伊丹いたみ)” の例文
お曲げあそばすこともございますまい。——が、万が一にも、途中、危うしとお察しなされましたら、摂津の伊丹いたみに、これの兄が……
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天正六年に荒木攝津守せつつのかみ村重が攝津國伊丹いたみの有岡城にこもつて織田信長にそむいた。其時孝高は村重をいさめに有岡城に往つて、村重に生け捕られた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
これは伊丹いたみ風といってむしろ芭蕉とは違った系統に立ってしかも似よった仕事をしたというような人々であります(39)
俳句とはどんなものか (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
すこしゆくとみちがふたつにわかれて右手へ曲ってゆく方のかどに古ぼけた石の道標が立っている。それは芥川あくたがわから池田を経て伊丹いたみの方へ出るみちであった。
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
おゝそれからう、コレ伊丹いたみなにみな此所これい。伊「へい/\。登「かみこれだけのお道具だうぐ何日いつにかお集めになつたのだ。伊「へえー、これなんまうすもので。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
成程談林だんりんの諸俳人は、——いや、伊丹いたみ鬼貫おにつらさへ芭蕉よりも一足先に俗語を使つてゐたかも知れぬ。けれども所謂平談俗話に錬金術をほどこしたのは正に芭蕉の大手柄である。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この酒はどんなたちで、どう口当りがして、売ればいくらくらいの相場で、舌触りがぴりりとして、あと淡泊さっぱりして、頭へぴんと答えて、なだか、伊丹いたみか、地酒じざけ濁酒どぶろくかが分るため
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
酒は伊丹いたみの上酒、さかなふなのあま煮、こなたなるはぎぎの味噌汁、あなたなるは瀬田のしじみ汁、まった、これなるは源五郎鮒のこつきなます、あれなるはひがい、もろこの素焼の二杯酢
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一、俳句に貞徳ていとく風あり、檀林だんりん風あり、芭蕉ばしょう風あり、其角きかく風あり、美濃みの風あり、伊丹いたみ風あり、蕪村ぶそん風あり、暁台きょうたい風あり、一茶いっさ風あり、乙二おつに風あり、蒼虬そうきゅう風あり、しかれどもこれ歴史上の結果なり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
なんでも松林さんを御贔屓ごひいきになさる伊丹いたみなんとかいうお大名が、緑町の空き屋敷を買ってくれたのへ手入れをして、そっくり道場を移してお嬢さまも引き取り、なかなかお盛んにやっていますが
初午試合討ち (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
午後は伊丹いたみの小山湯というのに入浴に行く。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
伊丹いたみさ」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
八年の二月、大挙して、京都へ出た信長は、そのおびただしい人数と行装ぎょうそうの威を誇示しながら、山崎、郡山、伊丹いたみなどの大坂近郊を、巡遊していた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平八郎のめかけ以下は、初め般若寺村はんにやじむらの橋本方へ退いて、それから伊丹いたみの紙屋某かたへ往つたのである。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
伊丹いたみなんぞと、大ざっぱに名乗りは聞くが、さあ、どれが日本一だと聞かれたら上方でも困るだろう、道庵も人に聞かれて、その点、常にいささかテレている、今度という今度は、ひとつ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
九月二十二日 伊丹いたみ、あけび亭。坤者招宴。一泊。
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
天も酔りげにや伊丹いたみの大灯籠 同
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
これよりも先に、秀吉は、渡辺天蔵の報告によって、黒田官兵衛が無事に伊丹いたみの獄中から救い出されたことは聞いていた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ああら珍しや酒は伊丹いたみの上酒、肴はふなのあま煮、こなたなるはぎぎの味噌汁、こなたなるは瀬田のしじみ汁、まった、これなるは源五郎鮒のこつきなます、あれなるはひがいもろこの素焼の二杯酢
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
とりの下刻に西丸目附徒士頭かちがしら十五番組水野采女うねめの指図で、西丸徒士目附永井亀次郎、久保田英次郎、西丸小人目附平岡唯八郎ただはちろう、井上又八、使之者志母谷つかいのものしもや金左衛門、伊丹いたみ長次郎、黒鍬之者くろくわのもの四人が出張した。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
伊丹いたみではもう今朝から旦那様の来ることが皆の噂になっておりまする。てまえも荒木様のご家中から聞きましたので」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その力の、いかに隠然いんぜんと、大きなものかは、現在、中央軍の直面している荒木村重むらしげ一族の一伊丹いたみ城すら、いまもって、ちないことを見てもわかる。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊丹いたみの池田信輝も、一子勝九郎しょうくろうともなって、この日、途中から秀吉の軍に投じた。信輝も、今朝出陣の間際に、剃髪ていはつして、名も勝入しょうにゅうとあらためていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すでに老齢でもあり隠居同様な身分の彼ではあったが、ひとたび息子の官兵衛が伊丹いたみの獄に監禁かんきんされ、以後の生死も不明と伝わるや、この自髪の老鶴は
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また国もとの伊丹いたみ城へ、しきりと往来し出したのは、決して招かざるの客ではなく、彼の心が敵方に反映し、その行動が不言のうちに招いたものだった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねて情報集めに放っておいた、八木弥太郎法達ほうたつの部下が、摂津の昆陽野こやの伊丹いたみ)から馬をとばして来て
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊丹いたみ、池田、芥川あくたがわ、小清水、高槻たかつきなどの諸城も、次々に織田の掃討軍そうとうぐんの威力に整理されていった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
篠崎小竹しょうちくの顔も見え、岡田半江はんこう小田おのだこくなどの画人や、伊丹いたみ剣菱けんびしの主人なども来ていた。
梅颸の杖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が今や彼は、一面策略一面威嚇いかくに成功した。荒木村重の抗戦力は、両翼をぎ取られた伊丹いたみ一城だけのものになり終った。右に高山右近なく、左に中川清秀のない村重の陣形は
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かかるうちにも、伊丹いたみ方面や高槻たかつき城あたりから、物見の報告は頻々とはいってくる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伊丹いたみの池田父子は」
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)