縦の手で彼奴の荒胆あらぎもくじいてやるのだ。そうしたらいかに強情でも俺に従うに相違ない。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とき恥辱はぢ恐怖おそれとによわきもののこゑをも得立えたてず、いたみ、かなしみ、けるかたちよそほはざるに愁眉しうび泣粧きふしやう柳腰りうえうむちくじけては折要歩せつえうほくるしみ、金釵きんさいしては墮馬髻だばきつ顯實けんじつす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今の計を為さんには、和親して以て二虜を制し、間に乗じて国を富まし兵を強くし、蝦夷えぞひらき満洲を奪い、朝鮮を来たし南地をあわせ、然るのち米をひしぎ欧をくじかば、則ち事たざるは無し。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
のち煬帝やうだい遼東れうとうむるとき梯子はしごつくりててき城中じやうちう瞰下みおろす。たかまさ十五丈じふごぢやう沈光ちんくわう尖端とつさきぢてぞくたゝかうて十數人じふすうにんる。城兵じやうへい這奴しやつにくきものの振舞ふるまひかなとて、競懸きそひかゝりてなかばより、梯子はしごくじく。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)