守刀まもりがたな)” の例文
わたくし自身じしん持参じさんしたのはただはは形見かたみ守刀まもりがたなだけで、いざ出発しゅっぱつきまった瞬間しゅんかんに、いままでんで小屋こやも、器具類きぐるいもすうっと
うつくしき人はなかばのりいでたまいて、とある蒔絵まきえものの手箱のなかより、一口ひとふり守刀まもりがたなを取出しつつさやながらひきそばめ、雄々おおしき声にて
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どうかお慈悲を持ちまして如何なる者にでもお預け下され、成人いたしましたらば跡を弔わせて下さりませと、正宗の守刀まもりがたなに黄金三百両を添えて出した。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
瞳を凝らしてなおも窺えば、枕に近い小机にしきみが立ち、香を焚き、傍には守刀まもりがたなさえ置いてあり、すこし離れて、これは真新しい早桶、紙で作った六道銭形どうせんがたまで揃っている工合い。
粟田口國綱あわだぐちくにつなと云う名剣が此の金森家にございます。これはその北條時政ほうじょうときまさ守刀まもりがたな鬼丸おにまると申します名刀がございました、これと同作でございまする。かの國綱の刀の紛失ふんじつから末が敵討かたきうちになりまする。
守刀まもりがたなを早速に取って袋のままに丁と打った。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
しもあの懐剣かいけんが、わたくしはかおさめてあるものなら、どうぞこちらに取寄とりよせていただきたい。生前せいぜん同様どうようあれを守刀まもりがたないたうございます……。
うつくしき人はなかばのりいでたまひて、とある蒔絵まきえものの手箱のなかより、一口ひとふり守刀まもりがたな取出とりだしつつさやながらひきそばめ、雄々おおしき声にて
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さてお約束やくそく懺悔ざんげでございますが、わたくしにとりて、なによりにしみているのをひとつおはないたしましょう。それはわたくし守刀まもりがたな物語ものがたりでございます。
亀姫、振袖、裲襠うちがけ、文金の高髷たかまげ、扇子を手にす。また女童、うしろに守刀まもりがたなを捧ぐ。あとおさえに舌長姥、古びて黄ばめる練衣ねりぎぬせたるあかはかまにて従いきたる。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
コハこのきみもみまかりしよとおもふいまはしさに、はや取除とりのけなむと、胸なるその守刀まもりがたなに手をかけて、つと引く、せつぱゆるみて、青き光まなこたるほどこそあれ
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
姫は、赤地錦の帯脇に、おなじ袋の緒をしめて、守刀まもりがたなと見参らせたは、あらず、一管の玉の笛を、すっとぬいて、丹花の唇、斜めに氷柱つららを含んで、涼しく、気高く、歌口を——
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いと白くたをやかなる五指ごしをひらきて黄金おうごん目貫めぬきキラキラとうつくしきさやぬりの輝きたる小さき守刀まもりがたなをしかと持つともなくのあたりに落してゑたる、鼻たかき顔のあをむきたる
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
葛籠つづらに秘め置く、守刀まもりがたなをキラリと引抜くまで、ふすまの蔭から見定めて
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この方から逆寄さかよせして、別宅のその産屋うぶやへ、守刀まもりがたな真先まっさきに露払いで乗込めさ、と古袴ふるばかま股立ももだちを取って、突立上つッたちあがりますのにいきおいづいて、お産婦をしとねのまま、四隅と両方、六人の手でそっいて、釣台へ。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)