変梃へんてこ)” の例文
旧字:變梃
先発宿めの佐十さんが南摩なんまホテルで拒絶され、釜屋で門前払いを食い、ようやくにして佐野屋という変梃へんてこな家の二階と決まる。
その代り変梃へんてこな爺さんが、一羽新しく加わったね。何んでもいいや、一網打尽、引っ捕えて鳥小屋へ入れてやろう! さあさあみんなお始めよ
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それに、あの迷亭って男はよっぽどな酔興人すいきょうじんですね。役にも立たないうそ八百を並べ立てて。わたしゃあんな変梃へんてこな人にゃ初めて逢いましたよ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
でも無理に、五日市や八王子で、変梃へんてこなお道化どうけを三、四日売ってみましたが、予期どおりな悪評で、さんざんなていたらく。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこぶ変梃へんてこな話であるが、これは大杉を窮地におとしいれて自暴自棄させないための生活の便宜を与える高等政策であったろう。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
何の必要があって、そんな変梃へんてこな死に方をするのかすら見当の付けようがない。ただ御苦労と云うより外はないであろう。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そして彼は元気な朴訥ぼくとつさをもって、また地勢についての賢明な叙述——(その叙事詩的な物語の中に変梃へんてこ插入そうにゅうされる)
ところが、喜劇に笑いこけていた見物達は、まさに第二幕目の緞帳どんちょうが上ろうとする時、実に変梃へんてこな出来事にぶつかった。
黄金仮面 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
どんなに言葉のうけ交しが変梃へんてこなかたちにならうとも、向方も不思議に思はないのが私は、面白かつた。
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
エ? 左様さう々々、君はまだ御存じなかつたんだ。罷めましたよ、遂々たうたう。何でも校長といふ奴と、——僕も二三度見て知つてますが、鯰髯なまづひげの随分変梃へんてこ高麗人かうらいじんでネ。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
地上全体に大爆発を起こして人類といういじ/\した生物だけでも絶滅するんだがね——それにしても人類がなくなればまた何か変梃へんてこなものが出て来るかも知れないね。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
そうしてそれが、砂の中から浮んでいる私の顔を、とても変梃へんてこにさせていそうだった。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
一足飛びに上手じょうずになって、初手しょてから立派に踊りが出来ればとにかく、こんなことを毎晩見せられたり、やがては自分もこんな腰附き手附きをして変梃へんてこ極まる仕草をしなければならんとは
途端にまどわされて印もつけて来なかったような変梃へんてこな馬を買ってしまう。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
真紀 変梃へんてこな所はあなたの感じが出てるんだろう、きっと。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
だが、その幽霊紳士は僕には確かに変梃へんてこに思われるな。
の舶来の舞踏など、余程高尚な積りでおるかは知らぬが、その変梃へんてこな足取、その淫猥いやらしき腰は、盆踊りより数倍も馬鹿気たものである。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
いやいや、不思議はそれにとどまらぬ。もっともっと変梃へんてこなことがあった。もう不思議という言葉では足らぬ。不可能事だ。ありべからざることだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……え、何んだって山影さん? ああその人なら表て通りの、三丁目の辺でグルグルと、変梃へんてこな女に取り巻かれているよ。うんそうだ真っ黒の女に。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また妙に眼の光る町人も、物騒な棒を持ってあるく変梃へんてこな餓鬼も、いつのまにか寝床をもぬけの殻として、風を食らッて出立してしまったふうです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美妙斎や紅葉の書斎のゴタクサ書籍を積重ねた中に変梃へんてこな画や翫弄物おもちゃならべたと反して、余りに簡単過ぎていた。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
数年来彼は毎朝、くだらない文学新聞の淫猥いんわい頽廃たいはい的な小説を耽読たんどくしていた。そのために頭が変梃へんてこになっていた。
退きならない先口をみんな断っておしまいになったというお話で御座いましたが……ところが旦那方の前でげすが、西洋人の惚れ方ってえものはヨッポド変梃へんてこでネ。
S岬西洋婦人絞殺事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
霞みをくらいながら、変梃へんてこな身振りで面白そうにロココ風の「四人組の踊りカドリール」を踊っていた。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)
比田は変梃へんてこな事ばかりいった。しかし頼んだ事は一も二もなく引き受けてくれた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
色と匂いと音楽と、……雑沓と歓楽との場であって、大概変梃へんてこな田舎者でも、ここではたいして目立たなかった。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうも君の話は変梃へんてこだぜ。箱なんて何もないじゃないか。それに箱の中で歌を歌ったなんて、人殺しの最中にそんな馬鹿馬鹿しい真似をする奴があるもんか」
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
このおもしろみ読書の面白味にもあらず談理のおもしろみにもあらで一種変梃へんてこなおもしろみに候、小生おもふに学者の楽しむ所は理のおもしろみ、詩人の楽しむ所は情のおもしろみ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかも、それがあの窓に限って念入りに、ベタベタと重なり合って附いているのだから変梃へんてこだよ。よっぽど特別な……或る極めて稀な場合を想像した仮説以外には、説明の附けようがないのだ
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その言葉に従えば、クリストフは天才であり、非凡な男であって、珍妙な音楽を作り、ことに変梃へんてこな音楽談をなし、機才にあふれており——そのうえ好男子で、きれいな口と素敵な歯とをもっていた。
すべ変梃へんてこな文句ばかりだね」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「お前は芸で食っている、ところが俺というものは、先祖の武功というような、変梃へんてこなもので食っている。こいつは問題にならないな。お前の方が身分がいい」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
という、変梃へんてこ捨科白すてぜりふを残しながら三人は、無理に肩をそびやかして出て行った。
いなか、の、じけん (新字新仮名) / 夢野久作(著)
三唖も旋毛つむじの少々曲った変梃へんてこな男だから嫌気いやきがさしてた暫らく足を遠のくと、今度は他の家へはマメに出掛けるくせに社のものの方へはまるきりいたちの道てのはあんまり義理を知らなさ過ぎるぜと
変梃へんてこだなア」と呟いたとたん、行手の林のから、二点、十点、二十点、三十点ばかりの松火の光が、雪を桃色に染めながら一列にタラタラと現われた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
奇妙な風体ふうていをして——例えば洋服の上に羽織を引掛けて肩から瓢箪ひょうたんげるというような変梃へんてこ扮装なりをして田舎いなか達磨茶屋だるまぢゃやを遊び廻ったり、印袢纏しるしばんてん弥蔵やぞうをきめ込んで職人の仲間へ入って見たり
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
こんなうちが世の中にあろうとは私は夢にも思い付かなかった。何もかも夢の中の出来事のように変梃へんてこなことばかりでありながらその一つ一つが夢以上に気味わるく、恐ろしく、嬉しく、悲しかった。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
おやおやこいつは変梃へんてこだぞ。妙な風向きになったものだ。叔父貴としては珍らしい。ははあわかった、手段だな。いわせて置いてとっちめる。ううんこいつに相違ない。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ピヤノを買ったのも音楽好きよりは珍らし物好きの愚慢病であった。が、日本の洋楽が椿岳や彦太楼尾張屋の楼主から開拓されたというは明治の音楽史研究者の余り知らないすこぶ変梃へんてこな秘史である。
三平は変梃へんてこな身ぶりで礼を返した。
黒白ストーリー (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
それがな、本当に変梃へんてこだったよ。おれが後苑を歩いていると、素的な別嬪が手招きしたものさ。でおれはいて行った。すると大奥と天主台の間に厳封をした井戸があろう。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おやおや変梃へんてこに疑ぐるね。まあ精々せいぜいかんぐるがいい。今にアッと云わせてやらあ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
全く今日の君の様子は、変梃へんてこと云わざるを得なかったよ。蛮的の君がお洒落しゃれをする。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
変梃へんてこな蝶をなくしたことぐらいで、気が変わるとは解せないよ。もっとも研究材料で、大事なものには相違あるまいがな……まあまあそれはそれとして、お前さんと逢えたのは有難い。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「さらわれた先をいわないというのが、何より変梃へんてこで見当がつかない」
染吉の朱盆 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
変梃へんてこな名だなあ、茗荷悪尉だなんて」甚太郎はまたも哄笑こうしょうした。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おい、お銀、どうしたものだろう。少し変梃へんてこじゃなかろうかな」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おや変梃へんてこに笑やあがったな」甚太郎は黐棹を取り直した。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どう考えても変梃へんてこな名だ。おっとこいつア何んだろう」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「おお初公、変じゃないか、どう考えても変梃へんてこだよ」
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)