天草あまくさ)” の例文
また天草あまくさにては、河童の災いを除く法として、十五社に祈願を掛ければよいと信じておる。この十五社は天草の各村に祭ってある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
山田右衛門作やまだゑもさく天草あまくさの海べに聖母受胎じゆたい油画あぶらゑを作つた。するとその聖母「まりや」は夢の階段を踏みながら、彼の枕もとへくだつて来た。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
九州の島々、壱岐いき対馬つしま天草あまくさなどではケギという。ケギのケは不断着のフダンも同じで、晴着のハレに対する古い言葉である。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「さあ、焼場で一番ちかいところ云うたら——天草あまくさだすな。ここから西南に当ってまっしゃろな、道のりは小一里ありますな」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
第一期天草あまくさの前後のことは知らず、中頃、司馬江漢あたりの筆に脱化された洋画の趣味も捨て難いものだと思いました。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大阪おおさか城の残党や、天草あまくさのキリシタン宗徒で、いのちのつづくかぎり、逃げまわっている者もずいぶんあることだろう
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
其他天草あまくさ、島原等の九州の諸港でも、紀州沿岸の江浦でも、近く房州、伊豆等に於ても、天候や地勢や生業等の諸條件を稍等しくして居るものの間には
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
それをどうして知ったものか九州天草あまくさや南海の国々から天帝を信じる尼様達が忍び忍びにおいでなされ
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
剣山の間者牢かんじゃろうの由来——天草あまくさ当時のいきさつ、また義伝公毒害のことから徳川家へ根強い怨恨をふくんでいる訳——。それらの話をきくにつけて、弦之丞は心のうち
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ。ある長老です。八年ぶりで天草あまくさから脱走して来られたんです。それは立派な人ですよ。」
「実直なる五十年配の教養ある紳士を求む。高潔なる人格を要す。高給比類なし。天草あまくさ商事」
現代忍術伝 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
それで大阪まで行くには如何どうしても船賃が足らぬと云う見込みこみだから、そこで一寸ちょいと船宿の名をきいおいて、れから鉄屋に別れて、諫早いさはやから丸木船まるきぶねと云う船が天草あまくさの海を渡る。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
其処そこで幕府は基督キリスト教撲滅を断行せんとし、ここに天草あまくさの一揆となり、抑圧に対する信仰の争いを生じ、ついに基督キリスト教禁令ということになって、全然外国との交通を断絶するようになった。
島原一揆いっきのとき賊将天草あまくさ四郎時貞ときさだを討ち取って大功を立てた忠利の身の上を気づかい、三月二十日には松平伊豆守まつだいらいずのかみ阿部豊後守あべぶんごのかみ阿部対馬守あべつしまのかみの連名の沙汰書さたしょを作らせ、針医以策いさくというものを
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
八つの時、私の幼い人生にも、暴風が吹きつけてきたのだ。若松で、呉服物の糶売せりうりをして、かなりの財産をつくっていた父は、長崎の沖の天草あまくさから逃げて来た浜と云う芸者を家に入れていた。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
天草あまくさの生れで、弥坂勇造という男であると、丸山はこれを高谷君に紹介した。勇造は丸山のボーイ代りに働いているらしく、かいがいしく立廻って、チョコレートやビスケットなどを運んで来た。
麻畑の一夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
めぐりつつそはをし来れば島山しまやま天草あまくさうみひらけたり見ゆ
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
天草あまくさ農人のうにん
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
天草あまくさはらの城の内曲輪うちくるわ。立ち昇る火焔。飛びちがふ矢玉。伏しかさなつた男女の死骸しがい。その中に手を負つた一人の老人。
商賈聖母 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『書紀』ができてからすでに千三百年以上になるが、今もってこの語の範囲が判然と分らない。前年肥後の天草あまくさ下島の大江村において古い村絵図を見たことがある。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「今より百二十余年前、蜂須賀三代の国主は義伝公ぎでんこう、当時南には天草あまくさらんが起っておりました」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
西陣の織物を一手にさばいた本家福屋の番頭から仕上げた善兵衛が、暖簾のれんを分けて貰うと、公儀に讒訴ざんそして、天草あまくさ旗指物はたさしものを引受けたとか、身分不相応の奢侈僭上しゃしせんじょうふけったとか
同様の話が行われていたということ、イソホはそれらを上手に集め成したのだろう——日本でも、文禄時代に肥前の天草あまくさで翻訳される以前、いずれの国人にも最も耳あたりのよいこの物語が
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
天草あまくさあたりから外国へ出稼ぎする女たちよりも更に醜い。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高々たかだかと山のうへより目守まもるとき天草あまくさなだ雲とぢにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
「ふふん天草あまくさとかみ合わせるんだね」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
天草あまくさ島では旧暦六月三十日の夏越なごしの行事に泳ぐ風習があるが、村によってはこの花と「かたばみ」の葉とを合せて石の上でき、その液を以て爪を染めてから海にはいり
西陣にしぢんの織物を一手にさばいた本家福屋の番頭から仕上げた善兵衞が、暖簾のれんを分けて貰ふと、公儀に讒訴ざんそをして、天草あまくさの旗指物を引受けたとか、身分不相應の奢侈しやし僭上せんじやうふけつたとか
例外として、「奉教人ほうけうにんの死」と「きりしとほろ上人しやうにん伝」とがその中に這入はいる。両方とも、文禄ぶんろく慶長けいちやうの頃、天草あまくさ長崎ながさきで出た日本耶蘇やそ会出版の諸書の文体にならつて創作したものである。
風変りな作品に就いて (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
元和げんな以前、海をこえて、日本へ宣教に来られた、スペインの女修士おんないるまん、ご承知でもございましょう。五十五聖徒の殉教者のひとり、老女ルシヤ様のつれていた娘が、後に、天草あまくさはらしろへ入りました。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
両肥りょうひ及び平戸ひらど天草あまくさの諸島を遍歴して、古文書の蒐集に従事した結果、偶然手に入れた文禄ぶんろく年間の MSS. 中から、ついに「さまよえる猶太人」に関する伝説を発見する事が出来た。
さまよえる猶太人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
天草あまくさ上島の同名の村は「教良木」と書き、その他にも「京良木」と書く部落の名が、東の方にも幾つかあり、別にまた甲州富士川沿いの古駅の名に、教良石というのがあることを思い合せて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天草あまくさで習ったオランダ風のかざりを応用して、精巧な鈴を作ることを工夫し、芳村道斎どうさいと名乗って江戸中の好事家こうずかの人気を集めましたが、名人業であまりお宝にはならず、年中貧乏を看板に、女房一人
後の天草あまくさ支会の報告書を綜合するもすべて一致すればなり。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
晴と褻との対立は、衣服においては殊に顕著であったように考えられている。晴衣はれぎという語は標準語中にもなお存し、褻衣けぎという語も対馬つしま五島ごとう天草あまくさなど、九州の島々には方言として行われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
天草あまくさ征伐の陣中にひるがえした。
忠義 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
肥後と天草あまくさの島との間、海中に小さき島あり。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)