-
トップ
>
-
ゆめみ
夢見の
里とも
申べき Nara la Morte にはかりよんの
音ならぬ
梵鐘の声あはれに
坐ろ
古を思はせ候
奧さんは
黒未勝ちな、
若々しいひとみを
夢見るやうに
見張りながら、
晴れやかにつぶやいた。
その
算へざりし奇遇と
夢ざりし
差別とは、
咄々、相携へて二人の
身上に
逼れるなり。
女気の
脆き涙ははや宮の目に
湿ひぬ。
然し
此日は、
無論空腹の
儘に
暮れて、
夜は
夢の
間も、
始終食物の
事を
夢て
居るといふ
次第、
翌日になると
苦さは
又一倍、
少年と
二人で
色青ざめて、
顏を
見合はして
居るばかり
よしさりとも、
一たび
同胞と
睦合へりし身の、
弊衣を
飄して道に
酔ひ、流車を駆りて富に
驕れる
高下の
差別の
自ら
種有りて
作せるに似たる
如此きを、彼等は更に更に
夢ざりしなり。