仕損しそん)” の例文
平衡へいこうを保つために、すわやと前に飛び出した左足さそくが、仕損しそんじのあわせをすると共に、余の腰は具合よくほう三尺ほどな岩の上にりた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ、お茶でも召されよ。さう一途いちづに思ひつめては事を仕損しそんじますぢや。世の中のことは成るやうにしか成りませんからのう。」
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
種々しゆ/″\と取扱ひ漸々やう/\涙金なみだきんとして金五兩つかは勘當かんだうとこそなりにけれ是に因て袋井の者三人はお芳を引立ひきたてつれ歸る然ば九郎兵衞は仕損しそんぜしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたし仕損しそんじてがっかりしているのに、なんでいいことをしたというのですか?」と、すぎのかって、たずねたのです。
もずとすぎの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
これは心のはかりから見れば、云わば一毫いちごうを加えたほどの吊合つりあいの狂いかもわかりませぬ。けれども数馬はこの依怙のために大事の試合を仕損しそんじました。
三右衛門の罪 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
仕損しそんじたり——とおもったか佐分利五郎次、おれた刀をブンと忍剣の面上めんじょう目がけて投げるがはやいか、きびすをめぐらして、いっさんに逃げだしていく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
盲滅法めくらめっぽうと云う奴だ。それでは必ずことを仕損しそんじるよ。物事はまずはっきりと条理すじみちを立ててから……
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
物をあぶり物をるも火力平均するがため少しくその使用法にるれば仕損しそんずる気支きづかいなし。費用は薪炭の時代に一日壱円五十一銭を要せしが今は瓦斯代九十五銭を要するのみ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
御辛抱ごしんぼう御辛抱ごしんぼういちゃァこと仕損しそんじやす」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なし神田三河町惣右衞門の方迄立退たちのくべし藤五郎樣には我々御供を致し後より行んほどに必ず共に仕損しそんずまじと申含め置豫々かね/″\相※あひづの支度してお島が手引を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
正吉しょうきち、この金紗きんしゃ羽織はおりは、仕損しそんじぬよう、ねんれてしなよ。」というように、主人しゅじんは、注意ちゅういしながらも、上等じょうとうのむつかしいしなをばえらんで、かれあつかわせるようにしました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あらゆる場合に於て、彼の決して仕損しそんじまいと誓つたのは、凡てを平岡に打ち明けると云ふ事であつた。従つて平岡と自分とで構成すべき運命の流はくろく恐ろしいものであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
仕損しそんじたら、一味の公卿同盟には大ヒビが入るし、対鎌倉の面でも、危険なッかけを呼ぶものとなりかねないので、秘命をさずける人選には、大事に大事をとっていたことだった。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おのれ故に、あつたら一筆ひとふで仕損しそんじたぞ。」
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
差遣さしつかはすべし山中に地獄谷ぢごくだにと云處あり此所ここにて兩人を谷底たにそこ突落つきおとして殺し給へ必ず仕損しそんずる事あるまじ其留守るすには老僧らうそう天一を片付申すべし年はよつたれどもまだ一人や二人の者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ところが、そのになってきくと、M病院エムびょういんでは、院長いんちょうよりも代診だいしんのほうが、はるかに手術しゅじゅつ上手じょうずなので、院長いんちょうには、とき仕損しそんじはあるが、代診だいしんかぎってけっして仕損しそんじがないということでした。
世の中のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
仕損しそんじたり」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうして仕損しそんじたかという原因げんいんについてはりませんでした。
二人の軽業師 (新字新仮名) / 小川未明(著)