よう)” の例文
忠相もまた変物へんぶつ泰軒たいけんの性格学識をふかく敬愛して初対面から兄弟のように、師弟のようにいんように手をかしあってきた仲だったが
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
金環蝕が五月八日であるから、九日の午前一時に生れた俵士はいんが終ってように移ろうとするとき、人生の第一歩をみだしたわけである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
「はい、その周馬めでござります。恋敵こいがたきのあなた様が、江戸を去ったのを幸いにして、いんように、お千絵様を責め悩ますじゃございませんか」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そののち不図ふと御贔負ごひいきこうむ三井養之助みついようのすけさんにお話すると、や、それはいけない、幽霊のいんに対しては、相手はようのものでなくてはいけない、夜の海はいんのものだから
薄どろどろ (新字新仮名) / 尾上梅幸(著)
李張は科挙に及第して文官になったが、鄭宰相がいんよう推輓すいばんしてくれるのでめきめきと栄達えいたつした。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
またようといえばよかれいんといえば気味悪く思うもあれども、はたして事物に陰陽いんようの差があるものならば、両者の間の差は性質の差にして善悪、曲直の差ではあるまい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
妾の幸福さいわいは、何処どこの獄にありても必ず両三人の同情者を得ていんよう庇護ひごせられしことなり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ドウ云うように身分を取立てゝもらいたい、ドウ云うようにして禄を増して貰いたいと云うような事は、いんにもようにもどんな事があっても藩の長老に内願などしたことがない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
すなわよう遼東りょうとうを征するを令して、徐凱をして備えざらしめ、天津てんしんより直沽ちょくこに至り、にわかに沿いて南下するを令す。軍士なお知らず、の東を征せんとして而して南するを疑う。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
お父さんなんかどうする 毎日地球ちきうと太ようとの距離きよりせん百万哩ひやくまんまいるの向ふを見てゐるんだよ
ほう火竜かりゅう他方たほう水竜すいりゅう——つまりよういんとのべつはたらきがくわわるから、そこにはじめてあの雷鳴らいめいだの、稲妻いなづまだのがおこるので、あめくらべると、この仕事しごとほうはるかに手数てすうがかかるのじゃ……。
「——陰気くさいが、柳なんぞ、あれで、ようのもんだってね」
一本の花 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
楽官補佐のようと、けい打ち役のじょうとは海をこえて島に逃げた。
現代訳論語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
唯、金環蝕が終ってようのはじまるときに生をうけた子供が、五月の微風びふうにそよぐ若葉の色彩しきさいの中に、すくすくと伸びてゆくことをいのるのみである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
いんようかばい立てでもするどころか、この玄蕃、組与頭戸部近江へごまをこころも手伝って、自分から先に立って喬之助いじめに日を暮らしたのだった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「何でこの風が味方に不吉なものか。思え。時はいま冬至とうじである。万物枯れていんきわまり、一よう生じて来復らいふくの時ではないか。この時、東南の風きそう。何の怪しむことがあろうぞ」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とかくその背後には、後白河法皇の院政確立と、清盛へのお憎しみによる御使嗾ごしそうがあるのは争いがたいことで、法皇と清盛とは、いんように、龍攘虎搏りゅうじょうこはくの虚実をつねに蔵しています。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)