降積ふりつも)” の例文
退き臥床ふしどに入ければ夜は深々しん/\降積ふりつもる雪に四邊あたり䔥然しめやかにていひきの聲のみ聞えるにぞばん建部たてべの兩人は今や/\と窺ふをりお島は藤三郎を抱上いだきあげ小用こよう連行つれゆくてい持成もてなし座敷々々を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すぐに窓の雨戸を明けかけたが、建込たちこんだ路地ろじの家の屋根一面降積ふりつもった雪の上に日影と青空とがきらきら照輝くのでしばらく目をつぶって立ちすくむと、下の方から女の声で
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
また前に言った、もの凄い暗い夜も、年経て、なつかしい人を思えば、降積ふりつもあられも、白菊。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
またまへつた、ものすごくらよるも、として、なつかしいひとおもへば、降積ふりつもあられも、白菊しらぎく
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小屋のうちにはただこればかりでなく、両傍りょうわきうずたかく偉大な材木を積んであるが、そのかさは与吉のたけより高いので、わずか鋸屑おがくず降積ふりつもった上に、小さな身体からだ一ツ入れるより他に余地はない。
三尺角 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小屋こやうちにはたゞこればかりでなく、兩傍りやうわきうづたか偉大ゐだい材木ざいもくんであるが、かさ與吉よきちたけよりたかいので、わづか鋸屑おがくづ降積ふりつもつたうへに、ちひさな身體からだひとれるよりほか餘地よちはない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
むらかゝると、降積ふりつもつた大竹藪おほたけやぶ弓形ゆみなりあつしたので、眞白まつしろ隧道トンネルくゞときすゞめが、ばら/\と千鳥ちどり兩方りやうはう飛交とびかはして小蓑こみのみだつばさに、あゐ萌黄もえぎくれなゐの、おぼろ蝋燭らふそくみだれたのは、ひわ山雀やまがらうそ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引返してく女中のあとへついて、出しなに、真中まんなかふすまを閉める、と降積ふりつもる雪のは、一重ひとえへだても音が沈んで、酒の座は摺退すりのいたように、ずッと遠くなる……風の寒い、冷い縁側を、するする通って
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)