どし)” の例文
「いけねえ、おなどしだ。じや、お前、おれで、これから話そう。岡本さんなんて呼ぶなよ。岡本でいゝ。こつちも、なんだつけ?」
この握りめし (新字新仮名) / 岸田国士(著)
何をもないもんだよ。分別盛りの好い年をして、という顔色の尋常ただならぬに得右衛門は打笑い、「其方そなたもいけどしつかまつってやくな。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
近所きんじよ子供こどもなかで、あそんでけないのは、問屋とんやの三らうさんに、おとなりのおゆうさんでした。この人達ひとたちとうさんとおなどしでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
僕は彼が傍若無人ぼうじゃくぶじんにこう言ったことを覚えている、それは二人ふたりともかぞどしにすれば、二十五になった冬のことだった。……
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「去年失った、わしの息子も、今生きておれば、そなたと同いどし、とてもわしには、そなたを殺す事はできぬ、助けよう」
竹ちやん、お前も十二やよつてな、櫻井の驛子別れの時の正行まさつらおなどしや。阿母おかあさんのいふことを、よう覺えときや。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おなどしの私の児供は魔子を不便がったと見えて、大切だいじにしていた姉様あねさまや千代紙を残らず魔子にってしまった。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
ところが、おまえがかぞえどしで三つのときに、おとうさまはなくなられました。それで、かあさんは、おまえたちをつれて、中津なかつへかえってきたわけだけどね。
上司小劍は、明治七年十二月十五日に生まれ、昭和二十二年九月二日に死んだ、かぞへどし七十四歳であつた。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
で、彼は、神妙しんみょうに遊ぶ稽古けいこをする。そこへちょうど、友だちのレミイが現われた。おなどしの男の子で、跛足びっこをひき、しかも、しょっちゅう走ろうとばかりする。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「いえ、なに——たしか甲野君と御同おなどしでした」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いけどしぢゞいが、女色いろまよふとおもはつしやるな。たぬまご可愛かあいさも、極楽ごくらくこひしいも、これ、おなことかんがえたゞね。……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
葉絵子 そのお友達といふのは、あたくしとおなどしですけれど、若し結婚するとしたら、その結婚の相手は、自分で選ぶつもりでゐたんです。
あの星はいつ現はれるか (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
となりのてつさんは、とうさんのおうち友伯父ともをぢさんとおなどしぐらゐで、一緒いつしよあそぶにもとうさんのはうがいくらかおとうとのやうにおもはれるところがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
諭吉ゆきちは、かぞえどしで三つのときに、中津なかつへかえり、こんど十八、九ねんぶりで、大阪おおさかへきたのですが、くらやしきのまわりには、まだ諭吉ゆきちのことをおぼえているものがたくさんありました。
饑饉どしの記念だから、行列が通るのに、四角な行燈あんどんも肩を円くして、地蔵前を半輪はんわによけつつ通った。
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
問屋とんやの三らうさんは近所きんじよ子供こどもなかでもとうさんとおなどしでして、あそ友達ともだちでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「どうのこうのって、真面目なんだ。いけどしつかまつって何も万八をめるにゃ当りません。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いけどしつかまつった、学芸記者がれない軽口のにげ口上で、帽子を引浚ひっさらうと、すっとは出られぬ、ぎっしり詰合って飲んでいる、めいめいが席を開き、座を立って退口のきぐちを譲って通した。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)