)” の例文
杖は※状かぎのて自然木じねんぼくなるが、その曲りたる処に鼻をたせつ、手は後様うしろざまに骨盤のあたりに組み合せて、所作なき時は立ちながら憩いぬ。
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このていを見ていたストーン氏は、やがて駄目だという風に椅子に背をたして、残り惜しそうに女を見つつ、そっと眼を閉じて眉を寄せた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
椅子の背へあおのけに頭をたせ、肱掛けに手をおいたまま、何の感動もないような風で耳を傾けていたが、やがて女が静まるのを待って問いかけた。
暗中の接吻 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
丸い背を柱にたせかけて、炬燵蒲団こたつぶとんをかぶっていた七十六歳の老翁は、むっくりと真っ白なまげを起して
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その背後うしろに隠したようにたせかけてあった二枚の写真が倒れたので、阿弥陀様よりもその方を手に取り出してよく見ると、それは、どうやら、女の死んだ父親でも
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
中野君はどういうものか容易に坐らない。片手を椅子の背にたせて、立ちながら後ろから、左右へかけて眺めている。多くの人の視線は彼の上に落ちた。中野君は平気である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、乞食は立ち上がり、痩せ涸れた体をたせかけたが、見掛けに似合わず目方がある。
縁側のキャンバス製の寝椅子に、栄介はながながと背をたせ、本を読んでいた。
狂い凧 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
薄ぎたなくよごれた顔に充血させて、口を食いしばって、りかかるように前扉にたれている様子が彼には笑止に見えた。彼は始めのうちは軽い好奇心にそそられてそれを眺めていた。
卑怯者 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
今は戰收りて彼らは盾に身をたせ
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
それがマドロス煙管パイプを横一文字にギューとくわえたまま、船橋ブリッジ欄干てすりに両ひじたせて、青い青い空の下を凝視しているんだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
開けた障子にせなたせて、立膝の褄は深いが、円く肥えたひじあらわに夫人は頬を支えていた。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はそのまま片足で老女の寝床を飛び越して、男爵未亡人の藁布団にたれかかりながら、横坐りに坐り込んだ。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
そのまま、背中をトンとたして、瞳を返すと、お千世を見て
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
健策は長椅子に背をたせて、冷然と腕を組んだまま……又、黒木はその黒眼鏡をかけた魚のように無表情な顔を、火鉢の上にさし出したまま、双方睨み合いの姿で
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と火鉢のふちに軽くひじたせて、謙造は微笑ほほえみながら
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それが船橋ブリッジ欄干クロスに両ひじたせて、青い青い秋空の下に横たわる陸地おかの方を凝視みつめているのだ。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それから神経をしずめるべく椅子に背をたせて、両手でピッタリと顔を押えながら眼を閉じた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
宇宙万象も何もかもから切り離された亡者もうじゃみたようになって、グッタリと椅子にたれ込んで底もはてしもないムズがゆさを、ドン底まで掻き廻わされる快感を、全身の毛穴の一ツ一ツから
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
十七八の島田まげの少女がこっち向きに丸卓子テーブルたれているところであったが、その肌の色や肉付きは云うまでもなく、髪毛かみのけの一すじ一すじから、花簪はなかんざしビラビラや、華やかな振袖の模様や
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しなやかな身体からだを机にたせかけながら、切れ目の長い一重瞼ひとえまぶたを伏せて、黒澄んだ瞳を隙間すきまもなく書類の上に走らせるのであったが、その表情は、ある時は十二三の小娘のように無邪気に、又
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
正木博士はユッタリと椅子の背に身をたせて足を長々と踏み伸ばした。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)