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ごゐさぎ
何とも
御謙遜で、
申上げやうもありません。
大先生、
貴下で
無くつて、
何うして、
彼の
五位鷺が
刻めます。あの
船が
動かせます。
尤も
其は、
或機會に
五位鷺が
闇夜を
叫ぶ、
鴉が
啼く、と
同じ
意味で、
聞くものは、
其處に
自分一人でも、
鳥は
誰に
向つて
呼ぶのか
分らない。
で、
船が
一揺れ
揺れると
思ふと、
有繋に
物駭きを
為たらしい、
艫に
居た
五位鷺は、はらりと
其の
紫がゝつた
薄黒い
翼を
開いた。