後前あとさき)” の例文
「敵討騒ぎの後前あとさきから、山を降りた虚無僧は一人もありません。山番や見廻りの者が言うことですから、これは間違いのない積りで——」
今の毛と重ね、爾々そう/\其通り後前あとさき互違たがいちがいに二本の毛を重ね一緒に二本の指でつまんで、イヤ違ます人差指を下にして其親指を上にして爾う摘むのです
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
そこでだ、若し後藤肇の行動が、後前あとさき見ずの乱暴で、其乱暴が生得うまれつきで、そして、果して真に困ツちまふものならばだね、忠志君の鼠賊根性はどうだ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
変ったことに見られたのは、三、四名の具足をつけた武者が、眼を光らせて、物々しそうに、その宗易の後前あとさきについて、警固して来たことだった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臆面おくめんもなく言うて退けつ。かれは少年の血気にまかせて、後前あとさき見ずにいいたるが、さすがにその妻の前なるに心着きけむ、お貞の色をうかがいたり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私が詳しく事情を話せば、車掌は列車の後前あとさきへ濃霧信号を出してくれる。それでわれわれは救われるわけです。
……言うまでもなく、あの事件の後前あとさきにはすりかえができるような、そういう隙は一度もなかったから。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
靴を後前あとさきを逆にしてはこうかとも思ったが、しかし同一方向に三つの足跡があると云うことになると、それはもう一目瞭然に、瞞著まんちゃくであると云うことが看破されてしもう。
後前あとさきの見境もなく、一緒になってしまって、後で、後悔をする、もっとよい女が嫁に貰えたの、もっと、よい聟が——と。しかし、二人は、よう揃うておる。申分は無い。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
角笛を胸に吊した紅矢を後前あとさきに従えた藍丸王は白い馬に乗って、華やかな鎧を着た番兵の敬礼を受けながら、悠々とお城の門を出かけたが、流石さすが藍丸国第一の都だけあって
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「余り蒲田が手酷てひどい事を為るから、僕も、さあ、それを案じて、惴々はらはらしてゐたぢやないか。嘉納流も可いけれど、後前あとさきを考へて遣つてくれなくては他迷惑はためいわくだらうぢやないか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今日は特別に早引けで五時限りにしてるから、其跡で持場や、部屋の居廻りヨ念入りに片付けて掃除をしろ、夫からモ一つ言って置くがナ、手前達、物を言うにゃア、ようく後前あとさきヨ考えてぬかせ
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
「恐れ入ります。紛失の品と、それを狙ふ者のお心當り、無くなつた後前あとさきの事など、殿樣から直々に承はりたく存じまして——」
そこでだ、若し後藤肇の行動が、後前あとさき見ずの亂暴で、其亂暴が生來うまれつきで、そして、果して眞に困つちまふものならばだね、忠志君の鼠賊根性はどうだ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
今一にん唐縮緬とうちりめんの帯をお太鼓に結んで、人柄な高島田、風呂敷包を小脇に抱えて、後前あとさきに寮の方から路地口へ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
爺やの影は、老人とも思われないほど、精悍せいかんでまた迅かった。壮年の頃から長年、馬の後前あとさきについて駈けたすねの面影がある。しかし、その敏捷さは、岡本軍曹の疑いによけい自信を抱かせた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正直者はそれが本當さ、——ところで、どんな野郎が拔いたんだ。三百八十兩が懷中から消えた後前あとさきのことを、少しくはしく聞かして貰はうか」
先方むかうから來た外套の頭巾の目深い男を遣過すと、不圖後前あとさきを見𢌞して、ツイと許り其旅館の隣家の軒下に進んだ。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
自分との事のために、離座敷はなれざしきか、座敷牢ざしきろうへでも、送られてくように思われた、後前あとさき引挟ひっぱさんだ三人のおとこの首の、兇悪なのが、たしかにその意味を語っていたわ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後前あとさきの考えもなく年景について参りました。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正直者はそれが本当さ、——ところで、どんな野郎が抜いたんだ。三百八十両が懐中から消えた後前あとさきのことを、少し詳しく聞かして貰おうか」
先方むかうから来た外套の頭巾目深の男を遣過やりすごすと、不図後前あとさきを見廻して、ツイと許り其旅館の隣家となりの軒下に進んだ。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
死なば後前あとさき冥土めいどの路の松並木では、遠い処に、影も、顔も見合おうず、と振向いて見まするとの……
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
間もなく田代屋を抜け出した一人の女——小風呂敷を胸に抱いて後前あとさきを見廻しながら水道端の宵闇よいやみ関口せきぐちの方へ急ぎます。
手の空いたるが後前あとさきに、「て」「り」「は」の提灯ふりかざし、仮花道より練出ねりいだして
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
無頓着といへば可のか、向不見むかうみずといへばいゝのか、正々堂々とか赤裸々とか君は云ふけれど露骨に云へや後前あとさき見ずの亂暴だあね。それで通せる世の中なら、何處までも我儘通して行くも可さ。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「まア、そんな事はどうでもいい、——坊っちゃんの見えなくなった、後前あとさきの事を詳しく聴こうじゃありませんか」
無頓着といへばいいのか、向不見むかうみずといへば可のか、正々堂々とか赤裸々とか君は云ふけれど、露骨に云へや後前あとさき見ずの乱暴だあね。それで通せる世の中なら、何処までも我儘通してゆくも可さ。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
今昇った坂一畝ひとうねさがた処、後前あとさき草がくれのこみちの上に、波に乗ったような趣して、二人並んだ姿が見える——ひとしく雲のたたずまいか、あらず、その雲には、淡いがいろどりがあって、髪が黒く、おもかげが白い。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近江屋の主人治兵衛、ちょうど折よく訪ねて行った、銭形の平次を奥へ招じ入れて、娘の行方不明になった後前あとさきから、からの葬式を出した経緯いきさつまで詳しく話しました。
浮出うきだしたように真中へあらわれて、後前あとさきに、これも肩から上ばかり、爾時そのときは男が三人、ひとならびに松の葉とすれすれに、しばらく桔梗ききょう刈萱かるかやなびくように見えて、段々だんだん低くなって隠れたのを、何か
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後前あとさきの様子を見ると、流しや出来心で入った泥棒ではあるまい、判ったか、八」
襖がくれの半身で、廊下の後前あとさきじって、人の影もなかった途端に、振返ると、引寄せた。お珊のかいなうなじにかかると、倒れるように、ハタと膝をいた、多一の唇に、俯向うつむきざまに、と。——
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
後前あとさきの樣子を見ると、流しや出來心で入つた泥棒ではあるまい。判つたか、八」
後前あとさきを見廻して
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それが大それた謀反の仕度したくとは、どうして気が付きましょう。先頃から出入の人達、——私が井上様から秘巻を奪った後前あとさきの手伝い、——腑に落ちないことばかりと思って居りました」
江戸の火術 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「子供さん達が見えなくなつた後前あとさきのことを、くはしく聽き度いが——」
昨夜ゆうべどこかへ出たのでしょうか、後前あとさきの事を詳しく聴かして下さい」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「昨夜何處かへ出たのでせうか、後前あとさきの事を詳しく聽かして下さい」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「それじゃ後前あとさきのことを、いろいろ聞かして貰いましょうか」
「どうしたことだ、後前あとさきのことを聽かしてくれ」
後前あとさきのことをくはしく話してくれ」
後前あとさきの樣子だけでも話してくれ」