ぴき)” の例文
「フーム、面白いな。番頭の言い草は『娘を口説くどけ』と言わぬばかりだ。おかぴきなんてものは、あまり人様に好かれる稼業かぎょうじゃないが」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
この退ぴきならないものへ落付きどころを置き、その上での生きてるうちが花という気持で、せいぜい好きなことに殉じて行ったなら
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
場処がらで気らくに暮していたと見え、近所のおかぴきの細君と仲をよくしていたという。自然そんなことから鼠小僧の引廻しも見たのであろう。
旧聞日本橋:08 木魚の顔 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
何しろおあさを殺したことを届けようと云うので届出ますと、岡ッぴき御用聞などが段々探索になりましたなれども、の女は元より母親に食物を与えず
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いやしくも未来みらい有無うむ賭博かけものにするのである。相撲取草すまうとりぐさくびぴきなぞでは神聖しんせいそこなふことおびたゞしい。けば山奥やまおく天然てんねん双六盤すごろくばんがある。仙境せんきやうきよくかこまう。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したがってポンぴき風采ふうさいくの次第。ハハハハハその秘密な家はただ場所を提供して謝礼を頂くに過ぎませんが、絶対安全を保証する代りには、謝礼金もお安くありません。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
月番つきばん南町奉行所みなみまちぶぎょうしょでも躍気となって、隠密廻おんみつまわり常廻じょうまわりはもとよりのこと、目明めあかし、したぴきを駆りもよおし、髪結床かみゆいどこ、風呂屋、芝居小屋、人集ひとより場、盛り場に抜目なく入り込ませ
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
これは退ぴきさせぬ釘鎹くぎかすがいである。お師匠さんを志願する丈けに牧野さんも筋で釣ることを心得ている。二人のお弟子さんは爾来二年間四君子をやっているが、一向上達しない。
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
もって犯人をとらえようという「証拠手段」をとるのが好きで、若いかいなでの与力や同心経験一点張りのおかぴきなど、実にこの点に至っては、その足もとへも寄りつけなかった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ながらくおかぴきその他の御用の者をむこうにまわして昼夜逃げ隠れているうちに、対抗の必要上、いつのまにか駈け出しのおかぴきなんか足もとへも寄れないほどに眼がきき出して
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小僧こぞうさんたちもののほころびでもれたならわたしうちつておいで、おうち御多人數ごたにんず内儀かみさんのはりつていらつしやるひまはあるまじ、わたし常住じやうじゆう仕事しごと疊紙たゝうくびぴきなればほんの一針ひとはり造作ざうさ
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「や、このおかぴきめ、どうしてあんな所へ出てきやがったんだ!」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれはしたぴきの源次という桶職であった。
半七捕物帳:05 お化け師匠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平次はその間に、多勢のしたぴきと八五郎を動員して、妾のお若の身許と、その兄と言つてる林次の素姓を念入りに洗ひました。
由「そこへ私が後押あとおしで、旦那の下帯で綱ッぴきと来たら水沢山もかるく引上げました」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
愛之助不思議なポンぴき紳士にめぐり合うこと
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大きな両替屋の暖簾のれんを分けて、ヌッと街へ出た、十三丁目の重三の顔が、退ぴきならず、アタフタと駆け付けた、銭形平次のそれとピタリと会ったのです。
響板が鳴ると、小半次は客を取次ぐことにして座を外し、撞木に引つかけた糸を解いて歸つて來て、主人の耳に退ぴきならぬ大事な人の名前を囁いたのだらう
廊下を近づく足音——母親か看護婦かはわかりませんが、誰やらがこの退ぴきならぬ場面へ来た様子です。
八丁堀はっちょうぼりの旦那方をはじめ、江戸のおかぴきの大部分が、付け届けと役得で、要領よく贅沢ぜいたくに暮している中に、平次と八五郎は江戸中の悪者をふるえ上がらせながらも、相変らず潔癖で呑気のんき
土地のしたぴきで、八五郎と馬の合いそうな、忠実な男です。
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
妙に退ぴきさせぬ嚴しい調子です。
妙に退ぴきさせぬ厳しい調子です。