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顧
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こ
ふりがな文庫
“
顧
(
こ
)” の例文
驛を離れて峠に懸るに、
杉樹
(
さんじゆ
)
次第に路傍に深く、一歩は一歩より前なる高原の風景を失ひ、峠に達すれば、山樹
空濛
(
くうもう
)
として、四
顧
(
こ
)
只雲烟。
秋の岐蘇路
(旧字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
それは
顧
(
こ
)
という友人であったが、その顧が
没
(
な
)
くなった時、妻子の面倒を見てやったので、
邑宰
(
むらやくにん
)
がひどく感心して文章を寄せて交際を求めて来た。
連城
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
優にやさしき
騎士
(
ナイト
)
達は、行列を作つて夜もすがら、セレナーデを歌ひ
奏
(
かな
)
で續けて、お艶の一
顧
(
こ
)
を得ようとするのでせう。
銭形平次捕物控:238 恋患ひ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
と一
顧
(
こ
)
、老母の姿へ胸中一ぱいな
慚愧
(
ざんき
)
の眼を伏せて、わんわんと立ち騒いでいる群集の中を同僚の手で曳かれて行った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
蜀漢
(
しょくかん
)
の
劉備
(
りゅうび
)
、
諸葛孔明
(
しょかつこうめい
)
の
草廬
(
そうろ
)
を三たび
訪
(
と
)
う。これを三
顧
(
こ
)
の
礼
(
れい
)
と言うてナ。
臣
(
しん
)
、もと
布衣
(
ほい
)
……作阿弥殿、御名作をお残しになるよう、祈っておりますぞ。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
▼ もっと見る
「おお、そうであろうそうであろう。これは聞く方が悪かった。……文晁先生は当代の巨匠、先生の一
顧
(
こ
)
を受けようと、あらゆる階級の人間が伺向するということだ」
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やればできる力をもつてゐながら、なかなかやらうとしない一種の引込思案、乃至は億劫がり、右
顧
(
こ
)
左
眄
(
べん
)
、いづれも、「意志」の栄養不良、動脈硬化、関節不随であります。
戦争と文化:――力としての文化 第三話
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
多くの悪口には一時的
流言
(
りゅうげん
)
に過ぎずして、ほとんど一
顧
(
こ
)
の値いなきものがある。
俗諺
(
ぞくげん
)
にいう、「人の
噂
(
うわさ
)
も七十五日」。その語るところを聞くと根底深いらしいが、その実は根も葉もないことが多い。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
古顔の朱貴を筆頭に、
顧
(
こ
)
のおばさん、孫新、李立、
時遷
(
じせん
)
、
楽和
(
がくわ
)
、張青、
孫
(
そん
)
の妻などが、それらのことはやっている。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そこで統領と顧三五子との領域を定め、
顧
(
こ
)
の匪等はそれから又遠くの地方にその手足を伸ばした。
さまよう町のさまよう家のさまよう人々
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
五十何年の生涯を
賭
(
か
)
けて、善きもの、美しきもの、優しいもの、正しいものに、一
顧
(
こ
)
も與へなかつた小左衞門の死顏は、まさに邪惡そのものの模型を見るやうな凄まじいものだつたのです。
銭形平次捕物控:269 小判の瓶
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこに
顧
(
こ
)
生がいてばったりいきあった。顧は驚いて
訊
(
き
)
いた。
連城
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
たいして才能もないこの身に対して、
劉皇叔
(
りゅうこうしゅく
)
には、三
顧
(
こ
)
の礼をつくし、かつ、過分な
至嘱
(
ししょく
)
をもって、自分を聘せられた。性来の
懦夫
(
だふ
)
も起たざるを得ぬではないか。
三国志:07 赤壁の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弦之丞には、
行路
(
こうろ
)
の一
顧
(
こ
)
にもすぎぬ女であったろうが、お綱の身にとってみれば、手のうちの珠を奪われたよりは、もっと絶望的な空虚が胸をひたすのであった。
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
だから今なら、それら参陣の武族へ、彼がどんな高い
床几
(
しょうぎ
)
から尊大な一
顧
(
こ
)
をくれても、人々はみな彼を大将と仰いで、行く末までの随身も惜しまなかったに相違ない。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしてすぐ見物の群れを割って去りかけたが、一
顧
(
こ
)
するや、わざと後ろへこんな捨て言葉を
抛
(
なげう
)
った。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これから武蔵へかかる
山境
(
やまざかい
)
は、
姥子
(
うばこ
)
、
鳴滝
(
なるたき
)
、
大菩薩
(
だいぼさつ
)
、
小仏
(
こぼとけ
)
、
御岳
(
みたけ
)
、四
顧
(
こ
)
、
山
(
やま
)
また山を見るばかりの道である。すきな子供のむれに取りまかれることがいたってまれだ。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そして、一
顧
(
こ
)
するとそのまま黙々と麓へ去った……あとは、有明けを
啼
(
な
)
く虫の声がひとしきり。
鳴門秘帖:05 剣山の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それを正面のたかき
石段
(
いしだん
)
にあおいで、ひろい
平地
(
へいち
)
の
周囲
(
しゅうい
)
も、またそれからながめおろされる
渓谷
(
けいこく
)
も、四
顧
(
こ
)
の山も
沢
(
さわ
)
も
万樹
(
ばんじゅ
)
鮮紅
(
せんこう
)
に
染
(
そ
)
められて、
晩秋
(
ばんしゅう
)
の
大気
(
たいき
)
はすみきッている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
颯爽
(
さっそう
)
と、一
顧
(
こ
)
して、彼はすぐ後ろへ戻って行くのである。なんでもないことのようだった。もし先が強ければ、自分が後に捨てられてゆくだけのこととしかしていなかった。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
試合の後——ほっと息づくように胸をあげて、静かに、筆洗へ筆の先を沈めると、描きあげたわが画に一
顧
(
こ
)
もせず、伝奏屋敷の控えの広間から、さっさと退出してしまった。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とのみで、栄華の
閥
(
ばつ
)
は一
顧
(
こ
)
も与えなかった。そして平家人の頭には、何年たっても
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだ二十七歳でしかなかった青年孔明が、農耕の余閑、
草廬
(
そうろ
)
に抱いていた理想の実現であったのである。時に、三
顧
(
こ
)
して迎えた
劉玄徳
(
りゅうげんとく
)
の
奨意
(
しょうい
)
にこたえ、いよいよ
廬
(
ろ
)
を出て起たんと誓うに際して
三国志:12 篇外余録
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すべての万機を院中に決し、天皇崇徳をさして、お戯れにも——あれは、わが子ではない、
祖父児
(
おおじご
)
よ——と仰っしゃったり、また待賢門院にたいしても、今は、一
顧
(
こ
)
の御車を
回
(
めぐ
)
らしたこともない。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう一つ、身を、
翻
(
ひるがえ
)
しながら、一
顧
(
こ
)
の
眼
(
まな
)
じりを裂いて叫んだ。
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
西へ一歩を占めたと思うと、南に一
顧
(
こ
)
の不安がわいていた。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四
顧
(
こ
)
暗々
(
あんあん
)
たる裾野をにらみつめている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四
顧
(
こ
)
を見廻して
憮然
(
ぶぜん
)
たる様子。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“顧”の解説
顧(こ)は、漢姓のひとつ。『百家姓』の93番目。
(出典:Wikipedia)
顧
常用漢字
中学
部首:⾴
21画
“顧”を含む語句
顧盻
顧客
顧眄
回顧
顧慮
振顧
相顧
後顧
一顧
眷顧
右顧左眄
左顧右眄
四顧
愛顧
顧視
贔顧
見顧
顧愷之
右顧
反顧
...