商賈聖母しょうこせいぼ
天草の原の城の内曲輪。立ち昇る火焔。飛びちがふ矢玉。伏し重なつた男女の死骸。その中に手を負つた一人の老人。老人は石垣の上に懸けた麻利耶の画像を仰ぎながら、高声に「はれるや」を唱へてゐる。 忽ち又一発の銃弾。 老人はのけざまに仆れたぎり、二度 …