幼兒をさなご)” の例文
新字:幼児
ボリ/\みつゝ、手酌てじやくで、臺附だいつき硝子杯コツプかたむけたが、何故なぜか、とこなか夜具やぐかぶつて、鹽煎餅しほせんべいをおたのにした幼兒をさなごとき思出おもひだす。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
われらを愛する者、人誰か愛せざらむ、わが心、救世主すくひぬしを見て、躍り喜ぶ。もろ/\の信者たちきたれ、われらが爲に生れ出で給ふこの幼兒をさなごたつとうやまはむ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
無心の幼兒をさなごがお文の名を呼びつゞけるのを利用して、かれは俄に怪談の作者となつた。その僞りの怪談を口實にして、夫の家を去らうとしたのであつた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「ぼんち、ちやツちやと、着物べゝ着更きかへや。」と、いやに自分を幼兒をさなご扱かひにした、平七の家内の聲が聞えたので、自分は皆んなの集まつてゐる納戸へ入つて行つた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
夜が來て酒倉の暗い中からもとすり歌のかいの音がしんみりと調子てうしをそろへて靜かな空の闇に消えてゆく時分じぶんになれば赤い三日月の差し入る幼兒をさなごの寢部屋の窓に青い眼をした生膽取いきぎもとりの「時」がくる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
めでいつくしむ幼兒をさなごは美麗の星にさも似たり。
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
明け放ちたる窓のそばに幼兒をさなごいだき行きて
いたいけなる幼兒をさなごに、やさしきあねひけるは、せんおくふかく、雪洞ぼんぼりかげかすかなれば、ひなまたゝたまふとよ。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わが心の雄誥をたけびむかひて、この幼兒をさなごのさし伸べたる手にむかひて、全く無力なればなり。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
はづかしき幼兒をさなご
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
うらわかはゝともなはれし幼兒をさなごの、ひとるに、われもとてかざりしに、わらはよわくて、ばかりのふねにも眩暈めまひするに、荒波あらなみうみとしならばとにかくも、いけみづさんこと
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もろ/\の信者たち、きたれ、この今生れたる幼兒をさなごたつとうやまはむ
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
衣紋えもんほそく、圓髷まげを、おくれのまゝ、ブリキのくわんまくらして、緊乎しつかと、白井しらゐさんのわかかあさんがむねいた幼兒をさなごが、おびえたやうに、海軍服かいぐんふくでひよつくりときると、ものをじつて、みつめて
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うつくしくきよらかなはゝふところにある幼兒をさなごにあこがれた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)