トップ
>
仕来
>
しきた
ふりがな文庫
“
仕来
(
しきた
)” の例文
始めは、真心から発した感情の表現も、時を経実感が失せた時には、空疎な
仕来
(
しきた
)
りとなってしまいます。その上に生ずる蛆が出来る。
男女交際より家庭生活へ
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
未荘の
仕来
(
しきた
)
りでは、
阿七
(
あしち
)
が
阿八
(
はち
)
を打つような事があっても、あるいは
李四
(
りし
)
が
張三
(
ちょうさん
)
を打っても、そんなことは元より問題にならない。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「半殺しにして仕舞うのだ。この村の娘には、ほかの村の奴の指一本
指
(
さ
)
させないのが、昔からの
仕来
(
しきた
)
りだ。お前さんも知っているだろう」
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
店員諸子にしても年少の人たちの中には、店の
仕来
(
しきた
)
りに従うて仕事をしながらも、何故そうするのか解らないでいるものがないとも言えない。
一商人として:――所信と体験――
(新字新仮名)
/
相馬愛蔵
、
相馬黒光
(著)
家族のものと、両親や近い親類のものだけで、静かにクリスマスの七面鳥を食べるのが、普通の家庭の
仕来
(
しきた
)
りになっている。
ウィネッカの冬
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
▼ もっと見る
御存じとは思いますが、
川越喜多院
(
かわごえきたいん
)
には、
擂粉木
(
すりこぎ
)
を
立掛
(
たてか
)
けて置かないと云う
仕来
(
しきた
)
りがあります。縦にして置くと変事がある。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
善良な型の人物のようであったけれども、軍隊の
仕来
(
しきた
)
りに忠実であろうとするその愚直さが、私には何となく重苦しかった。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
島には大体に古い
仕来
(
しきた
)
りが残るものと見えて、
対馬
(
つしま
)
でも
種子島
(
たねがしま
)
でも、この最初の足入れの日には、嫁はふだん着のままで来るという話が多い。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私のこれまでの四十年ちかい生涯に於いて、幸福の予感は、たいていはずれるのが
仕来
(
しきた
)
りになっているけれども、不吉の予感はことごとく当った。
父
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
それぞれの家では先祖代々の
仕来
(
しきた
)
りに従って親から子、子から孫とだんだんに伝えて来たリセプトに拠って調味する。
新年雑俎
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
飯
(
めし
)
になった時、奥さんは
傍
(
そば
)
に
坐
(
すわ
)
っている
下女
(
げじょ
)
を次へ立たせて、自分で
給仕
(
きゅうじ
)
の役をつとめた。これが表立たない客に対する先生の家の
仕来
(
しきた
)
りらしかった。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
どのみち、おれも今までの
仕来
(
しきた
)
りを考えてみれば、そう立派なこともいえないのだ。だが、いまいましい奴等だ。
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
夜更けてかえると
冷
(
ひえ
)
るので牛肉を半斤ばかり煮て食べるのが
仕来
(
しきた
)
りになっていた。それさえ口にしなかった。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
後に女中の手が
殖
(
ふ
)
えて来たけれど、お鈴は加世子の生きている時からの
仕来
(
しきた
)
りを、曲りなりにも心得ていて、どこに何が仕舞ってあるのかもよく知っていた。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「どっちも抜き差しならねえ破目だ。仲間の
仕来
(
しきた
)
りは、こんな時には二挺の
匕首
(
あいくち
)
に物を言わせる外はねえ」
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
おそらくそれは凡て極く平凡に、
仕来
(
しきた
)
りの
風
(
ふう
)
を
承
(
う
)
け継いだものです。そうして土地の習慣や、需用に応じて、昔ながらに同じものを繰返しているに過ぎないのです。
多々良の雑器
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
嘉助は橋本の家を出て
最早
(
もう
)
足掛二月に成るという。この長い行商の旅は、ずっと以前から
仕来
(
しきた
)
ったことで、橋本の薬といえば三吉が住む町のあたりまで弘まっていた。
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
間
(
あいだ
)
に、彼は
床
(
とこ
)
の中から、耳をそばだて、目を光らせて、菰田家の一切の
仕来
(
しきた
)
り、人々の気風、邸内の空気を理解し、それに彼自身を同化させることを努めたのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
雪之丞は、はっとして、日頃の
仕来
(
しきた
)
りで、女らしく、振りの袂で胸を抱いた。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ただただ日本古来の
仕来
(
しきた
)
りのままをあたりまへの事と心得ておりました。
こわれ指環
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
世の中の人も数千百年の
古
(
いにしえ
)
よりこれを嫌いながらまた自然にその
仕来
(
しきた
)
りに慣れ、上下互いに見苦しき風俗を成せしことなれども、畢竟これらはみな法の貴きにもあらず、品物の貴きにもあらず
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
そして、やがて持参の折や酒などもござるが、それは後で開くといたして、われらの会合の
仕来
(
しきた
)
りだけを、先へ致しておくことにいたすゆえ、長うはかからぬが、
暫時
(
ざんじ
)
それにてお待ちねがいたい
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
待合の娘が芸者を遇する
仕来
(
しきた
)
り、芸者が待合の娘を遇する仕来り、ちやんと出来上つた枠の中で我がまゝ一杯ハネ返つて可愛がられたりオダテられたり、かつ又経営上のラツ腕もふるつてきたが
金銭無情
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
けれども町の様子や、そういうところの
仕来
(
しきた
)
りなどを皆目知らない禰宜様宮田は、責任をもって判断は出来なかった。
禰宜様宮田
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
ですがな……どうも、これだけは
真面目
(
まじめ
)
に
介抱
(
かいほう
)
は出来かねます。娘が
煩
(
わずら
)
うのだと、
乳母
(
うば
)
が始末をする
仕来
(
しきた
)
りになっておりますがね、男のは困りますな。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
そのためにたいていの農村では昔の
仕来
(
しきた
)
りのままに、月の形を見ていろいろの祭や行事の日をきめたのであった。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
しかし、そこはさすがに徳川氏だ、少しも早雲の遺法を
崩
(
くず
)
さず、従来の
仕来
(
しきた
)
りに従って、これを治めたのだ
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
例えば私なら私が世の中の
仕来
(
しきた
)
りに反したことを、断言し、宣言し、そうしてそれを実行する。
模倣と独立
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
親から
仕来
(
しきた
)
った百姓は百姓として、
惣領
(
そうりょう
)
にはまだ家の仕事を継ぐ特権もある。次男三男からはそれも望めなかった。十三、四のころから草刈り奉公に出て、末は
雲助
(
くもすけ
)
にでもなるか。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
もとの位置にはもどさない
仕来
(
しきた
)
りがある、階級的な差別の厳しいのが芝居道だった。
市川九女八
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
古い
仕来
(
しきた
)
りがないだけに、何か頼りない感じだつたが、あの世界のやうに、抱へ主や、出先きのお神、女中といつた
大姑小姑
(
おおしうとこじうと
)
がゐないのは、成程新しい職業の自由さに違ひないのだが
のらもの
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
けれどちょっと方針を変えてこの場ですぐに改めれば、人々は太平無事で、たとい今までの
仕来
(
しきた
)
りがどうあろうとも、わたしどもは
今日
(
こんにち
)
特別の改良をすることが出来る。なに、出来ないと
被仰
(
おっしゃる
)
るのか。
狂人日記
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
ちょっと……ああ、番頭さん、お店の方もお聞きなさい。私ね、この頃人に聞いたんですがね。お店の
仕来
(
しきた
)
りで、あの饅頭だの、
羊羹
(
ようかん
)
だの、餅菓子だのを
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この
仕来
(
しきた
)
りには恐らくは忘却せられた今一つ根本の意味があったのである。それを考え出さぬ限りは、神隠しの特に日本に多かった理由も
解
(
わか
)
らぬのである。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
大体に於て
仕来
(
しきた
)
りの通り、裸馬に乗せられて、前に捨札、役人と非人と人足が固めて、そうしていよいよ刑場まで着いて馬から引下ろされた時に、検視詰所の背後から
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
木更津あたりの料理店の
女将
(
おかみ
)
である
姑
(
しゅうとめ
)
の
仕来
(
しきた
)
りとは、ものみながしっくりとゆかなかったその上に、若主人は
放蕩
(
ほうとう
)
で、須磨子は悪い病気になったのを、肺病だろうということにして離縁された。
松井須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
彼は「今までの先生の家庭の
仕来
(
しきた
)
り通りに……」
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
仕来
(
しきた
)
り通りに柱へくくりつけられた罪人は、次に手伝いとも十人ばかりして、その柱を起して持ち上げ、かねて掘り下げて置いた穴の中へ押立て、三尺ばかり埋め込んで
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
現在はちょうど世の中の一つの変り目で、古い
仕来
(
しきた
)
りと新しい思索とが抵触して、かつては直面しなかったいろいろの生活問題の、解決を今明日に迫られているものが多い。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
私には何にも見えないんだよ。見えないが、一人で茶屋へ休むと、茶二つ、
旅籠屋
(
はたごや
)
では膳が二つ、というのが、むかしからの津々浦々の
仕来
(
しきた
)
りでね、——席には洋服と、男ばかり三人きりさ。
白花の朝顔
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
必ずしも効果があると信じているわけでもあるまいが、久しい
仕来
(
しきた
)
りだから、これをせぬと気になるためだろう。いまでも子どもの無い家からは
親爺
(
おやじ
)
が出てそれをやっている。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
またはこの食物をもらって食べておくと
夏痩
(
なつやせ
)
せぬまじないなどといっていたのも、すべて皆いつからともない
仕来
(
しきた
)
りだからで、たとい小さな女の子のすることでも公務であり
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ところが昔の村の人たちなどは
悠長
(
ゆうちょう
)
で、そう大して気にもかけずに子どもにはいいたいことをいわせて、おかしいことをいえばただ笑って、古い
仕来
(
しきた
)
りの少しずつ変って行くのを
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
そうしてまた教える側でも、特に計画ある幼稚園でもない限り、いつも手近い
仕来
(
しきた
)
りをそのまま利用しますから、偶然に一種の駅伝競走の如く、大昔との
聯絡
(
れんらく
)
を見るのであります。
野草雑記・野鳥雑記:01 野草雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
めいめいの古い
仕来
(
しきた
)
りを守り続けていた故に、比べ合わせて見ると家ごとのちがいが著しく、しかもその間に一貫した大切なる共通点のあることも、見落すことができないのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
是は衣料がこの頃のように、短い期間で変って行く場合にはできない仕事だが、幸いなことには前代の変遷は遅々としており、国人にもまた親々の
仕来
(
しきた
)
りを、守ろうという念がずっと強かった。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
古い
仕来
(
しきた
)
りをつづけていた人が多く、七十何年は乱雑の間に過ぎて来た。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
次にこの日の
仕来
(
しきた
)
りにはどういうことがあるか。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
仕
常用漢字
小3
部首:⼈
5画
来
常用漢字
小2
部首:⽊
7画
“仕”で始まる語句
仕
仕業
仕事
仕舞
仕度
仕方
仕合
仕出来
仕掛
仕様