出掛でがけ)” の例文
戸口を出掛でがけに「うつかり話が面白かつたので遅くなつて済まない」と謙遜なムネ・シユリイは送つて出た主人に挨拶した。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それで仕方がないから代助を迎ひにつたのだ、と、是はあに出掛でがけの説明であつた。代助は少々理窟に合はないと思つたが、たゞ、左様さうですかと答へた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
両手を腹につて、顔を強くしかめて、お由は棒の様に突立つたが、出掛でがけに言つた事を松太郎に聞かれたと思ふと、言ふ許りなき怒気が肉体の苦痛くるしみと共に発した。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「はあえゝえゝ、えゝあさのうゝゝえゝえ、はあ出掛でがけえにいゝゝゝゝえ」とまたうたした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わりいって悪くねえって行かねば己叱られるだ、行って遣って下せえ、出掛でがけおらア肩たてえてなア、作さん今夜新吉さんを連れて来ないと打敲ぶったゝくよ、と云ってう脊中アったから、なに大丈夫でえじょうぶ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
呼息いきよりほか現實げんじつ世界せかい交通かうつうのないやうおもはれるふかねむりあさとほりであつた。すべてが今朝けさ出掛でがけあたまなかをさめてつた光景くわうけいすこしもかはつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あさ出掛でがけにどのやまてもくもかゝらぬやまはない」とうたつて茶碗ちやわんうごかしては
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこへ門野が大きな洋燈ランプを持って這入はいって来た。それには絹縮きぬちぢみの様に、たてみぞった青い笠が掛けてあった。門野はそれを洋卓テーブルの上に置いて、又縁側へ出たが、出掛でがけ
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこへ門野かどのが大きな洋燈ランプを持つて這入はいつてた。それには絹縮きぬちゞみやうに、たてみぞつた青いかさけてあつた。門野かどのはそれを洋卓テーブルうへいて、又椽側へたが、出掛でがけ
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ小六ころく手拭てぬぐひげて、風呂ふろからかへつてときは、座敷ざしき眞中まんなか眞四角まつしかく食卓しよくたくゑて、御米およね手料理てれうり手際てぎはよく其上そのうへならべてあつた。手焙てあぶり出掛でがけよりはいろえてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宗助そうすけ折角せつかく出掛でがけめて、邪魔じやまでもしたやうどくおもひをした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)