頑固かたくな)” の例文
が、我らの日常生活をうるおすプログラムは、でたらめになってはいけないと同時に、あまり頑固かたくなになり過ぎても嬉しいことではない。
それと同時に、日ごろ頑固かたくなな叔父の鼻をじ折ったような一種の愉快をも感じた。彼は口の上の薄い髭を撫でながらほくそえんだ。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
孤児みなしごは、頑固かたくななものと、沢庵はあわれにもなったが、その頑固な心の井戸はつねに冷たい空虚うつろをいだき、そして何かにかわいている。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
云えばすぐに殺されるか、刺違えて死兼しにかねぬ忠義無類むるいごく頑固かたくな老爺おやじでございますから、これをいものにせんけりアなりません。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
頑固かたくなといつていゝか、兎に角良人を信じ切ることのできない硬い感じが、彼女をひどく窮窟で哀れなものにしてゐた。
折鞄 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そうして心が頑固かたくなになった。ろくろく物さえ云わなくなった。そうして万事に意地悪くなり、思う所を通そうとした。
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
先生があのようにおっしゃって下すっても、旧風むかしふう頑固かたくなで、私共の心をんでくれようとも致しませず、泣いて訴えましたけれど、許してくれません。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「しかし僕が頑固かたくなな人間だといふことは知つてるでせう。」彼は云つた。「容易にき伏せられないつてことは。」
見て氣の毒と存ぜしにや此程二十五兩の金子を持參ぢさんし先年の恩報おんがへしなりとて差出し候得ども元來をつと文右衞門は田舍育ゐなかそだち頑固かたくなゆゑ一たんめぐみ遣はしたる金子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それらの温情、それらの親切は長いこと彼に続いて来た少年らしい頑固かたくなな無関心をで柔げた。夕方にでもなると彼の足はよくこの姉らしい人のもとへ向いた。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして同時に私は彼等の偏狹な頑固かたくなな生活が、基督の教への中に味はれるやうな温かな親しみのある廣い人間的な味を失つてゐることを寂しく思はないではゐられない。
修道院の秋 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ひかりいま頑固かたくなあさこゝろいて、そのはれやかな笑顏ゑがほのうちに何物なにものをもきずりまないではかないやうに、こゝをけよとばかりぢられた障子しやうじそとかゞやきをもつてつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
陰で批評の口に上るこうした言葉は、彼を反省させるよりもかえって頑固かたくなにした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頑固かたくななほど身を守っていた明治四十三年は、幸徳こうとく事件があったりした時だった。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
一度は斯う言って止めましたが、病人の頑固かたくなさで、額裏の羽子をなかなかあきらめません。到頭夜になってから
頑固かたくなな叔父御もお身に逢うてはかなわぬ。まして初めから魂のやわらかい我らじゃ。察しておくりゃれ」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「なんとも、兄の頑固かたくなではございますが、折角ながら、お引き取りくださいませ。如何ようにお通いくださいましても、会うのは嫌と、申しっておりますゆえ——」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まアおっかア待ちねえ、そうおめえのように頑固かたくななことばかりいっちゃアしょうがねえ、折角頼りに思っておいでなすったお前まで、そんな邪険な事を云ったら娘心の一筋に思い詰め
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若い時から日本髮さへひとりでへたのだつた。私たち明治時代に生れたものは、心は新らしいものを貪りながら、しつけられたことは昔の女とおんなじだつたので、身嗜みだしなみには頑固かたくななほどだつた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
頑固かたくなな三吉が家を解散すると言出すまでには、離縁の手続、妻を引渡す方法、媒妁人なこうどに言って聞かせる理由、お雪の荷物の取片付、それから家を壊した後の生活のことまでも想像してみたので
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ぢあ、私は頑固かたくなな女です——決して誤魔化されたりしない。」
その自覚はまた彼を多少頑固かたくなにした。幾分か排外的にもした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
平次とすつかり融和して居るやうでも、利助にはまだ年配の誇りと、妙に頑固かたくなな意地があつたのです。
そなたの父が頑固かたくなのためかような手荒も心なく致したのじゃ。のう、機嫌直して門人たちのしゃくでもしてやれ、今に駕でも参ったら今宵のうちに宮津の城下を見せてやる。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頑固かたくなな番頭さんが附いて居るのでございますから、只吉原の事ばかり案じて、若草は何うして居るか、九月が腹帯おびだと云ったから、来年の二月は臨月うみづきだが、首尾く赤ん坊が産れるか
「ならぬか。お身も父上を見習うて、思いのほか頑固かたくなに相成ったな。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
世のならわしにも従わず、親戚しんせきの勧めもれず、友人の忠告にも耳を傾けず、自然に逆らってまでも自分勝手の道を歩いて行こうとした頑固かたくなな岸本は、こうした陥穽おとしあなのようなところへちて行った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平次とすっかり融和しているようでも、利助にはまだ年配の誇りと、妙に頑固かたくなな意地があったのです。
田舎気質かたぎとは云いながら、頑固かたくなばゞアだ、何の勘弁したってえにとお前様には思うか知んねえけれども、只今申します通り義理があって、どうも此の娘をうちへ置かれませんたった今追出します
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この頑固かたくなな叔父を説き伏せるのは、なかなか容易なことではないので、彼も途方にくれてひそかに溜息をついていると、遠い入口に待たせてあるはずの玉藻がいつの間にここまで入り込んで来たのか
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
名前も言わない美い女と聞くと、妙に頑固かたくななことを言って、ガラッ八を追っ払おうとしました。
名前も言はない美い女と聞くと、妙に頑固かたくななことを言つて、ガラツ八を追つ拂はうとしました。
充分に若くてハイカラで、妖艶な感じのする夫人は、良人おっと頑固かたくなな態度が心憎いと思う様子で、クッションの上を摺り寄って、男の丸々と肥った膝に、華奢きゃしゃな片手を掛けました。
葬送行進曲 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
頑固かたくなな彌三郎は、部屋住のお絹が持つて來る金などは、どうしても受取らなかつたので、何時の間にやら、毎日變つた食物を持つて來て、彌三郎が編笠をかたむけてそれを食ふのを
頑固かたくなな弥三郎は、部屋住みのお絹が持って来る金などは、どうしても受取らなかったので、いつの間にやら、毎日変った食物を持って来て、弥三郎が編笠を傾けてそれを食うのを
こんな稼業の人間らしくもなく、少し頑固かたくならしく見えるほど、實體な男です。
片膝を立てた平次、七平の頑固かたくなな様子をほぐすように、こう言うのです。
智慧も辯舌べんぜつも人並以上にできてをり、顏立もそんなにみにくくはありませんが、生れながらの頑固かたくなで、酒も呑まず煙草もはず、女遊びは言ふまでもなく、物見遊山にも行つたことのないといふ變り者で
平次は頑固かたくなに頭を振りました。