フィート)” の例文
……見よ、壁に懸けられた怪鳥が、翼をいっぱいに拡げながら今にも襲いかからん姿勢で、眼前二フィートの処に突立っているではないか。
廃灯台の怪鳥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そして二フィートフィートと列の西に寄るに従って、雫と雫との間隔は一インチインチと大きくなって、やがて吾々の視線から闇の中へ消えている。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
そして寝台ベッドの斜め後方の壁が一フィートばかりも刳り抜かれて、中はおそらく厳重な、鋼鉄張りの耐火設備にでも、なっているのかも知れぬ。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
彷徨ほうこうすること暫し、台地が東側の大峡谷に落ちこむ縁の所に、一本の素晴らしい巨樹を見付けた。榕樹ガジマルだ。高さは二百フィートもあろう。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
漸く一つ、やや明るい所に来て停った。「二度上」という駅名が見え、海抜三八〇九フィートと書いた棒がその側に立てられてあった。
みなかみ紀行 (新字新仮名) / 若山牧水(著)
その最初の枝に達するまで八十フィートの高さに至るまでもこのようにして刻目をつけられた木が見られたが、ここまで登らなければ
君、この脊の高い男が、何時間かの間を、一フィートも身体を縮めていなければならないと云うことは、全く冗談ごとではないからね。
大きい方の男は背をげて、別に目立つふるまいもしていなかったが、ヴァランタンには、その男が六フィートはたっぷりあることがわかった。
それはすばらしく大きな糸杉サイプレスで、幹の周囲が百二十六フィート、樹齢はごく内輪に見積っても、まず六千年は請合だと言われている。
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
その人物は、フォールスタッフの道化面を冠っていて、身長は六フィート以上、着衣はやはり、我々と異ならないものを、身につけておりました。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
いや、その一瞬に、足場板もろとも、まッ逆さまにぼくはドックの底へおとされていたのである。高さは約四十フィートぐらいだったかと思われる。
高さ十五フィートもある其等の奇怪な植物は、広い砂漠の全面を被う墓標のように見えた。凝っと立ち、同化作用も営まない。——
翔び去る印象 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
それは床から五フィートばかりの壁に設えたずしの中に納められてあった。淡い間接照明の光は、奥深い洞穴の様な感じを与えていた。
赤い手 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかもこの場合、作家は洋服屋より一層困難である。洋服屋には何フィートでも服地はある。だから大きい寸法には大きい服地をもって臨むばかりだ。
童話における物語性の喪失 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
科学が完全に陸上を征服したと広言するならば、聞いてみましょう、地上僅か三万フィートのヒマラヤの頂はまだ科学の力で究められてはいないはず。
山道 (新字新仮名) / 中里介山(著)
クルック・タグの山麓さんろくには、海面下千フィートの深地がある。かつての鹹湖かんこは今は大部分涸渇こかつして、塩床のけわしい砂礫地されきちである。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
標高一万三百七十フィートのアイスメーヤで乗りかえになる、ここも停車場はトンネルの中で、私はすぐ飛び出して、岩壁に穿った窓から頭を出した。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
教えてくれたのがこの術なんです。つまり、五フィート以内にある物体なら、なんでも手元へ呼び寄せることができるんですナ
海抜、六千九十フィート。エンガディン、テュシスから Coire の経由、またはランドカルト・ダヴォスから汽車。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
彼等は印度支那・雲南うんなん間をほとんど踏破して、怪獣の出没する熱帯ジャングルも知っているし、奔流の上一千フィートの垂直に近い絶壁の側面について走ったり
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
死体の上衣うわぎから、幅一フィートばかりの布片きれが裾から腰の辺まで裂いて、腰のまわりにぐるぐると三重に巻きつけて、背部でちょっと結んでとめてあったことを
大正十三年の一月から十一月まで警視庁で検閲した映画の数が一万八千巻、千六百フィート、切った長さが約六万フィート……以て如何に「活動」がさかんであるかがわかる。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
山は植物ばかりではない、禽獣きんじゅうばかりではない。鮎も一千フィートはのぼる、イワナは四五千呎までのぼるであらう。鰻さへ二万呎の深海から三千呎はのぼり得る。
夏と魚 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
地上六十フィートもある一室に住んでいた Rose Delacourt という娘さんが、昼になっても起きてこないので、警官がドアを打ち破って室に入ると
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
高さ一フィートほどの片把手のその壺は、鋸歯文きょしもんふうの模様が横に刻みこまれている。素朴な、優雅な、いきいきとした力感にあふれた、見たこともない逸品の壺であった。
蒐集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
折ります。此処では毎分間の排水量千百五十五立方フィート、通気量三十万立方呎という有様ですからね
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三千フィート隧道とんねるを、汽車は石狩から入って十勝へ出た。此れからは千何百呎の下りである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
人夫たちはベンゲット山腹五千フィートの絶壁をジグザグに登りながら作業しなければならず、スコールが来ると忽ち山崩れや地滑りが起って、谷底の岩の上へ家守やもりのようにたたき潰された。
わが町 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
陸にはウラル山が境をなしているが、この山はその長さこそ百四十マイルもあるが、幅は拾六哩ないし六拾六哩にして、最高点は僅か五千フィート位なるを見れば、如何にその傾斜の緩なるかが分る。
東西相触れて (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
長さ四十二フィートのひどく堅い一本石の石灰石の立像で、殊にその顔の晴れやかな美しさは無類である。少し吊り上った口角の素樸アーケイクな微笑も印象的であれば、王冠の前部のコブラの形もうまい。
七重文化の都市 (新字新仮名) / 野上豊一郎(著)
丁度富士山の望まれる峠に浅間社が勧請されてあるのと同様で、ただ富士山には山頂にお宮があるが、二万フィートを超えているリスムゴンバには山頂にお宮のないことが異なっているのみである。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
毎日毎日三百七フィートの高塔から美しい鐘の音が音楽となって鳴り響く。夜も昼も無数の老若男女が流れ来り流れ去る此の校門は、正に歴史のペエジペエジに現われ消え去る人々の姿なのである。
バークレーより (新字新仮名) / 沖野岩三郎(著)
彼は、カラをつけ、襟飾ネクタイを結び、背広を着たままで、地上六十フィート、寂寞とした無人の大ビルディングの一角で——正確に云えば、S百貨店五階、洋家具売場附属倉庫内で、睡眠を摂っていたのだった。
百三十フィートの煙突の下で
無念女工 (新字新仮名) / 榎南謙一(著)
成程、薄く積った地面の雪の上には、軌条から二フィート程離れしかも軌条に平行して、数滴の血のしずくの跡が一列に並んで着いている。
気狂い機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
元来サモア人は体格がいいが、ラファエレも六フィートインチ位はあろう。身体ばかり大きいくせに一向意気地がなく、のろまな哀願的人物である。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
僅か四フィートぐらい(四方)の操縦室に見たり整えたりしなければならないものが百以上あって、これは飛行士をつからせる
はっとして振向いたとたんに、——本船の左舷殆ど十メートルほどの波間に、おおきな、およそ十フィートもあるかと思われる灰色の怪物が浮上うきあがっていた。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかも、そのまっ暗な、水面下三百フィートのしたでは、シュトラウスのワルツが響き、三鞭酒シャムパンの栓がふっ飛んでいるのである。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
七重にも八重にも山を取りいている羊腸たるこの小径は、道幅かれこれ二フィートばかりもあったであろうか? 落葉が厚く湿め湿めと散り敷いて
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
彼らの身長は滅多に五フィートを超えず、その腹は膨れ上り、肩は高く、頭は大きく、そして四肢は不釣合にせている。
ジュルガルデン市街島の丘にスカンセンなる公園兼屋外博物館オウプン・エア・ミウゼアムがあって、そこにべらぼうに高いブレダブリクの塔——二四六フィート——が立っているから
踊る地平線:05 白夜幻想曲 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
ヒマラヤ山麓さんろくの村に、身のたけ四十フィートの怪物が現れ、土地の住民はもとより、全印度人の間に大評判になっていた。
此の両側の断崖は無数の氷柱で、直立の岩壁は九百八十フィート、欧洲第一の大瀑布、シュタウプバッハ Staubbach は、この両側にかかって居る。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
二万フィート以上のエヴェレストの探検家の運ぶ足どりと同様に、弁信の身が吹き倒され、吹きまろばされるから、寸進尺退の有様、見るも歯痒はがゆいばかりであります。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
王鮭キングサモンは、ほかの三君が二フィート半からせいぜい三呎どまりなのに、長さは四呎半、胴廻りすら一呎半もあって、キングというより化物モンスターというほうがいいような雄大なやつだ。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それからその姿は、我々のすぐ側を通りすぎて、窓に忍び寄って、実に静かに窓を半フィートばかり開けた。
駱駝が進むに従って、金字塔は次第に近付いて来る。四百八十一フィートの、高さを持った其姿、今らながら雄偉である。北に向かった斜面の方へ、博士は駱駝を急がせた。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彦島村役場の明治頃の土地台帳によると、巌流島全体の面積一たん十六とあるから、いかに小さい島かが分ろう。岸のいちばん高い所でも六十三フィートぐらいなものだとある。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はじっと、富めるものでも、貧しいものでも、男でも女でも、およそ六フィートたっぷりあろうと思われる人を見つめていた。なぜなら、フランボーはその上六インチばかり大きかったのだから。