“も”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:
語句割合
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(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
その故に或る時は、二人の間に死ぬの生きるのというほどめ出すかと思えば、或る時は水も洩らさぬほどの親しみが見えるのです。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
し地球が熱病を患ったのだとすれば、その熱病の病源菌は、喜多川治良右衛門とその周囲の悪友共であったとも云い得たであろう。
地獄風景 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
片手かたてにブリキかんをぶらさげて、片手かたてにはさおをち、いつも帽子ぼうし目深まぶかにかぶって、よくこの洋服屋ようふくやまえとおったのでありました。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どんな些細ささいなことでも見逃さないで、例えば、兄は手拭てぬぐいを絞る時、右にねじるか左に捩るかという様なことまで、れなく調べました。
かかる世界において個物が客観界において自己をつ、即ち物において自己を有つということが我々が財産を有つということである。
絶対矛盾的自己同一 (新字新仮名) / 西田幾多郎(著)
年のれに軍功のあったさむらいに加増があって、甚五郎もその数にれなんだが、藤十郎と甚五郎との二人には賞美のことばがなかった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
烈々れつ/\える暖炉だんろのほてりで、あかかほの、小刀ナイフつたまゝ頤杖あごづゑをついて、仰向あふむいて、ひよいと此方こちらいたちゝかほ真蒼まつさをつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をとこ女蕩をんなたらしの浮氣うはきもの、近頃ちかごろあによめ年増振としまぶりけて、多日しばらく遠々とほ/″\しくなつてたが、一二年いちにねんふか馴染なじんでたのであつた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
辰男の明け方の夢には、わらびえる學校裏の山が現れて、其處には可愛らしい山家乙女やまがをとめが眞白な手を露出むきだして草を刈りなどしてゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
わたしの光は、古いプラタナスの葉が、ちょうどカメのこうのようにりあがって、しげっている生垣いけがきの中に、さしこもうとしていました。
野田山に墓は多けれど詣来もうでくる者いと少なく墓る法師もあらざれば、雑草生茂おいしげりて卒塔婆そとば倒れ断塚壊墳だんちょうかいふん算を乱して、満目うたた荒涼たり。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やいばとどめを刺したのではないが、とにかく、海のくずになったことは分りきっておる。かたがたお墨付をいただいたから、それを
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まだかなり長くちそうで、手広く居心地よくできていた。いろんな物置きだの納戸だの、思いもかけない階段だのがたくさんあった。
始終私どもの講義を聞いて、ここにはじめて神の正しく儼存げんぞんたまううえは、至誠しせいってこれを信じその道を尽し、その法を修めんには
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黒の頬冠ほおかぶり、黒の肩掛けで、後ろのはぼろぼろにきれかかっている。欄干から恐ろしい怪物の形がいくつもパリを見おろしている。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
縁に近く、ちょうど蓮の葉でかこいをされたぐあいの一坪ばかりの水のには、背に色彩りあざやかな紋のある水鳥が游いでいた。
痀女抄録 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
麻酔剤によって仮死の状態に置かれてある人体は、首を切断されたまま、あだかも泥人形の首がげたように、何うしてももう附着しなかった。
秋もう末——十月下旬の短い日が、何時しかトツプリと暮れて了つて、霜も降るべく鋼鉄色はがねいろに冴えた空には白々と天の河がよこたはつた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
この時阿遲志貴高日子根あぢしきたかひこねの神まして、天若日子がを弔ひたまふ時に、天よりり到れる天若日子が父、またその妻みな哭きて
をぢが張る四つ手の網に、月さしていろくづ二つ。その魚のくちびるあかき、この魚の背の鰭青き、うつつともへばつめたく、幻と見ればらひつ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と人間には儼然として侵すべからざる権利が存在するもので、これは万人にわたって等しく固有なるべきはずのものである。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
何しろ太刀山たちやまみたいな強力ごうりきに押えられているんでゲスから子供に捕まったバッタみてえなもんで……ウッカリすると手足がげそうになるんです。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
千登世は思ひ餘つて度々おさへきれないなげきをらした。と忽ち、幾年の後に成人した子供が訪ねて來る日のことが思はれた。
崖の下 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
庫裡の炉の周囲まわりむしろである。ここだけ畳を三畳ほどに、賽銭さいせんの箱が小さくすわって、花瓶はながめに雪をった一束のの花が露を含んで清々すがすがしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そつと眺めると砂からは湯気のやうな陽炎がえたつてゐた。それが忽ち乾いて、ジリ/\と反りかへつてゆくかのやうな白い砂原だつた。
熱い砂の上 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
四月の陽は縁から雨落に這つて、江戸の櫻ももうお仕舞ひ、狹い庭に草の芽がえて、蟻はもう春の營みに、忙しい活動を續けて居ります。
と劒岳の尊称であったものが、いつの間にか転移して其前面に続く二千七百七十六米の峰名となったものであろう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
このていを見ていたストーン氏は、やがて駄目だという風に椅子に背をたして、残り惜しそうに女を見つつ、そっと眼を閉じて眉を寄せた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
当時の東京商業学校というはと商法講習所と称し、主として商家の子弟を収容した今の乙種商業学校程度の頗る低級な学校だったから
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
金三は良平の、耳朶みみたぶつかんだ。が、まだ仕合せと引張らない内に、怖い顔をした惣吉の母は楽々らくらくとその手をぎ離した。
百合 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
男女服裝の別 土偶の用未だ詳ならざれば、其したる物は男子のみの形か女子のみの形か、男女兩樣か明かに云ふ能はず。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
わづかに原詩「牀前」の「前」字をつて一個「頭」字に易へ、而かも用ひ来つて直ちに天衣無縫の如し、云々」。
さけそつちのはうへたんとけねえでれえてえな」かね博勞ばくらうはけろりとした容子ようすをして戯談じやうだんをいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
われは心ともなく手を伸べて身邊をし、何物とも知られぬながら、竪き物の手に觸るゝを覺えて、しかとこれに取り付きたり。
すぐ表の坂を轟々ごうごうと戦車が通りすぎて行った。すると、かぼそい彼の声は騒音と生徒のわめきで、すっかりぎとられてしまうのであった。
秋日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
非常に冷たきものにふれた時熱き感触を味わうように、探偵小説の運ぶものは冷たい熱情、ゆる冷厳であるであろう。
季氏、閔子騫びんしけんをして費の宰たらしめんとす。閔子騫曰く。善く我が為めに辞せよ。し我を復びする者あらば、則わち吾必ずぶんほとりに在らんと。——雍也篇——
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
すると生みの母親は冷淡に、「いけませんよ」といって、その手から木下をぎ去った。堺屋の主人は始め不快に思ったが、生みの母のすることだから誰も苦情はいえなかった。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一八九八年版ハーチングの『熟兎篇ゼ・ラビット』に拠るとと熟兎はスペイン辺に産しギリシアやイタリアやその東方になかった。
童子は、手にった笛を腰のあたりに差した。そして童子自身が困りぬいたかおをして見せた。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
一度口に出して見た。をとゝひまで手写しとほした称讃浄土摂受経しようさんじやうどせふじゆきやうもんである。郎女は、昨日までは一度も、寺道場を覗いたこともなかつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
空を眺むる宮が目のうちにはゆらんやうに一種の表情力充満みちみちて、物憂さの支へかねたる姿もわざとならず。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
し并せて返納せば、益々ますます不恭にわたらん。因って今、領受し、薄く土宜どぎ数種をすすめ、以て報謝を表す。つぶさに別幅に録す。しりぞくるなくんば幸甚なり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
幼なき方はとこに腰をかけて、寝台の柱になかば身をたせ、力なき両足をぶらりと下げている。右のひじを、傾けたる顔と共に前に出して年嵩としかさなる人の肩に懸ける。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
琴書きんしょすべかラクみずかしたがウベシ、禄位ろくいッテ何カセン——こういう境遇でございます」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
私は私の思想として、ユダの無神論と虚無思想とを、自分の心に所有っていた。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
越え 千年ちとせる 宮居が址に なづさへば ひのことごと よろづ代に らすごと 仄暗ほのくらの 高どのぬちに くすしくも 光りいませる 救世くせのみほとけ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
このまま死んでは後世ごせさわりになると思いましてね、今でもおりしています
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「叔父上には、お年もお年、戦陣へお出向きあるよりは、ここにござあって、和子や女子たちの、後顧こうこの者をおり下されたほうがありがたい。大殿にも私からそう申しあげておきましょう」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
独り天保に至りては元禄をしたるつもりにて元禄にも何にもならぬ者、即ち工夫をらさぬふりしてその実工夫を凝らしたる者、何の取所とりどころもなきことなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
やぶや河原に、喰えるンの芽がでるくらいならよ、おらたちゃあ、太陽てんとうさまに腹あ干して、笛ふいて暮らすがよ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「おおそれ。いつぞや手に入れた般若はんにゃ仮面めん、ありゃ、出目洞白でめどうはくの名作じゃ、奥庭の石神堂に納めてあるが、あれを取りよせて仮面披露めんひろうに一さしうたらどうじゃ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうせ、おめえやうに紺屋こんや弟子でしてえな手足てあし牛蒡ごばうでもかついであるくのにや丁度ちやうどよかんべ」復讎ふくしうでも仕得しえたやうな容子ようすぢいさんはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
蒲鉾かまぼこことをはべん、はべんをふかしとふ。すなは紅白こうはくのはべんなり。みないたについたまゝを半月はんげつそろへて鉢肴はちざかなる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もしこれ方術なれば、その跡自ずから現わる。し鬼魅の入るならば、必ずその跡無からん。人なれば兵もて除くべく、鬼なればまさにいのりて除くべしと。
こうは言うものの、山本さん自身も、何処どこかこう支那人臭いところをって帰って来た。大陸風な、ゆったりとした、大股おおまたに運んで行くような歩き方からして……
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
と峡田領に属し、浅草寺地及寺領地に係る。其間頗る錯綜し、容易に弁じ難きを以て、旧幕時代は伊呂波いろは番号を附し、世、よんで、伊呂波長屋と云へり。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
「物う、案内あない申う。あるじの御坊おわすか。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これと種々なる原因の存するものなるべしといえども、製作品の不斉一ふせいいつなると、品質の粗悪なるとは、けだしその主なるものなるべきなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
人間にできないことを人間がやっている顔つきしているんだから無理もないわさ! 俺は、さき少僧都しょうそうず範宴——今は吉水の綽空しゃっくうが、公々然と、妻をつということを聞いて、こいつはいいと思った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いとなみけり扨平吉支配人五兵衞村役人同道にて江戸小傳馬町旅人宿幸手屋さつてや八方へ到着たうちやくし早速此段郡代屋敷へ屆け出けるに直樣すぐさま差紙さしがみに付き幸手屋茂八附添つきそひ郡代の白洲しらすへ出でければ正面には伊奈半左衞門殿左方には
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
庭の隅の鷹小屋から、時折、苦しげな太いうめきがながれてくる。それは、お市と兵庫の、六年間の苦しみを、一時にがき苦んでいるような呻きだった。
夕顔の門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一度、じろりと眺めて、見つけた天水桶——黒く、太ぶりなのが、二ツ並んだ間に、犬のようにぐり込んだ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
他の村人が、あまり値段ねだんが高いじゃないかと注意したら、売り主の曰く、そりゃちったア高いかもんねえが、何某なにがしさんは金持かねもちだもの、此様な時にでもちったうけさしてもらわにゃ、と。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
永く外国の生活をしている程の伯父であるから、或は拳銃ピストルの一挺位は所持っていたかも知れないが、それにしてもついぞ伯父の拳銃を見た事はない。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
お録、一番責めなきゃらちが明くめえ。お客の前でき廻ると見苦しい、ちょいと手を貸してくれ。老婆はチョッと舌打して、「ても強情なおだねえ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
温い家庭の内に育つて、それほど生活の方の苦痛くるしみも知らずにむ人もあれば、又、貴方のやうに、若い時から艱難かんなんして、其風波なみかぜまれて居るなかで、自然と性質をきたへる人もある。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
明敏な知力と精鋭な感受性と豊富な生活力とが、彼のうちにえたっていた。万人の魂をして、同じ力に、同じ生命の火に、燃えたたしむること、それが彼の理想であった。
竜馬りうめの羽うらにほひ透き、揺れてつれし
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これが引摺ひきずって、足を見ながら情なそうな顔をする。蟋蟀きりぎりす𢪸がれたあしを口にくわえて泣くのを見るよう、目もあてられたものではない。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
奈何どうなりとも、そこは貴方の御意見通りに。』と白髯の議員は手をみ乍ら言つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
と言はれて、叔父は百姓らしい大な手をなが
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
腕をぎ取られた裸人形の、あの切り口を想わせるような、白布で捲かれた短い腕が、その先をヒョロヒョロ動かしているのを発見したに相違ない。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
乳房のげた女であった。その人影は女のくびを、じっと上から見下ろした。と、斜に身がねじられた。と、右手が動いたようであった。何やらピカリと光ったようであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かれ多遲摩毛理たぢまもり、遂にその國に到りて、その木の實を採りて、縵八縵矛八矛かげやかげほこやほこを、ち來つる間に、天皇既にかむあがりましき。
唾き入れつ。これえ離たざれば、入れしまにまち來て獻る
三四郎は握りハンドルつた儘、——かほを戸のかげから半分部屋のなかに差し出した儘、此刹那の感に自己みづから放下し去つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うしろから看護婦が草履のおとを立てゝ近付ちかづいて来た。三四郎は思ひ切つて戸を半分程けた。さうしてなかにゐる女と顔を見合せた。(片手かたて握りハンドルつた儘)
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからいろいろ珍しい物や何かを遣ったりして頼んだですけれども誰あって行こうという者が一人もないです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
し其をしてばうに至らしめば、則ち其の神明はかられざること、おもふに當に何如たるべきぞや。凡そ孔子を學ぶ者は、宜しく孔子の志を以て志と爲すべし。
おと?。』とわたくしおもはず立止たちどまつてみゝすますと、かぜ一種いつしゆひゞきまつた無人島むじんたうおもひきや、何處いづくともなく、トン、トン、カン、カン、とあだかたにそこそこで、てつてつとが戞合かちあつてるやうなひゞき
彼はときどきあごをあけては、舌で、自分の呼吸で濕つた草をぎ取る。そして一度、彼は自分の足を知らずに食べてしまふ。——そしてこの怪物くらゐ、僕になつかしく思はれるものはなかつたのだ。
不器用な天使 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
そして海霧ガスれた夕方など、択捉えとろふ島の沖あたりで、夥しい海豚いるかの群にまれながら浮流うきながされて行く仔鯨の屍体を、うっかり発見みつけたりする千島帰りの漁船があった。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
塚は土饅頭どまんじゅうれ上がって、四方に大きなはんの木がそびえ、秋となると、鶏血草けいけつそうが血を流したように咲き出るので、薬園奉行や黒鍬くろくわの小者は、そこを、江戸城の血塚ちづかとよんで
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いづくより 来ませし仏か 敷島の 大和の国に いほりして 千年ちとせへにける けふ日まで 微笑ゑみたまふなり 床しくも 立ちたまふなり ほのぼのと 見とれてあれば 長き日に 思ひ積みこし うれひさり 安けくなりぬ 草枕くさまくら 旅のおもひぞ ふるさとの わぎに告げむ 青によし 奈良の都ゆ 玉づさの 文しおくらむ 朝戸出の 旅の門出に 送りこし わがみどりも 花咲ける 乙女とならば 友禅の 振袖ふりそで着せて 率ゐ行かむぞ このみ仏に
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
いちゆめ守護町々まち/\
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この歌の左に、「春日遅遅として、鶬鶊ひばり正にく。悽惆せいちうの意、歌にあらずば、はらひ難し。りて此の歌を作り、ちて締緒ていしよぶ」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
彼は、後醍醐のために、七々(四十九日)のに服し、さらにその百ヵ日には、等持院へのぞんで、盛大な仏事をいとなんだ。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老妻お百とよめのお道との三角葛藤はしばしば問題となるが、馬琴に後暗い弱点がなくとも一家の主人が些細な家事にまでアアしちむずかしい理窟をこねるようでは家がめる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
おもふまじ/\あだこゝろなく兄様あにさましたしまんによもにくみはしたまはじよそながらもやさしきおことばきくばかりがせめてもぞといさぎよく断念あきらめながらかずがほなみだほゝにつたひて思案しあんのよりいとあとにどりぬさりとてはのおやさしきがうらみぞかし一向ひたすらにつらからばさてもやまんを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
捕卒は銀錠をって臨安府の堂上へはこんで来た。許宣はそこで盗賊の嫌疑は晴れたが、素性の判らない者から、ひそかに金をもらったと云うかどで、蘇州そしゅう配流ついほうせられることになった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あわれむべし文三はついに世にもおそろしい悪棍わるものと成り切ッた所へ、お勢は手に一部の女学雑誌を把持ち、たちながら読み読み坐舗ざしきへ這入て来て、チョイト昇に一礼したのみで嫣然にっこりともせず
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
此墓のたまが、河内安宿部あすかべから石ちに来て居た男に憑いた時はなう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
中食後ちゅうじきごミハイル、アウエリヤヌイチはちゃを四半斤はんぎんと、マルメラドを一きん持参って、かれところ見舞みまいた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
中食後ちゆうじきごミハイル、アウエリヤヌヰチはちやを四半斤はんぎんと、マルメラドを一きん持參つて、かれところ見舞みまひた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
大異の体はまた石床の上へ引擦り倒されて、縮めるように頭と足を捺されたり、まためんをこしらえるようにまれたりした。
太虚司法伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
でも細君があると知れてから、随分んでいじめてやった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
その手は、黒髪長き人を、横抱きにし、ひもか、ヒラと曳いていた色も、眼にとまらなかったほどである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうして、其処から、しきりに人が繋っては出て来て、石をく。木をつ。土をはこび入れる。重苦しい石城しき。懐しい昔構え。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その折れ口に鹽をつけて食ふと、一種の酸味と新鮮のにほひとが有る。柄の太い嫩葉どんえふは鹽を振りまぜて兩掌の間にんで食ふのである。緑色に染まつた手をば川の水で洗ふ。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
かねてから、顔は充分見知っている仲、自然にその事が、談話はなしの皮切りとなり、私が頭をち上げると、きまり悪そうに其所そこを去ったことなども笑い話の中に出て
おのれらは心しても、子の生まれ侍るには困じぬれど、かみにはそれに事かわりて、御子生まれさせ給うべきもこの座さねば、如何にかはせん。なさけの道おくれたる婦女共なればさるおふけなき事を
『七面鳥』と『忘れ褌』 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
勘次かんじ怪我人けがにんうしろかくれるやうにして自分じぶんばんになるのをちながら周邊あたりなんとなく藥臭くすりくさくておそろしいやうなかんじにとらはれた。醫者いしや一人ひとり患部くわんぶやはらかにんでやつてたが勘次かんじをちらとた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
年は四十五六、繊細きしやな手にすら小皺こしわが見えてゐた
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
極熱ごくねつゆる
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
波邇賦はにふに到りまして、難波の宮を見けたまひしかば、その火なほえたり。ここにまた歌よみしたまひしく
「やい、六平、かさねえと、この屋台へ火をつけてやしてしまうからそう思え」
北枕なぞを喰うた後で、外へ出て太陽光ひなたに当ると、眼がうてフラフラと足が止まらぬ位シビレます。その気持のえ事というものは……。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
はれけふを暗きかもやとうちなげきひたとり居りわが太刀靖光やすみつ
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「はて、返事がえの、し可し。」とかごりたる菓子をつまめば、こらえかねて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
おもふはれに定操ていさうければにや、ろきこゝろのやるかたもなし、さて松野まつの今日けふことば、おどろきしはわれのみならず竹村たけむら御使者おししやもいかばかりなりけん、立歸たちかへりてくなりしとも申さんに
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
朕聞かくは、諸家のたる帝紀と本辭と既に正實に違ひ、多く虚僞を加ふといへり。
璧をちて河を渡りける時、河の神の、璧を得まくおもふより波を起し、みづちをして舟をはさましめおどし求むるに遇ひしが、吾は義を以て求むべし、威を以ておびやかすべからずとて
花のいろ/\ (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)