夢見ゆめみ)” の例文
おかがると、はるのころは、新緑しんりょく夢見ゆめみるようにけむった、たくさんの木立こだちは、いつのまにかきられて、わずかしかのこっていなかった。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうべの夢見ゆめみわすれられぬであろう。葉隠はがくれにちょいとのぞいた青蛙あおがえるは、いまにもちかかった三角頭かくとうに、陽射ひざしをまばゆくけていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
夢見ゆめみさととももうすべき Nara la Morte にはかりよんのおとならぬ梵鐘ぼんしょうの声あはれにそぞいにしえを思はせ候
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
おくさんは黒未勝くろみかちな、若々わか/\しいひとみを夢見ゆめみるやうに見張みはりながら、れやかにつぶやいた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
此方こなたも、またはかから草鞋穿わらぢばきたやうなふるをとこつたので、わすれるともなくまぎれたが、祭禮まつり太鼓たいこふにつけて、夢見ゆめみみゝに、一撥ひとばち、どろ/\とはひつたやうに、むるばかり思出おもひだした。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しやく有餘いうよ猛狒ゴリラ苦鳴くめいをあげ、鮮血せんけついて地上ちじやうたをれた。わたくし少年せうねんとはゆめ夢見ゆめみ心地こゝち韋駄天いだてんごとそのかたはらはしつたとき水兵すいへい猛獸まうじうまたがつてとゞめの一刀いつたう海軍士官かいぐんしくわん悠然いうぜんとして此方こなたむかつた。
夢見ゆめみごこちの流盻ながしめや、かねひゞきあをびれに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
夢見ゆめみる勿れ春の野に
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
うついた眼許めもとには、ほのかなべにして、びんが二すじすじ夢見ゆめみるようにほほみだれかかっていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたくし武村兵曹たけむらへいそうとはゆめ夢見ゆめみ心地こゝち
うつつともなく夢見ゆめみ風情ふぜいは、近頃ちかごろ評判ひょうばん浮世絵師うきよえし鈴木晴信すずきはるのぶ錦絵にしきえをそのままのうつくしさ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)