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五位鷺
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ごゐさぎ
其の
声が、
五位鷺の、げつく、げつくとも
聞こえれば、
狐の
叫ぶやうでもあるし、
鼬がキチ/\と
歯ぎしりする、
勘走つたのも
交つた。
主人の妻が「あツ、あツ」と夜天に鳴く
五位鷺の様な声をして驚き倒れる
機会に鳥籠が
顛倒かへると、籠の中から
隣人と不義をした
妾の
生首が
現はれて幕に成つた。
ひら/\、と
夕空の
雲を
泳ぐやうに
柳の
根から
舞上つた、あゝ、
其は
五位鷺です。
中島の
上へ
舞上つた、と
見ると
輪を
掛けて
颯と
落した。
何とも
御謙遜で、
申上げやうもありません。
大先生、
貴下で
無くつて、
何うして、
彼の
五位鷺が
刻めます。あの
船が
動かせます。
尤も
其は、
或機會に
五位鷺が
闇夜を
叫ぶ、
鴉が
啼く、と
同じ
意味で、
聞くものは、
其處に
自分一人でも、
鳥は
誰に
向つて
呼ぶのか
分らない。
で、
船が
一揺れ
揺れると
思ふと、
有繋に
物駭きを
為たらしい、
艫に
居た
五位鷺は、はらりと
其の
紫がゝつた
薄黒い
翼を
開いた。
鉄砲疵のございます
猿だの、
貴僧、
足を
折つた
五位鷺、
種々な
者が
浴みに
参りますから
其の
足痕で
崖の
路が
出来ます
位、
屹と
其が
利いたのでございませう。
餘り
遠い
所ではありませぬ。
人通りのない、
故道松並木の
五位鷺は、
人の
居處から五
本目の
枝に
留ります、
道中定り。……
其の
灯の
消殘りましたのは、お
前樣から、
上へ五
本目と
存じます。