好事かうず)” の例文
依て此石を庚申塚に祭り上に泥土どろぬりて光をかくす、今なほこけむしてあり。好事かうずの人この石をへども村人そんじんたゝりあらん㕝をおそれてゆるさずとぞ。
本編雪のほかの事をのせたるは雪譜せつふの名をむなしうするにたれども、しばらくしるして好事かうず話柄わへいす。増修そうしうせつまたしかり。
へうになひて、赤壁せきへきし、松島に吟ずるは、畢竟ひつきやうするにいまだ美人を得ざるものか、あるひは恋に失望したるもののばんむを得ずしてなす、負惜まけをしみ好事かうずに過ぎず。
醜婦を呵す (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
坊つちやんの蚊帳の中にバツタを運んだ腕白共も少くともこの後に聳ゆる城山の欝葱を日夕につせき、仰いだ事を今でも想像し得るを幸としてやゝ好事かうずの心を慰めた。
坊つちやん「遺蹟めぐり」 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
されど謝肉祭の間に思慮せんといふも、固より世にたぐひなき好事かうずにやあらん。忽ち肩尖かたさきと靴の上とに鈴つけたる戲奴おどけやつこ(アレツキノ)の群ありて、我一人を中に取卷きて跳ね𢌞りたり。
廷珸は大喜びで、天下一品、価値万金なんどと大法螺を吹立て、かねて好事かうずで鳴つてゐる徐六岳じよりくがくといふ大紳に売付けにかゝつた。徐六岳を最初から延珸は好い鳥だと狙つて居たのであらう。
骨董 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
宗助そうすけはじめて、この坂井さかゐ餘裕よゆうあるひと共通きようつう好事かうず道樂だうらくにしてゐるのだとこゝろいた。さうして此間このあひだはらつた抱一はういつ屏風びやうぶも、最初さいしよからひとせたら、かつたらうにと、はらなかかんがへた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
依て此石を庚申塚に祭り上に泥土どろぬりて光をかくす、今なほこけむしてあり。好事かうずの人この石をへども村人そんじんたゝりあらん㕝をおそれてゆるさずとぞ。
いま憂慮きづかひなし。大塚おほつかより氷川ひかはりる、たら/\ざかは、あたか芳野世經氏宅よしのせいけいしたくもんについてまがる、むかし辻斬つじぎりありたり。こゝに幽靈坂いうれいざか猫又坂ねこまたざか、くらがりざかなどふあり、好事かうずたづぬべし。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
熔巖は同じむきに流れ行くものなれば、好事かうずのものは歩み近づきて迫り視ることを得べし。杖のさき又は貨幣などを揷込さしこみて、熔巖の凝りて着きたるを拔き出し、こを看たる記念にとて持ち行くものあり。
本編雪のほかの事をのせたるは雪譜せつふの名をむなしうするにたれども、しばらくしるして好事かうず話柄わへいす。増修そうしうせつまたしかり。
ゆゑに吾が不学ふがくをもわすれて越雪ゑつせつ奇状きぢやう奇蹟きせきを記して後来こうらいしめし、且越地ゑつちかゝりし事はしばらのせ好事かうず話柄わへいとす。
蓉岳ようがくも書画をよくし文事ぶんじもありて好事かうずものなればこれをきゝてひざをすゝめ、菓子は吾が家産かさんなり、ねりやうかんを近来のものといふ由来ゆらいしめし玉へといふ。
蓉岳ようがくも書画をよくし文事ぶんじもありて好事かうずものなればこれをきゝてひざをすゝめ、菓子は吾が家産かさんなり、ねりやうかんを近来のものといふ由来ゆらいしめし玉へといふ。